地球上には様々な微生物が存在し、物質とエネルギーの循環に関わっている。微生物の機能は、それが生育する環境によって発現形態と関与する因子が異なる。本講義で取り上げる環境には一般の自然環境に加え、極限環境や動物の生体内環境も含む。丹治は環境に関わる無数ともいえる種で構成される微生物叢の解析手法と例、および工学的応用に関し教授する。中村は極限環境に生育する微生物(極限環境微生物)の生態と極限環境適応機構、さらには極限環境微生物が生産するタンパク質の構造と機能について教授する。和地は土壌中に生息する微生物の分離と同定法、土壌微生物の有効利用、特に抗生物質の探索や微生物を利用した環境浄化、農業利用について教授する。本郷は環境中の難培養微生物群集を対象としたメタゲノム解析や1細胞ゲノム解析などの研究手法を、腸内微生物を主な題材として教授する。
本講義を履修することによって以下に挙げる能力を取得する
1) 地球表層における物質とエネルギー循環が環境に与える影響を修得できる
2) 微生物の機能を環境浄化、農業生産、物質生産に応用する手法を修得できる
3) 極限環境に生育する微生物の機能とその有効利用法を修得できる
4) 環境中の微生物群集の構造と機能の解析手法を修得できる
微生物叢、排水処理、微生物腐食、病原微生物、極限環境微生物、バイオレメディエーション、難培養微生物、メタゲノミクス
✔ 専門力 | ✔ 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
講義の前半では前回の内容を復習し、後半では各回の内容について教授する。必要に応じてプリント資料を配布する。講義を受けるにあたって、各回の項目について予習してくることを推奨する。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 難培養微生物の培養非依存的群集構造解析 | 難培養微生物群集構造解析手法を説明できるようになる |
第2回 | メタゲノミクスとシングルセル・ゲノミクス | メタゲノミクスと1細胞ゲノミクスはどのような解析手法かを説明できるようになる |
第3回 | 腸内共生難培養微生物群集の機能解析 | 腸内微生物研究の実際を学び、腸内微生物群集の特徴を説明できるようになる |
第4回 | 地球表層における物質・エネルギー循環 | リザーバー間の物質とエネルギーの収支が環境に与える影響を評価できる |
第5回 | 生態系の動特性 | 生態系における動特性の理解 |
第6回 | 排水処理や材料の腐食と微生物との関わり | 微生物を利用した廃水処理の機構とプロセス、および微生物が材料の腐食に関わるメカニズムを説明できる |
第7回 | 病原微生物とその制御 | 病原性微生物の種類と病原性を認識し、それらの人為的制御方法を選択できる |
第8回 | 極限環境微生物(導入)および好熱性・好アルカリ性微生物・好塩性微生物とその酵素 | 好熱性・好アルカリ性微生物・好塩性微生物とその酵素の耐熱・耐アルカリ・耐塩機構について説明できる |
第9回 | 有機溶媒耐性微生物とその酵素 | 有機溶媒耐性微生物とその酵素の有機溶媒耐性機構について説明できる |
第10回 | 好圧性微生物とその酵素 | 好圧性微生物とその酵素の耐圧機構について説明できる |
第11回 | 乾燥耐性生物とその乾燥耐性機構 | 乾燥耐性生物とその乾燥耐性機構について説明できる |
第12回 | 土壌微生物の分離と同定 | 土壌微生物の分離・同定法を理解する |
第13回 | 抗生物質のスクリーニング (1) | 抗生物質産生微生物の単離とスクリーニング法について理解する |
第14回 | 抗生物質のスクリーニング (2) | 抗生物質の単離とその利用について理解する |
第15回 | 微生物の産業への利用 | 微生物発酵について理解する |
特になし
環境生物工学(講談社サイエンティフィック、丹治ら)、極限環境生命(コロナ社、伊藤ら)、IFO微生物学概論(倍風館)
必要に応じ講義開始時にプリント資料を配付し、パワーポイントを用いた解説を行う。
各担当教員毎にレポート課題、または試験を実施し、それらの評価を総合して最終評価とする。
履修条件は特に設けないが,関連する科目を履修していることが望ましい。
丹治 保典(ytanji[at]bio.titech.ac.jp、5763)、中村 聡(snakamur[at]bio.titech.ac.jp、5765)、和地 正明(mwachi[at]bio.titech.ac.jp、5770)、本郷 裕一(yhongo[at]bio.titech.ac.jp、2865)
講義終了後、またはメールで事前予約し、各教員の教員室で質問に応じる。