2023年度 分散型金融システムの経済学   Decentralized Financial System and Economics

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開講元
文系教養科目
担当教員名
三輪 純平 
授業形態
講義    (対面型)
メディア利用科目
曜日・時限(講義室)
水3-4(W8E-307(W833))  
クラス
-
科目コード
LAH.A532
単位数
1
開講年度
2023年度
開講クォーター
3Q
シラバス更新日
2023年3月20日
講義資料更新日
-
使用言語
日本語
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講義の概要とねらい

現在の金融規制は、主に、銀行、保険会社、証券会社など、中央集権的なガバナンスシステムを有する金融仲介者(金融機関)を対象としている。
ブロックチェーンなどの分散型台帳技術の台頭により、自律分散型の金融サービスが進展する中、必ずしも中央集権的な管理体制を持たない金融仲介サービスの登場によって、金融仲介者の存在が希薄化し、既存の金融規制の効果が及ばなくなる事態も発生しつつある。
 本講義の目的は、(1)自律分散型のメカニズムに基づく、所謂「分散型金融」(Decentralized Finance)が登場する中で、金融規制が果たすべき機能・役割(金融システムの安定・維持、利用者保護、AML(アンチマネーロンダリング)など)をどのように維持・発展させていくべきか、(2)あるいは、これまでと違うアプローチを模索していくべきか、という論点を中心に 法あるいは経済学の視点も交えながら考える。
 また、分散型金融システムに変容していく中、新たなガバナンスメカニズムをどのようにデザインし、そしてどう機能させていくのがよいのか、といった観点でも考える。その際、インターネットにおける分散型ネットワーク下におけるガバナンスメカニズムを構築してきた歴史などが参考になるものと考える。
 なお、本講座では、BigTechの金融システムへの参入における問題についても、分散型金融システムとの対比で取り扱うことにより、現在の金融規制、金融システムが抱える課題にも焦点を当てる。

到達目標

金融規制の役割への理解を促し、今後起こりうる金融システムの変化について、公共政策的視座で俯瞰し、考える力を形成する。ディスカッションやレポートの提出などを通じて、今後の金融システムの変容を踏まえた、あるべきガバナンスシステムの在り方など新たなアプローチについて共に考え、議論し、「分散型金融」(DeFi)といった新たなファイナンスの動きについての教養を深めていく。

実務経験のある教員等による授業科目等

該当する 実務経験と講義内容との関連(又は実践的教育内容)
20年以上に亘り金融の世界に携わる。金融庁に約17年在籍。金融のグローバル化の中で、主にバーゼル規制をはじめとする金融機関に対する国際規制・基準を作る側に身を置き、2008年の金融危機も経験し、その後の国際的な金融規制改革の作業にも従事。2017年頃からフィンテックに携わり、金融庁の中で新しくできたフィンテック室の初代室長となる。ブロックチェーンのように自律分散型の技術が、金融システムの中に組み込まれていく中で、金融システムそのものが自律分散型へ移行していく将来像について、2017年くらいから考え始める。
その過程で、金融機関などの既存のステークホルダー以外の、暗号学・情報セキュリティ分野の大学の先生や研究者、暗号資産のディベロッパーなどとの対話・議論の必要性を感じ、それらを実現する対話プラットフォームとして、Blockchain Governance Initiative Network (BGIN(呼称ビギン))の設立に貢献。金融庁では、ブロックチェーン国際共同研究プロジェクトを推進。特に、国際的な金融規制設定の経験、フィンテックなどの分野での技術的な知見の両面からの視点で講義し、"新しい"ファイナンス分野についての実践的な思考力・発想力を履修生の皆様とともに涵養していきたい。

キーワード

金融システム ブロックチェーン 分散型金融(DeFi)FinTech BigTech 貨幣論 プライバシー論 分散型ガバナンス Web3

学生が身につける力(ディグリー・ポリシー)

専門力 教養力 コミュニケーション力 展開力(探究力又は設定力) 展開力(実践力又は解決力)

授業の進め方

第1回~第7回:講義。(アンカンファレンス形式での議論も試行します(特に第4回・第7回))
※第4回と第7回では、ブロックチェーンや国際規制の最前線で働くゲストに迎え、生徒たちとの集中的なディスカッション(unconference style)を予定。
- 授業の内容を踏まえて、中間、最終レポートを作成し、T2SCHOLAを通じて提出する。(※提出期限はT2SCHOLAで提示するので、参照すること)
- 授業の内容以外についての質問等は連絡担当教員(下記「連絡先(メール・電話番号)」の項目を参照)がメールで受け付け対応。
- 中間(第4回終了時)・最終(第7回終了時)レポート(※提出期限は以下を参照すること)をT2SCHOLAを通じて提出。

授業計画・課題

  授業計画 課題
第1回 金融システムと金融規制の役割 ー 分散型金融システムと規制の関係 国際的な金融規制策定の枠組み、金融規制監督体制の各国比較、金融規制の目的などを学習。
第2回 ブロックチェーン概説・分散型金融システム・DeFi・DAOについて考える FSB(2019)"Decentralised Financial Technologies"の事前に通読するこを推奨。特に分散型金融システムへの移行が齎す金融規制の課題などについて学習。
第3回 時代とともに変化する分散型の考え方(変更の可能性あり) 最近のDeFiの動向と自律分散型組織に関する金融規制・監督上の課題などを学習。この分野については日々変化しているので参考文書等は本講義開始までにアップデート予定。
第4回 分散型金融のガバナンス問題 + 中間議論(アンカンファレンス:特別ゲストを迎える予定)・レポート提出 金融庁(2020)「ブロックチェーン技術等を用いた金融システムのガバナンスに関する研究 」を事前に通読することを推奨する。ステークホルダー参加型のガバナンスモデルなどについて学習。第4回までの講義を踏まえ分散型金融を取り巻く幾つかの議題を提示の上自由討論(アンカンファレンス形式に近い)を実施。議題は選択式のアンケートを取り決定する予定。授業後に「中間レポート」提出を求める。
第5回 「マネー」の話 ー 貨幣(通貨)、デジタルマネー、ステーブルコイン、暗号資産、CBDCについての経済学的視座 :「貨幣の一般受容性をめぐる旅」 貨幣、デジタルマネー、ステーブルコイン、暗号資産について、主に経済学的視点を取り入れて講義する。参考文献などは、講義の前に提示するので、関心に応じて読むことを推奨する。
第6回 Web3.0 - CeFi(中央集権金融)vs DeFi(非中央集権型金融)  CeFiとDeFiの比較から、BigTechの金融参入による諸問題を学習する。金融規制監督の領域を超える競争上の問題、プライバシーの問題などを解説。
第7回 最終議論 分散型金融のガバナンス問題 + 最終議論(アンカンファレンス形式:特別ゲストを迎えます)・最終レポート提出 これまでの授業を総括する予定。授業後に「最終レポート」の提出を求める。ディスカッションでの貢献などは最終的な成績にも反映する。

授業時間外学修(予習・復習等)

学修効果を上げるため,配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する 予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。

教科書

特に指定なし。 (今後指定する可能性あり)

参考書、講義資料等

講義を通じて参考文献を提示するが、以下の金融庁における「分散型金融システムのガバナンスの課題についての取組み」の中でのブロックチェーンの国際共同研究の報告書(リサーチペーパー)を読むことを推薦する。
https://www.fsa.go.jp/policy/bgin/information.html

成績評価の基準及び方法

中間・最終レポート(40%+60%)で評価。中間は3000字程度、最終は5000字程度を目安とします。もっとも、字数は目安であるため、レポートの内容を重視して採点、評価します。(評価は、①事実関係の捕捉が正しいか、②論理構成の質、③自らの考えが充実しているか、という3つの軸を基本に採点します。その上で、授業での発言やレポートのの熱量なども考慮しつつ、レポートに加点して点数の調整も行うこともあります。)

関連する科目

  • LAH.S437 : 文系エッセンス42:合意形成学
  • LAH.A401 : 金融機関のデジタルイノベーション

履修の条件(知識・技能・履修済科目等)

ファイナンス論、ブロックチェーン、貨幣論などを中心とする経済学への興味があることが望ましい。

連絡先(メール、電話番号)    ※”[at]”を”@”(半角)に変換してください。

授業担当教員:三輪純平(j-miwa1976_at_outlook.jp(_at_を[at]に変更)))

連絡担当教員:猪原健弘(inostaff_at_shs.ens.titech.ac.jp(_at_を[at]に変更)))

オフィスアワー

授業前後に不明点や意見などを電子メールでの相談も可。ただし可能な限り授業中での質問時間を確保するのでその際に積極的な質問をお願いしたい。

その他

この科目は、修士課程500番台の文系教養科目です。
東工大では、学士から博士後期課程まで継続的に教養科目を履修する「くさび型教育」を実践しています。番台順に履修することが推奨されており、修士課程入学直後の学期(4月入学者であれば1・2Q、9月入学者であれば3・4Q)に履修申告できる文系教養科目は400番台のみです。500番台文系教養科目は、入学半年してから(4月入学者であれば入学した年の3・4Qから、9月入学者であれば入学した翌年の1・2Qから)履修可能となります。

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