グローバル化の時代にあって忘れられがちな国際社会の諸相に案内する。具体的にはドイツ、フランス、イタリア、ロシア、チェコ、メキシコ、キューバの7カ国に焦点をあわせながら、各国文化の民族性、伝統、歴史、社会などを概観する。各地域の専門研究に従事する7人の講師が、それぞれ独自の切り口から、オムニバス形式でこの7地域をあつかう。
本講義のねらいは、異文化理解の促進と国際意識の醸成である。一連の講義を通じて得た知識は、履修者が将来、多様な文化的出自の持ち主たちが集まるグローバルな環境で生きることになったときに、かならずや力になるだろう。
各回の概要
6月13日(月)、20日(月) ドイツ 若松 功一郎
「言語」「地域」「思想」という三つの切り口から、ドイツ文化の中心にある「ドイツ的なもの」について考えてみましょう。まず「言語」については、現在のドイツ語がどのようにして成立したのか、その過程を追うことでドイツ語話者のアイデンティティの在り方が明らかになります。「地域」については、「テウトニア」「トイトニア」といった古代・中世におけるドイツに該当する地域の呼び名からドイツという国について考えてみましょう。当時ヨーロッパの中心地であったローマとの関係性が大切になってきます。最後に「思想」と題して、通常の思想史ではあまり扱われない幾人かの思想家を取りあげながら、ドイツ思想の時代における変遷と一貫性とを概観してみましょう。
6月16 日(木)、23日(木) イタリア 河村 英和
イタリアはいつの時代も外国人旅行者を魅了してきた観光大国です。17-18世紀の英国貴族の間で流行したグランドツアーの最重要目的地はイタリアで、19世紀はブルジョアや知識人たちの必須の旅行先となり、ヴェネツィアは人気の新婚旅行先でした。ユネスコ世界遺産の登録数トップを毎年誇っているのもイタリアです。本講第1回目では、イタリア旅行の歴史を辿りながら、イタリアの世界遺産について知り、第2回目では、16-19世紀、古(いにしえ)の外国人たちが描いてきたイタリアの風景絵画や美人画をみながら、当時のイタリアにタイムスリップします。
6月27日(月)、7月4日(月) ロシア 土田 久美子
ロシアは日本の隣国ですが、欧米やアジア諸国よりも馴染みが薄いかもしれません。さらに、昨今の世界情勢を受けて、ロシアについて考えさせられることが多くなりましたね。
初回は、まずはロシアを身近に感じて関心を持ってもらうために、ロシア人の生活文化や習慣、祝日、食文化を学びます。異文化体験を楽しみながら、日本の文化・習慣との違いや意外な共通点を見つけていきましょう。
第二回のテーマは、「ロシアの時代区分とその時代の文化」です。時代区分ごとにロシアの歴史上の主要な出来事を説明し、その時代に作られたorその時代に関する芸術作品や世界遺産を紹介していきます。様々な時代・分野のロシア文化に触れて視野を広げると共に、ロシアの歴史の大きな流れを知ることにより、今日のロシア情勢も理解する一助となれば幸いです。
6月30日(木)、7月7日(木) メキシコ 伏見 岳志
メキシコは遠い国に思えます。しかし、昨今では、隣国のアメリカ合衆国との人やモノの移動、あるいはそれを遮断する国境の壁をめぐって、日本でもずいぶんとニュースに取り上げられるようになりました。では、こうした壁や移動の問題はなぜ生じたのか、この問いに答えるためには、背景にあるメキシコの社会や文化、歴史的な事情を理解する必要があります。そこで、この講義では、こうしたメキシコの諸事象を取りあげることで、メキシコが隣の米国との愛憎する関係を築いてきた、その過程を考える手がかりを探していきます。
7月11日(月)、7月25日(月) キューバ 田中 理恵子
カリブ海に浮かぶ島キューバは、ボレロやルンバなどを生み出した音楽大国として知られています。本講義では音楽の実践を焦点に、キューバの「社会」「思想」「人々」のダイナミズムをみていきます。キューバを理解する上で重要なのは、先住民が絶滅したため元来の伝統は残っておらず、キューバに移り住んだ人々が自らの社会文化を築いてきたという点です。これを踏まえて第1回ではキューバ音楽の歴史経緯を音源とともに追いながら、いかにキューバの音楽・文化が作られたのかを検討します。第2回では観光プロジェクト「国際音楽祭」を参照しながら、今日のキューバにおいて人々・社会・国家がいかにせめぎ合っているのかを考えます。「キューバ性」「異種混淆性」「生きている」などのキーワードとともに、キューバに対する想像力を広げていただきたいと思います。
7月14日(木)、21日(木) フランス 梶田 裕
本講義では、文学と映画の関係について考えてみたいと思います。文学と映画の関係は、文学作品の「翻案」だけにとどまりません。フランスの映画批評家であるアンドレ・バザンは、映画と文学の間に、「根深いところで共有された美学的条件」や「芸術と現実との関係についての共通した見解」を早くから読み取っていました。哲学者のジャック・ランシエールもまた、「映画は文学の後に来る」と言うことによって、映画と文学が同じ芸術的体制に属していることを明らかにしています。この授業では、文学と映画の間にある。影響や翻案にとどまらない共鳴関係を明らかにしたうえで、文学を代表する作品の一つであり、しばしば「映画的」と形容されることもあるフロベールの『ボヴァリー夫人』を映画化した三つの作品(ルノワール、シャブロル、ソクーロフ)を、筋立ての映像化とは異なる観点から論じたいと思います。
7月28日(木)、8月1日(月) チェコ 宮崎 淳史
作家フランツ・カフカ、音楽家スメタナ、ドヴォルザーク、アール・ヌーヴォーの旗手ミュシャなど数多くの芸術家を輩出してきたチェコ。本講義では、20世紀の美術に焦点を当て、オーストリア、フランス、ドイツ、そしてロシアに囲まれているがゆえの文化の複数性を分析する。周りの大国から最新の芸術を吸収することもあれば、ナチスや当時共産主義国家だったソ連に翻弄されることもあるなか、チェコの芸術家はどのような作品を制作してきたのかを、それぞれの時代の文化的背景を説明しながら紹介する。
本講義を履修することによって以下の能力を修得する。
1)あらゆる文化が等しく人間的で、なおかつそれぞれ独自の特徴をもつことが理解できる。
2)国際的視野から自国文化の特徴を考えられる。
3)国際社会の諸問題を多角的にとらえられる。
国際意識醸成、地域文化論、国際社会、イタリア、ドイツ、チェコ、フランス、ロシア、メキシコ、キューバ
専門力 | ✔ 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
授業ガイダンスのあと、7人の講師がオムニバス形式でオンライン・ライブ講義を実施する。履修者は講義に出席し、Googleフォームでコメントシートを提出する。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | ドイツの文化(若松功一郎) | 各回の授業で指示する。 |
第2回 | イタリアの文化(河村英和) | 各回の授業で指示する。 |
第3回 | ドイツの社会(若松功一郎) | 各回の授業で指示する。 |
第4回 | イタリアの社会(河村英和) | 各回の授業で指示する。 |
第5回 | ロシアの文化(土田久美子) | 各回の授業で指示する。 |
第6回 | メキシコの文化(伏見岳志) | 各回の授業で指示する。 |
第7回 | ロシアの社会(土田久美子) | 各回の授業で指示する。 |
第8回 | メキシコの社会(伏見岳志) | 各回の授業で指示する。 |
第9回 | キューバの文化(田中理恵子) | 各回の授業で指示する。 |
第10回 | フランスの文化(梶田裕) | 各回の授業で指示する。 |
第11回 | フランスの社会(梶田裕) | 各回の授業で指示する。 |
第12回 | キューバの社会(田中理恵子) | 各回の授業で指示する。 |
第13回 | チェコの文化(宮崎淳史) | 各回の授業で指示する。 |
第14回 | チェコの社会(宮崎淳史) | 各回の授業で指示する。 |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
特になし
PPT等のスライド資料を用いるほか、テキスト資料をT2SCHOLAで配布する。
次の二つの条件を満たした履修者のみ成績評価の対象となる。
1) 原則として講義に毎回出席し、Googleフォームで出席カード&コメントシートを提出すること(40%)。
2) 第2Q末に講義内容を踏まえたレポート課題を提出すること(題目・分量・締切については7月中旬にメール等で指示。60%)。
特になし