本講義は、これまでに修得した化学熱力学の基礎を踏まえ、応用熱力学を修得して、実プロセスの製精錬に適用することを主眼としています。基礎熱力学で修得した化学ポテンシャル、活量の概念を駆使し、各成分の濃度関係を把握することが重要で、そのためには溶液論を修得することが必要です。溶液論は、各成分活量間の関係を軸に、混合エンタルピー・エントロピーに着目した正則溶液などのモデル、スラグの塩基度やガス成分ポテンシャルが支配する不純物分配を予測するための不純物キャパシティなどから構成されており、その実プロセスへの応用方法を多数の演習により修得します。
【到達目標】 金属製精錬プロセスは、鉱石の還元および溶融金属と溶融化合物、ガス相間の反応を伴う不純物除去工程から成り立っています。その最終状態の予測に必要な応用熱力学を修得することを到達目標とします。本講義では、化学熱力学の基礎を踏まえ、熱力学関数間の関係や熱力学モデルを実プロセスに応用することを目標とします。
【テーマ】 製精錬プロセスを熱力学的に理解するためには、溶液中各成分の活量が重要になります。この活量の基準、活量係数の取り扱い、他成分からの活量の導出法について学びます。また、不純物除去の観点から、溶融スラグの性質を把握するとともに、不純物キャパシティの概念・活用方法を修得します。さらに実プロセスにおける不純物分配の予測を行います。
熱力学、活量、化学ポテンシャル、溶液論、不純物キャパシティ、不純物分配
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
溶液論を中心とした熱力学的関係の復習、導出を行った後、実践課題解決のための例題を演習する。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 講義全体の概要、・ラウール基準およびヘンリー基準の活量 | ラウール基準およびヘンリー基準の活量の変換 |
第2回 | 1mass%ヘンリー基準の活量および相互作用係数 | 相互作用係数を用いた1mass%ヘンリー基準の活量の導出 |
第3回 | 部分モル量と積分モル量、Gibbs-Duhemの式およびSchumannの方法 | Gibbs-Duhemの式を用いた活量の導出 |
第4回 | 混合溶液の熱力学、正則溶体モデル | 正則溶液近似を用いた活量係数の予測 |
第5回 | スラグの塩基度、粘性、構造 | スラグの塩基度と陰イオン重合度の関係 |
第6回 | 不純物除去の熱力学、析出物生成の熱力学、スラグのキャパシティ | フォスフェイトキャパシティを用いたりん分配比の計算 |
第7回 | 実プロセスにおける不純除去挙動と総合演習テスト | 到達チェックテスト |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
特になし。
冶金物理化学, 丸善
Thermodynamics of solids by Richard A. Swalin, John Wiley & Sons
Stoichiometry and thermodynamics of metallurgical processes by Y. K. Rao, Cambridge University Press
Physical Chemistry of Melts in Metallurgy by F.D. Richardson, Academic Press
テーマごとの理解度を確認・評価するため、各回で演習を実施する。成績は演習(30%)および最終試験(70%)に基づいて評価する。
材料熱力学(MAT.A203.R)および金属物理化学(MAT.M302)を履修していること、または同等の知識があること。
kobayashi.y.at[at]m.titech.ac.jp
メールで事前予約すること。