本講義では,古典から近代小説、日本の現代小説まで,個々の作品を「読む」事を通じて,「小説とは何か?」を学ぶ。
「小説」は言葉を用いて創られる芸術である。
言葉を使う(話す・聞く・書く・読む)ことは、意味や論理(思想)の伝達だけが目的ではない。明示されない文脈や感情の提示、意識するより前にある世界への態度のあらわれ、リズムや呼吸、身体的な感覚、他者への共感や拒絶など、多くの要素が含まれる。
ここでは、文学史的位置付けやマッピングといった客観的分析ではなく,歴史を踏まえながらも、個々の作品を「読む」ことを通じて、近代、現代の小説(作家)が言葉を使うことで「何をしているのか」を考察する。
小説は、多くの人の先入観よりもずっと幅広い表現であり、「読む」ことが身体全体を用いた能動的行為であることを学ぶ。
本講義を履修することによって、次の能力を習得する。
1)近代から現代へ、小説という表現がどのように展開したのか、作家名や作品の内容を挙げて説明が出来る。
2)現代小説のあり方を知り、小説を、より髙い精度で味わい、理解することが出来るようになる。
3)小説を深く味わい、理解することで、小説という芸術に対する親しみと敬意とが醸成される。
文学、文学史、現代小説
✔ 専門力 | ✔ 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
毎回ショーウィンドウ的に個々の作品を紹介する形を基本として講義を進めます。短編を精読する場合には授業の中でコピーを配布します。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 授業ガイダンス他 | 授業の進め方 近代芸術と近代小説、現代芸術と現代小説の関係について考える |
第2回 | 小説以前から小説へ 近代小説から現代小説へ | 聖書 オウディウス ホメーロス フローベール ルゴーネス H.G.ウェルズなどの文章に触れながら、小説の歴史的展開を考える |
第3回 | 海外の近現代小説を読む(小説の「描写」と「構造」を体感する) | チェーホフとボルヘスの短篇を精読する |
第4回 | 海外の近現代小説を読む(19世紀アメリカの小説を読む) | ホーソーン メルヴィルを読む |
第5回 | 海外の近現代小説を読む(近代から現代への架け橋としてカフカを考える) | カフカの短篇を精読する |
第6回 | 海外の近現代小説を読む(現代文学のあり方を考える) | ウルフ ムージルを読む |
第7回 | 海外の近現代小説を読む(虚構と現実の反転という特徴的な主題について考える) | ビオイ=カサーレス ファン・ルルフォ フィリップ・K・ディックを読む |
第8回 | 海外の近現代小説を読む(20世紀の女性作家の実存に触れる) | マルグリット・デュラス ジェイン・ボウルズを読む |
第9回 | 日本の近現代小説を読む(日本文学のひとつの水脈に触れる) | 内田百閒 吉田健一 田中小実昌 藤枝静男 後藤明生などの文章に触れる |
第10回 | 日本の近現代小説を読む(小説にできる事がどのように拡大されたのかを考える) | 保坂和志の短篇を精読する |
第11回 | 日本の近現代小説を読む(錯綜する「文」の圧倒的な力を体感する) | 小島信夫を読む |
第12回 | 日本の近現代小説を読む(「現状」と闘う女性作家について考える) | 多和田葉子 笙野頼子 山崎ナオコーラを読む |
第13回 | 日本の近現代小説を読む(小説の現時点での最も先鋭的な実践について考える) | 磯崎憲一郎 山下澄人を読む |
第14回 | 日本の近現代小説を読む(「小説の現在」のさまざまなあり方に触れる) | 柴崎友香 青木淳吾 町屋良平 大前粟生などの文章に触れる |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
教科書は指定しない。精読する作品については適宜授業でコピーを配布する。
特になし。
授業中の発言、提出物等(20%)
期末レポート(80%)
特になし。