本講義では、計画の制度化と専門化が始まった19世紀後半から現在までに活躍してきた代表的な計画理論家、実践家の残した著述、論文を読みます。計画理論は、土地利用計画や交通計画など個別領域の理論ではなく、計画という行為とプロセスに共通するメタ理論です。計画という行為は、私的セクターでも行われていますが、ここでは公的セクターに固有の問題を扱います。本講義のねらいは、公共哲学、思想史の知識を援用し、歴史的な流れの中で計画という行為を批判的に理解するためのセンスと洞察力を習得することにあります。
本講義は、まず、公共利益と合理性の代表的な思想について学び、それらが計画観にどのような影響を及ぼしてきたか理解することを目標にします。特に、近代の専門化され制度化された計画と、道具的合理性と客観主義を柱とする近代合理性の関係について理解を深めます。次に、近代合理主義に対する批判と、代替的な計画スタイルの関係について理解を深めます。さらに、計画的介入と市場の効率性を巡る論争が、討議合理性とボランタリーな市民を加えた枠組みの中でどのような計画観として提案されているのか理解を深めます。こういった理論をもとに、計画プロセスと計画制度を批判的に評価し、再構築するために有用な概念を習得することを目標とします。
計画理論、公共利益、合理性、討議民主主義、参加、公共圏、市民社会
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
各回テーマの主要文献を、オリジナルテキストで読み、討論を行う。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 公共利益、合理性、計画観 | 合理性、および公共利益に関する政治思想を理解し、近代的計画観との関連について説明できるようになる |
第2回 | 19世紀の都市、家族、コミュニティ像と都市問題の社会的構築 | 近代化が都市,家族,コミュニティに及ぼした影響について理解し,近代的計画観が成立する社会背景について説明できるようになる |
第3回 | 進歩主義思想とユートピア的想像力 | 進歩主義及び実証主義について理解し,それらが近代的計画観に及ぼした影響を説明できるようになる |
第4回 | TVAと計画的介入の制度化 | TVA開発計画の時代的背景,思想史的背景を理解し,福祉国家と計画の制度化の関連について説明できるようになる |
第5回 | 合理的選択モデルとテイラーリズム | テイラーリズムと近代合理性の関連を理解し,テイラーリズムが社会に及ぼした影響を説明できるようになる |
第6回 | インフォーマルな都市の秩序と近代合理性の脱構築 | R.セネット,H.Gansの著作を通して,近代的秩序観が都市計画に及ぼした影響について説明できるようになる |
第7回 | アドボキャシーと知識社会学 | 知識社会学とアドボカシー計画の関連について理解し,権力が認識にお及ぼす影響につい説明できるようになる |
第8回 | インクレメンタリズムと限定合理性 | 限定合理性を克服するためのヒューリスティクスとしてインクレメンタリズムを理解し,分権的秩序形成メカニズムについて説明できるようになる |
第9回 | 社会主義計算論争と計画 | F.ハイエクとV.ミーゼスの計画経済批判を理解し、分権的秩序形成メカニズムについて説明できるようになる |
第10回 | リベラリズム vs コミュニタリアニズム論争と計画 | リベラリズムとコミュニタリアニズムに含意されている公共利益と合理性に対する考え方の違いが、秩序観と計画観に及ぼした影響について説明できるようになる |
第11回 | 公共性の構造転換と都市 | J.ハバーマスのテキストを読み、近代都市と市民的公共性の関係について説明できるようになる |
第12回 | 討議的合理性と公共圏 | J.ハバーマスのテキストを読み、討議的合理性、生活世界、公共圏について説明できるようになる |
第13回 | 参加民主主義 vs 討議民主主義の視点から公共利益再考 | 参加民主主義と討議民主主義の違いを理解し、討議的な問題解決の制度・プロセスのデザインができるようになる |
第14回 | 環境問題、集合行為ジレンマ、市民的公共性 | 集合行為ジレンマについて理解し、環境問題を典型とする同ジレンマ解決のためには市民的公共性が重要であることを説明できるようになる |
第15回 | 社会的に構築されるリスクと計画 | 「社会的に構築されたリスク」について理解し、リスク問題解決における分析的アプローチの限界と討議的アプローチの有用性を説明できるようになる |
毎回のテーマに合わせて、オリジナルテキストのコピーを配布する
Campbell,S. and S.Fainstein, 1996, Readings in Planning Theory, Blackwell Publishers
毎回の課題 40% 期末レポート 60%
特になし
特になし