2023年度 気候変動・生物多様性とファイナンス   Sustainable Finance in light of climate changes and biodiversity

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開講元
文系教養科目
担当教員名
三輪 純平 
授業形態
講義    (対面型)
メディア利用科目
曜日・時限(講義室)
水3-4(W9-324(W933))  
クラス
-
科目コード
LAH.A421
単位数
1
開講年度
2023年度
開講クォーター
4Q
シラバス更新日
2023年3月20日
講義資料更新日
-
使用言語
日本語
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講義の概要とねらい

〇2015年のパリ合意以降、気候変動問題について、国際金融の世界でも急速な議論の発展を遂げている。
〇特に2021年は、金融規制当局にとっても大きな節目を迎え、G7財務大臣中央銀行総裁会合をはじめとする、政府レベルの声明においても、気候変動問題を中心としたサステナブルファイナンスに関する政策が策定され、実行フェーズに入っている。
〇この動きは、COP26を経て、二酸化炭素等の排出量(GHG排出量)などの環境データの開示から、今後起こりうる気候変動リスクを予測し、企業、金融機関の活動に戦略的に統合していくことも想定されている。
〇また企業開示における企業の財務データを基礎に、環境データと組み合わせ、企業活動が、GHG排出量の削減にどのように寄与するかについての指標(metrics)開発も併せて進んでいる。
〇講義では、気候変動問題に対する、今後、政府・企業・金融機関・社会が取りうる政策的選択について、公共経済学的なアプローチを紹介していく。
〇併せて、生物多様性の問題についても、気候変動問題と並行して国際的な議論が進んでおり、こうした問題をファイナンス分野などにおいて経済的な価値を捉えようとする動きについても解説する。
〇経済成長・人口問題・CO2排出量の関係、原子力・LNG・石炭などのエネルギー問題、そして、移行金融の動きなど、最新の動きを反映させながら授業を展開する予定である。

到達目標

気候変動問題、生物多様性問題が派生して、それがファイナンスの分野にどう影響を与えているかを中心に講義を実施。社会的な関心の高い当該分野についての教養を深め、受講生自らもこの分野での応用的思考を持てることを目指す。

実務経験のある教員等による授業科目等

該当する 実務経験と講義内容との関連(又は実践的教育内容)
20年以上に亘り金融の世界に携わる。
金融庁に約17年在籍。金融のグローバル化の中で、主にバーゼル規制をはじめとする金融機関に対する国際規制・基準を作る側に身を置き、2008年の金融危機も経験し、その後の国際的な金融規制改革の作業にも従事。銀行規制、保険規制、証券規制(含む開示基準)についての国際会議に多数参画。IAIS(保険監督者国際機構)、APEC(アジア太平洋経済会議)のWGレベルの副議長、議長を経験。 その後、金融庁のフィンテック室長として、イノベーション関連の国際コンファレンスにも多数参加。
2020年に国際政策管理官となり、イノベーションとサステナブルファイナンスを担当。金融安定理事会(FSB)の気候変動リスクWGメンバー、気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク[NGFS:Network for Greening the Financial System]運営委員会[Steering Committee]メンバー、OECD資本市場委員会(含:ESG・デジタル分野)メンバーなどを担当。
金融庁への入庁前は、国際協力銀行で、LNGなどのエネルギー関連のファイナンスも担当し、それ以降、エネルギー問題には高い関心を持ち続け、サステナブルファイナンスを取り組む上での重要な基礎となっている。
特に、気候学(climatology)、気象学(meteorology)、地球物理学(geophysics)などの専門家ではないため、授業ではそうした観点を中心に微に入る講義ではないので、受講の際にはご注意ください。

キーワード

気候変動 生物多様性 サステナブルファイナンス ESG インパクト投資

学生が身につける力(ディグリー・ポリシー)

専門力 教養力 コミュニケーション力 展開力(探究力又は設定力) 展開力(実践力又は解決力)

授業の進め方

〇第1回から第7回:講義を中心(一部、ディスカッション形式なども取り入れる予定)
〇基本、講師が作成する資料に基づき講義を進めます。
〇最終的な評価を行うため、中間レポート、最終レポートの提出が必要となります。
〇中間と最終レポートの提出は、T2SCHOLAに提出ボックスを設けるので、そこへの提出をお願いします。
また、提出期限を定めますので、ご確認の上、提出漏れがないようにご留意をお願いします。

授業計画・課題

  授業計画 課題
第1回 気候変動の問題を数字的なファクトに基づき考える―経済成長、排出量、人口問題、エネルギー問題など 最初の導入的講義を行います。関連するデータを見ながら気候変動の問題に関する理解を促します。
第2回 気候変動問題の過去から現在地 ー 1970年代から現在に至る経緯、変遷, そして将来に対する考え サステナブルファイナンスの一連の動きの中で、市場機能化(market functioning)に向けた動きを学習。
第3回 気候変動・生物多様性の問題と金融規制当局の対応①  気候変動と生物多様性の動きに対する金融規制当局に求められる論点と今後の対応などについて学習。
第4回 これまでのレビュー講義とグループ議論/レポート提出 授業後に前3回の課題を踏まえた中間レポート(3000字以上を目安)を提出してもらいます。
第5回 気候変動・生物多様性の問題と金融規制当局② 金融機関に対しての期待 気候変動と生物多様性の動きに対する金融規制当局に求められる論点と今後の対応などについて学習。
第6回 ESG投資とインパクト投資 気候変動・生物多様性のファイナンスの派生的に議論される、ESG投資とインパクト投資について学習。
第7回 講義とグループ議論/レポート提出 全6回の総括的なグループ議論を行い、課題などを纏めて最終レポート(5000字程度)を提出してもらいます。

授業時間外学修(予習・復習等)

学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する 予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。

教科書

特に指定なし。

参考書、講義資料等

参考書として、「サステナブルファイナンス原論」(Dirk Schoemaker Willem Schromode著,加藤晃訳)、金融財政事情研究会(2018),The green swan, BIS (2020) (https://www.bis.org/publ/othp31.htm) を読むことを薦めるが、授業で使用する講義資料でも理解できるようにする予定。また、講義において、参考とした文献などの参照も記述するので、適宜関心に応じて、自発的に学習することを薦める。

成績評価の基準及び方法

中間レポートと最終レポートの両方で採点します(40%(中間)+60%(期末)の比重)。
レポートの字数は、目安を設定しておりますが、内容や理解度を重視します。また、各レポートの提出期限は確認の上、必ず提出期限までに提出ください。

関連する科目

  • LAH.A401 : 金融機関のデジタルイノベーション
  • LAH.S437 : 文系エッセンス42:合意形成学
  • LAH.A532 : 分散型金融システムの経済学

履修の条件(知識・技能・履修済科目等)

ファイナンス論などについての関心が高く、また、気候変動、生物多様性などの環境問題に関心があることが望ましい。

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