本講義では、偏微分方程式に関する基礎的な知識と、その解析解と数値解を求める方法を扱う。理工学分野で取り扱う一連の諸問題を取り上げ、物理現象の偏微分方程式による記述、偏微分方程式の性質、解析解を求める代表的方法、および数値的に解を求める方法について講義と演習を行う。数値的な方法の講義では講義とコンピュータ演習を密接に組み合わせて、実際に数値解析を実施する能力を涵養する。
偏微分方程式は理工学における物理現象を記述する共通言語となっており、物理現象を偏微分方程式で記述する能力、あるいは偏微分方程式から記述されている物理現象を読み解く能力を身につけることは、理工学を学ぶうえで必須となっている。講義を通じ、方程式を解く能力とともに、これらを身につけてもらいたい。
本講義を履修することにより次の知識と実践力を修得する。
1) 物理現象を偏微分方程式により記述できる。
2) 偏微分方程式から物理的意味を読み取れる。
3) 偏微分方程式の解析解を求める基礎的な方法を修得する。
4) 偏微分方程式の数値解の方法を理解し、実際に行えるようになる。
偏微分方程式、物理現象のモデル化、移流方程式、波動方程式、拡散・熱伝導方程式、Poisson方程式、解析解、数値解
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
前半の講義では解析的な事項について学び、後半の講義では数値的な解法について学ぶとともにコンピュータ上での演習を行います。予習・復習をしっかり行ってください。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 偏微分方程式入門 | 偏微分の定義、変数変換の法則などの基礎的知識を確認し、常微分方程式との違いを説明できるようになる。 |
第2回 | 偏微分方程式の型分類(双曲型、放物型、楕円型)と物理現象 | 偏微分方程式に3種類の方があることを理解し、それらがどのような物理現象と関係しているかを説明できるようになる。 |
第3回 | 偏微分方程式の型(双曲型、放物型、楕円型)と、その性質 | 3種類の偏微分方程式の数学的な違いを理解し、説明できるるようになる。 |
第4回 | 変数分離法 | 偏微分方程式を解く際の基本手段である変数分離法を理解し、使えるようになる。 |
第5回 | 円形境界での波動方程式 | 円形境界の波動方程式を解けるようになる。 |
第6回 | 2次元でのラプラス方程式 | 2次元のラプラス方程式を解けるようになる。 |
第7回 | 3次元でのラプラス方程式 | 3次元のラプラス方程式を解けるようになる。 |
第8回 | 固有関数展開法 | 解を固有関数の重ね合わせで表し、その係数を決定することで、偏微分方程式を解けるようになる。 |
第9回 | フーリエ変換を利用した解法 | フーリエ変換を利用して、偏微分方程式を解けるようになる。 |
第10回 | グリーン関数による解法 | グリーン関数や基本解を用いて、偏微分方程式を解けるようになる。 |
第11回 | 偏微分方程式の数値解法の基礎 | 偏微分方程式の数値解法の基本的な方法を理解する |
第12回 | 偏微分方程式の数値解法の演習ー楕円型方程式 | 差分法に基づく楕円型偏微分方程式の数値解法の原理と方法を理解する |
第13回 | 偏微分方程式の数値解法の演習ー方物型方程式 | 差分法に基づく方物型偏微分方程式の数値解法の原理と方法を理解する |
第14回 | 偏微分方程式の数値解法の演習ー双曲型方程式 | 差分法に基づく双曲型偏微分方程式の数値解法の原理と方法を理解する |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
「キーポイント 偏微分方程式」
https://www.iwanami.co.jp/book/b260895.html
Erwin Kreiszig, Advanced engineering mathematics, John Wiley & Sons.
登坂宣好、大西和栄、偏微分方程式の数値シミュレーション、東京大学出版会
越塚誠一、数値流体力学、培風館
「偏微分方程式と物理現象の関係」、「偏微分方程式の解析解の求め方と特徴」、「偏微分方程式の数値解析法」についての理解と応用力について評価します。演習と課題30%、試験70%で評価します。
常微分方程式と物理現象を履修していること、また同等の知識があること。