本コースでは民族主義の台頭や民族紛争により崩壊した南東ヨーロッパ旧ユーゴスラビアに焦点を当てながら、自己認識・集団的アイデンティティ・民族意識・民族主義などを考える。具体的には、ユーゴスラビアの20世紀の歴史を辿りながら、ユーゴスラビアを作り上げた南スラブ人の民族や宗教、言語に対する意識の変化に注目する。その中で、民族的・宗教的アイデンティティや民族主義の形成に関わる要素を考察する。また、受講生に、自国または自身の共同体における民族・国家・宗教・言語の概念を旧ユーゴスラビア地域のそれらと比較することを奨める。
本コースの主な目的は、受講生に旧ユーゴスラビアに関する基礎知識を覚えてもらった上で、民族・宗教・言語・民族主義・民族紛争などについて客観的かつ批判的に様々な視点から考える力を身に付けてもらうことである。コースのもう一つの目標は、民族や宗教、国家などについて多様な考え方や立場が存在することを理解し、これらの事柄に関する社会科学のアプローチについて基本的な知識を取得してもらうことである。
物事を客観的に考え、考え方や立場の多様性を意識することは、寛容性の増大に繋ぎうるため、コース期間が短いとはいえ、本コースは知識の拡大のみならず、受講生における他国・他民族に対する寛容な態度の形成に寄与し得るだろう。
旧ユ-ゴスラビアについての基本知識を身に付けるとともに、民族意識・国家・ナショナリズムに関する理解を深め、社会的・歴史的問題を様々な視点から考える習慣(能力)を身に付けてもらうことが本コースの主な到達目標である。
加えて、集団的アイデンティティや宗教、民族主義などに関する社会科学の方法論的アプローチについて基礎を学んでもらう。
ナショナリズム(民族主義)、民族意識、歴史、宗教、言語
専門力 | ✔ 教養力 | ✔ コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
本コースの授業形式は講義である。全コースは英語で行われる予定。教員による講義終了後、(時間が許せば)質疑応答、または(民族や宗教、言語などに関する)討論の場を設ける。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | コース紹介。旧ユーゴスラビアの民族や宗教に関する基本情報。 | 予習は不要。 |
第2回 | バルカン戦争とバルカン半島における第一次世界大戦。 | 前回の復習は必須。 |
第3回 | 第一次世界大戦の終了と南スラブ人の共通国家の成立。 第一次世界大戦後のユーゴスラビア: 経済問題や民族間関係。 | 前回の復習は必須。 |
第4回 | ユーゴスラビアにおける第二次世界大戦: 外国人侵略者との戦い、国内の民族紛争及び共産主義革命。 | 前回の復習は必須。 |
第5回 | 第二次世界大戦後のユーゴスラビア: 政治体制、経済及び国民の日常生活。 ユーゴスラビア人(南スラブ人)としての新アイデンティティの構築。 | 前回の復習は必須。 |
第6回 | 第二次世界大戦後のユーゴスラビア: 民族間関係と民族主義の台頭。 民族紛争とユーゴスラビアの崩壊。 | 前回の復習は必須。 |
第7回 | 民族紛争とユーゴスラビアの崩壊(続き)。 コースの問題提起の要約。 | 前回の復習は必須。 |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
特になし。
授業ごとに資料を配布。
学期中に旧ユーゴスラビアの情勢に関するリアクションペーパーをひとつ書いてもらう。リアクションペーパーの点数は評価の30パーセントに当たる。
コース終了後に、期末レポートを提出してもらう。期末レポートでは、旧ユーゴのケースに縛られることなく(または、旧ユーゴの事例を議論の出発点あるいは他国・他地域との比較の基軸にして)、民族意識や民族主義、民族紛争などの問題について論じてもらう。期末レポートの点数は評価の6割を占める。
授業中に受講生に質問や討論参加を呼びかけるが、授業中の態度は評価全体の10パーセントを占める。
特になし。