高分子物質の固体状態における高次構造と物理的性質の相関について解説し,次いで機能性高分子物質の熱物性,光学物性,電気・電子物性に関し,それらの分析手法(特性解析法)について,受講生の予習・発表を基に理解を深めていきます.あわせて,ハイブリッド技術やナノテクノロジー技術による機能性高分子材料の最近の進歩と応用についても解説します.
優れた機能を有する高分子物質を設計・創出するためには,高分子物質の「構造-物性相関」に対する深い理解が不可欠です.この講義では、固体状態における高分子物質の三次元構造とそれらが発現する物理的性質の関係を,最新の機器分析法(特性解析法)を軸として解説・相互発表しながら,機能性高分子の材料設計の基本的な考え方を教授・理解します.
本講義を履修することにより,次の能力の修得を目指します.
1) 高分子固体の機器分析法と「構造-物性相関」について理解している.
2) 機能性高分子の応用物性(熱的性質,光学的性質,電気・電子的性質)に関する専門的知識を,それぞれの特性解析法に基づいて修得している.
3) それらを基盤とした最新の機能性高分子,有機/無機ハイブリッド材料技術,ナノテクノロジー材料技術について理解している.
高分子の機器分析法と高分子の高次構造(結晶,液晶,非晶,単結晶,球晶,ミクロ相分離構造,網目構造,表面・界面構造)
機能性高分子の応用物性(熱的性質,光学的性質,電気・電子的性質)
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
高分子固体の応用物性を高度に制御した材料は「高機能性高分子」と呼ばれ,これは最先端の材料化学の成果です.講義では,個々の物性の基礎について述べるだけでなく,これらの物性理解に必須となる各種機器分析法(特性解析法)に関しても詳述するとともに,学生間の事前学習・相互発表を基に理解を深めていきます.
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 高分子固体の高次構造と応用物性(導入) | 高分子固体の高次構造の分類と特徴の理解 |
第2回 | 高分子の熱物性(局所運動と力学緩和,熱膨張,熱伝導,熱電変換) | 高分子の応用熱物性の理解 |
第3回 | 高分子の光学物性Ⅰ(屈折率,複屈折,波長分散,温度依存性) | 高分子の基礎的光学物性の理解 |
第4回 | 高分子の光学物性Ⅱ(光透過,蛍光・燐光,波長変換,光波制御) | 高分子の応用光学物性の理解 |
第5回 | 高分子の電気・電子物性Ⅰ(誘電分散,電子伝導,強誘電体と液晶) | 高分子の基礎的電気・電子物性の理解 |
第6回 | 高分子の電気・電子物性Ⅱ(光電導,π共役高分子の半導体物性,光電変換) | 高分子の応用電気・電子物性の理解 |
第7回 | ハイブリッド技術に基づく高分子の物性・機能性制御 | 高分子のハイブリッド技術の理解 |
第8回 | ナノテクノロジーに基づく高分子の物性・機能性制御 | 高分子のナノテクノロジーの理解 |
OCW-iにて講義前に適宜,PDFを配布または資料・文献を指示します.
松下・金谷・渡辺・下村・佐藤・伊藤・田中・井上 「高分子の構造と物性」 講談社 (2013)
高分子学会 編 「基礎高分子科学 演習編」 東京化学同人 (2011)
西岡 利勝 編 「高分子分析入門」 講談社 (2010)
講義内容に関する理解度を期末試験および講義毎の小テストにより評価します.
高分子物理第一(溶液物性) (CAP.P221) および高分子物理第二(固体構造) (CAP.P222)を履修していること,または同等の知識があること.