持続可能な社会環境を構築するためには、新しい施設を建設するだけではなく、既存建築を再利用することは環境面からも経済面からも必須な課題と認識されています。その中でも、歴史的価値のある建物や環境の効果的な再利用は、地域のアイデンティティを構築し、適切な活用と観光開発により地域を活性化するとともに、生活様式や伝統産業が維持されることで地域文化の多様性を維持することに貢献することから今後の発展が期待される分野です。
歴史的価値を未来に引き継ぐための理念や手法の研究は、文化遺産保存分野において長い蓄積があり、これからはその知恵を建築界で広く共有していく必要があります。歴史的価値のある建物の保護のためには、(1)「何を」「なぜ」残すのかという価値を認識するための理念への理解と、(2)その価値を失うことなく未来に継承するために、「どのように」遺産を保護するかという実践手法の探求、の両方が必須です。
「歴史的環境保存基礎」では、理念の理解に重点を置き、さまざまな具体的な事例を通じて、日本と国際社会における文化遺産の保存理念についての理解を深めます。
(1)日本の文化財保存理念と文化財保護制度の特徴を理解する。
(2)国際社会における文化遺産保存理念と世界遺産条約など国際的な文化遺産保護制度の特徴を理解する。
(3)個別の文化遺産について、その価値を正しく見極め、評価することができるようになる。
✔ 該当する | 実務経験と講義内容との関連(又は実践的教育内容) |
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内閣府上席政策調査員として国宝迎賓館赤坂離宮の保存修理に携わった知見を講義に活かします。 |
文化遺産保存、歴史的建造物、持続可能性、世界遺産
✔ 専門力 | ✔ 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
講義を中心に進めます。学生はテーマ課題について、個人またはグループで発表をおこないます。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 日本の文化財保存理念と建造物修理 | 日本の文化財保存理念と歴史的建造物の修理手法の特徴を多様な事例を通じて理解する。 |
第2回 | 日本の文化財保護制度の特徴 | 日本独自の文化に対する価値観が反映された文化財保護制度について理解する。 |
第3回 | 国際社会における文化財保存理念の発展 | ヨーロッパを中心に発展した文化財保存理念について多様な事例を通じて理解する。 |
第4回 | 国際条約・憲章による国際的な文化遺産の保護 | ユネスコ、イコモス等による国際条約・憲章にみられる理念や文化遺産保護のための取り組みを理解する。 |
第5回 | 世界遺産条約による文化遺産保護 | 世界遺産条約の理念と保存手法を理解し、地域文化の多様性を継承する手法について理解する。 |
第6回 | 現在社会における文化遺産保護の取り組み | 現代社会において、文化遺産の価値を将来に残すための保護の多様な取り組みを理解する。 |
第7回 | 学生発表 | 個別の文化遺産について価値を評価し、その保護のための方策について提案を行う。 |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する 予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
ハンドアウト等を用いる。
授業の中で紹介していく。
講義への参加と随時出される課題の提出。最終課題の提出と発表。
2023年度の「UDE.E405持続可能な都市環境特論第一(2単位)」を履修した4年生は、2024年度の「UDE.E405持続可能な都市環境特論第一(1単位)」と本科目(「UDE.D415 歴史的環境保存基礎(1単位)」)の組み合わせで8号読み替えとします。
履修は修士課程学生を優先します。