2020年度 哲学B   Philosophy B

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開講元
文系教養科目
担当教員名
原島 大輔 
授業形態
講義    (Zoom)
メディア利用科目
曜日・時限(講義室)
火5-6(H111)  金5-6(H111)  
クラス
-
科目コード
LAH.H201
単位数
2
開講年度
2020年度
開講クォーター
1Q
シラバス更新日
2020年9月18日
講義資料更新日
-
使用言語
日本語
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講義の概要とねらい

 生命とは何か。生物と機械は違うのか。人工知能やゲノム編集をはじめとする現代の科学技術は,こうした問いについての我々の理解を問い直しているかのようです。生物の思考はデータ処理アルゴリズムなのでしょうか。生物の歴史はプログラムされたプロセスなのでしょうか。生物ならではと思われるような,生命やこころや意識,あるいは文化や社会,そして意味と価値,尊厳といった,物体としては実在しないものは,あくまで人間がつくりだした虚構なのでしょうか。そういう概念はどれもいずれは物質のメカニズムに還元されるか消去されるべきものなのでしょうか。この講義では,生命とは何かという問い,そして生物と機械の関係について考えてゆきます。それは究極的には,あなたが生きているとはどういうことなのか,ということが問われていると言ってもよいかもしれません。
この講義では,こうした問いに取り組んできた学術的な諸説を学習しつつ,本筋としては生物と機械のシステム論的な理解を手掛かりにして,自由意志・責任・意味と価値・尊厳・個体と集団・こころ・自己といった概念について考察します。システム論では,生物は自律システムや自己産出システムとしてモデル化されます。自律とは自から律するということ。自己産出とは自分自身を自からつくりだすこと。でも,自からというのは単純ではない。みずから何かをなすという主体的なニュアンスもありながら,しかも,おのずから何かがなされるという自発的なニュアンスもある。両義的なのです。あなたの命を生きている自己がもつこの不思議な両義性に導かれて,生命の問い,そして生物と機械の関係についての理解をともに深めてゆきましょう。

到達目標

本科目を履修することによって次の能力を習得します。
1) 技術と人間の諸問題についての基礎知識
2) 生物と機械の関係についての哲学的な諸見解(とりわけシステム論的・生命論的世界観に通う考え方)
3) 生命の問いへの入門的な理解

キーワード

生命、生物、機械、人工知能、システム論

学生が身につける力(ディグリー・ポリシー)

専門力 教養力 コミュニケーション力 展開力(探究力又は設定力) 展開力(実践力又は解決力)

授業の進め方

主に講義形式で行い,適宜グループディスカッションを行います。
授業の後半で,その日の授業内容に関する演習問題(記述課題)に取り組んでもらいます。

授業計画・課題

  授業計画 課題
第1回 導入 生命の問いにどう学術的に応答できるか考えてみる
第2回 技術と人間の諸問題(1):シンギュラリティとトランスヒューマニズム シンギュラリティとトランスヒューマニズムについて説明できるようになる
第3回 技術と人間の諸問題(2):ニヒリズム ニヒリズムについて説明できるようになる
第4回 技術と人間の諸問題(3):エコロジー 人類中心主義批判と生命尊重の考え方について説明できるようになる
第5回 技術と人間の諸問題(4):啓蒙と理性の不安 啓蒙主義と合理主義について説明できるようになる
第6回 生物と機械(1):機械論的世界観 生物と機械についての機械論的世界観を理解する
第7回 生物と機械(2):生命論的世界観 生物と機械についての生命論的世界観を理解する
第8回 システム論的生命論(1):有機構成 システム論的な生物の定義としての有機構成という概念を説明できるようになる
第9回 システム論的生命論(2):オートポイエーシス システム論的な生物のモデルとしてのオートポイエーシス(自己産出)系を説明できるようになる
第10回 システム論的生命論(3):自律系 システム論的な生物のモデルとしての自律系を説明できるようになる
第11回 システム論的生命論(4):再帰性と偶然性 システム論的な生命の特徴としての再帰性と偶然性について理解する
第12回 システム論的生命論(5):心的システム、社会システム、技術システム 科学技術文明における心・社会・技術の関係をシステム論の観点から分析できるようになる
第13回 システム論的生命論(6):階層的自律系としての社会的生物 社会的生物の生命的・機械的な二面性をシステム論的モデルから理解する
第14回 システム論的生命論(7):生命システムの二重性と両義性 生命システムの二重性・両義性についてより踏み込んだ説明ができるようになる
第15回 まとめ 生命の問いにどう学術的に応答できるか改めて考えてみる

授業時間外学修(予習・復習等)

学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。

教科書

指定なし

参考書、講義資料等

西垣通『生命と機械をつなぐ知』高陵社書店
中村桂子『生命科学から生命誌へ』藤原書店
河島茂生(編著)『AI時代の「自律性」』勁草書房
講義資料は授業中に配布します。

成績評価の基準及び方法

毎回の記述課題(50%)と期末試験(50%)

関連する科目

  • LAH.H101 : 哲学A
  • LAH.H301 : 哲学C
  • LAH.S432 : 文系エッセンス36:哲学

履修の条件(知識・技能・履修済科目等)

事前に身につけているべき知識や技術はありません。

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