本講義では、主に米国のいわゆる軍産複合体の実態(国防総省、議会、軍事産業、大学など研究機関の癒着)を、先端技術を駆使した軍事技術・兵器の研究開発。試験、評価について、F-35やミサイル防衛システムなどの具体例に基づきながら、明らかにする。
本講義は、第二次世界大戦後の米国が最先端技術の兵器システム開発の為の高度な組織システムをいかに構築したかの理解を深める。この兵器システム開発システムは、冷戦中は機能したものの、冷戦終結後の現在、多大な費用過多とパフォーマンス・成果の失敗に見舞われている。本講義では、高度兵器システム開発の失敗事例を通じて、その技術的、組織的、その他の原因を解明し、理解を深める。
科学技術、防衛技術の研究・開発・実験・評価、軍産複合体、防衛調達意思決定、政策分析、技術経営
✔ 専門力 | ✔ 教養力 | ✔ コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
授業は講義とセミナー式のディスカッション
注意!授業は準集中講義式で、2コマづつの授業を4回の月曜日(1/27, 2//3, 2/10, 2/17, 最終口頭発表は必要に応じて2月24日迄の予備日に実施)で実施。
出席と積極的な授業参加 (50%); 自主課題研究の口頭発表と教材の批判的評価 (25%); 最終レポート (25%)
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | イントロダクション:先端/防衛技術研究開発 防衛技術開発と軍産複合体 | 研究開発試験・評価事業に関する様々な側面を概観する。 米国議会における国防予算承認過程を研究開発試験評価に焦点を当てて見る。また、一連の過程で政治的要因が大きく影響する軍産複合体をスター・ウォーズ計画とミサイル防衛を例に解説する。 |
第2回 | 技術変換の難題:研究室から戦場へ 米国防総省と大学 | 米国防総省が兵器開発の要請性能をいかに決め、新技術を拙速に導入するかを、空中発射レーザー(ABL)の失敗例に基づき解説。また、元来NASAが開発した技術成熟度(TRL)と知識ベース管理の観点からも当該事例を検討する。 大学は軍産複合体の一翼を構成する。米国で冷戦時代に始まり現在迄続く大学と軍との緊密な関係性を解説。 |
第3回 | 防衛調達の成功例・失敗例の分析 防衛技術研究開発:出費に見合う価値があるのか? | 米国防総省は様々な高度兵器システムを開発したが、冷戦後の大規模開発には失敗例も多い。本講では、失敗例としてミサイル防衛、空中発射レーザー、軍事衛星、オスプレイ、F-35などの例を解説する。 戦後の軍事技術開発では、技術革新の赤字(研究開発投資は莫大だが技術革新のペースは落ちている)が、その原因としては 1) 研究開発試験評価予算の構造的問題、2) 政府内部での技術的専門知識の劣化、3) 質の高い高等研究所の消滅、などが挙げられる。 |
第4回 | 防衛技術研究開発における科学者・技術者の社会的責任 自主課題研究発表と総括 | 防衛技術分野での技術者、科学者としての20年以上のキャリアの後、ミサイル防衛プログラムの技術的欠陥を指摘したGhoshroy先生御自身の体験に基づいて、科学者・技術者の社会的責任を考える。 自主課題研究発表と総括 |
第5回 | 映画「なぜ戦うのか?」鑑賞と討論 | 米国は第二次世界大戦後、常に様々な先頭や軍事介入に関与してきた。アイゼンハワー大統領の言う「ビジネスとしての戦争」、軍産複合体の実態を描いたドキュメンタリー映画を鑑賞し、上映後に議論をする(2−5時間の長時間セッションになる)。 |
教材は、OCWを通じて、PDF file にて適時配布。
教材は、OCWを通じて、PDF file にて適時配布。
出席と積極的な授業参加 (50%)
自主課題研究の口頭発表と教材の批判的評価 (25%)
最終レポート (25%)
特になし
本科目は、MITから短期招聘教員としてGhoshroy先生をお招きしての特別集中講義(2こまづつの講義4回)で、今年度限りの開講ですので、是非この機会を逃さず受講してください!Ghoshroy先生は、防衛企業でレーザー技術者として勤務後、米国議会上院および監査局で国防技術の研究開発・調達の評価を専門とする主任分析官を長年務められ、米議会退職後はマサチューセッツ工科大学MITで研究を続けておられます。講義は英語ですが、補佐教員(池上雅子)が日本語で概要説明と通訳をするので、英語が苦手な学生もふるって受講してください。