[実験の概要]
本授業では応用化学実験第一,第二を履修した学生を対象に化学工学・有機化学・高分子化学に関する実験を実施する.各分野の実験の概要は以下のとおりである.
化学工学のテーマでは,まず「管路設計と流量制御」において,機械的エネルギー収支式を用いた管路設計を題材とし,流体中の移動現象を解析するための基礎的な考え方を習得する.次に,「熱の流れ」では,二重管式熱交換器を用いて,熱収支,伝導伝熱,対流伝熱などの,熱移動現象を解析するための基礎的な考え方を習得する.
有機化学のテーマでは,カルボニル化合物の求核置換反応を通して,有機合成反応の典型的な仕込み,後処理等の操作手順を学ぶ.
高分子化学のテーマでは,ビニル系モノマーのラジカル重合を行い,高分子の付加重合の方法,重合原理,分子量制御,解析方法の基礎的な考え方を習得する.
[実験のねらい]
応用化学実験第二に引きつづき,本実験では,化学工学・有機化学・高分子化学に関連する実験を体験することにより,応用化学の基礎知識と実験研究方法を身につけ,実験レポートの作成を通して基本的概念および実験や機器分析の原理などの基礎知識の習得および実践的な思考力を養う.
本授業の到達目標は以下のとおりである.
(1) 基礎的な実験操作を各テーマの実験目的に応じて適用できる.
(2) 実験の手順や結果,および考察について一般的な実験レポートの形にまとめることができる.
(3) 各テーマに関係した基本概念や測定原理およびその応用について説明できる.
(4) 実験に関する系統的な知識を習得し,安全で生産的な化学実験計画を立案できる.
化学工学分野:
プロセス制御,モデリング,シミュレーション,プロセス工学,プロセス設計,反応システム設計,分離システム設計,プロセスモデリング,プロセス計測,プロセス制御,気液平衡,理論段数,蒸留
有機化学分野:
エノラートの付加反応,炭素-炭素結合形成,配座異性体,カラムクロマトグラフィー,分子動力学計算
高分子化学分野:
ラジカル重合,分子量測定,透明性
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
本実験では、初回に全ての実験の概要について説明を行う.その後3グループに分かれ、テーマ1:化学工学(管路設計と流量制御,熱と流れ),テーマ2:高分子化学(ラジカル重合によるアクリル樹脂の合成),および テーマ3:有機化学(エノラートを利用した有機合成と計算化学)の実験をグループ分けに従って順番に進め,最終回に理解度確認のための演習と解説を実施する.
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 熱の流れ①:二重管式熱交換器の熱収支・総括伝熱係数算出 | "二重管式熱交換器の熱収支が計算できる。 総括伝熱係数を計算できる。熱交換器の構造を習得できる。" |
第2回 | 熱の流れ②:非定常熱伝導および対流による放熱の数値計算 | 伝導伝熱・対流伝熱の解析を習得できる。 伝熱の数値解析を習得できる。 |
第3回 | 管路設計と流量制御①:流量計算,管路設計 | 流量計算法を理解し、管路設計ができる。機械的エネルギー収支式を用いた解析ができる。 |
第4回 | 管路設計と流量制御②:配管作業,マニホールド製作,パイピングコンテスト | 配管作業・マニホールド製作が習得できる。流量制御方法を習得できる。 |
第5回 | エノラートの反応性を利用し、ケトンからβケトエステルの合成を行う。 (単位操作:禁水反応、加熱還流) | 禁水反応の反応操作を習得できる。 |
第6回 | エノラートの反応性を利用し、βケトエステルのアルキル化を行う。 (単位操作:加熱還流、分液、濃縮、TLC) | 分液、濃縮、TLCなどの有機反応の後処理に関する操作を習得できる。 |
第7回 | カラムクロマトグラフィーによる生成物の分離精製を行う。 (単位操作:カラム、TLC、濃縮) | カラムクロマトグラフィーの操作を習得できる。 |
第8回 | 計算化学によるシミュレーションから実際の実験を考察する。(単位操作:分子動力学計算、配座エネルギー解析、または機器分析で使用するスペクトルの解析) | 計算化学によるシミュレーションの操作を習得できる。 |
第9回 | 付加重合①:メタクリル酸メチルのラジカル重合 | ラジカル重合の機構、素反応の原理を習得できる。 |
第10回 | 付加重合②:GPC測定とNMR測定による分子量測定、連鎖移動定数の決定、ポリメタクリル酸メチルの透明性評価 | GPC測定とNMR測定による分子量の算出法、連鎖移動定数の決定法、及び高分子の透明性の評価法を習得する。 |
第11回 | 付加重合③:自由研究課題(重合) | GPC測定より、数、および重量平均分子量、分子量分布(MwMn)を決定する方法を習得できる。 |
第12回 | 付加重合④:自由研究課題(分子量測定と透明性評価) | 各班でテーマと実験計画を定め、分子量測定や透明性評価を行う。 |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね50分を目安に行うこと。
教科書「応用化学実験第三 2024年度」東京工業大学物質理工学院応用化学系 応用化学実験委員会編
初回ガイダンスの前に生協で購入すること。
化学同人編集部著 『続 実験を安全に行うために―基本操作・基本測定編―』 第4版(化学同人)ISBN: 978-4-7598-1834-5
全出席および全実験履修が原則.予習状況を含む実験の取り組み態度,実験レポート提出状況と採点結果により成績を評価する.遅刻や提出遅れを繰り返した場合は不合格とすることがある.
応用化学実験第一(CAP.F205R)および 第二(CAP.F206R)を修得していること.または 応用化学実験第一 a/b, b/a (CAP. F201R, CAP. F202R) および応用化学実験第二 a/b, b/a(CAP.F203R, CAP.F204R)を修得していること.