[実験の概要] 本実験では応用化学系の学生を対象として、応用化学実験第一a/bに引き続き、物理化学実験、分析化学実験、有機化学実験、高分子合成実験の基本操作を教授する。これらの分野に関する3つの実験テーマを設定する。「相分離」では、アミン水溶液、ポリマー水溶液の物理化学について学ぶ。また「重縮合による高分子合成」では、開環重付加によるポリピロメリイミドの合成、界面重縮合によるナイロン-6,10の合成、電解重合によるポリピロールの合成を行い、ポリマーの構造と諸物性の関係を理解する。さらに「ブチルイソプロピルエーテル合成」では、有機反応の基本であるハロゲン化アルキルの求核置換反応を学ぶ。また、実験レポートの書き方についても講述する。
[実験のねらい] 物理化学の基礎概念である相分離を理解するために、実際に測定を行って得たデータの解析と得られた結果を相分離の原理に基づいて深く考察する。また有機化合物および高分子の合成実験を通じて、官能基の性質および反応を理解し、得られた化合物の構造決定や物性評価により化合物の特性を理解する。必要な基本操作、基礎知識とともに実験レポートの書き方を講述する。その後3つの実験を通して、測定技術、データ解析能力、合成実験技術、化合物の同定技術、レポート作成能力を養う。
本実験を履修することによって、
(1) 物理化学、分析化学、有機化学、高分子化学の基礎概念を修得できる。
(2) 物理化学実験、分析化学実験、有機合成実験、高分子合成実験に必要な基礎的技術を修得できる。
(3) 実験レポートの書き方を修得できる。
(相分離)相律と相図、相分離、相平衡
(重縮合による高分子合成)環化重付加、界面重縮合、電解重合、赤外吸収スペクトル、導電性高分子、スーパーエンジニアリングプラスチック
(ブチルイソプロピルエーテル合成)ハロゲン化アルキル、求核置換反応、脱離反応、Williamsonエーテル合成
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
本実験ではまず(1) 第1回のガイダンスで詳しい説明を行う。その後、3グループに分かれて、(2)相分離、(3) 重縮合による高分子合成、(4) ブチルイソプロピルエーテル合成の実験を、グループ分けに従って順番に進める。最終回に、理解度確認のための演習と解説を実施する。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 実験を行う上でのガイダンス | 実験の概要と基本操作を理解し、実験計画を立案することができる。 |
第2回 | 実験レポートの書き方について | 実験レポートを標準的な書き方で作成することができる。 |
第3回 | 相分離①:Gibbsの相律と相図 | Gibbsの相律と相図、特に、液体二成分系の相図について説明できる。 |
第4回 | 相分離②:トリエチルアミン-水系の相分離現象の測定 | 液体二成分系であるトリエチルアミンーみず混合系の相分離現象を評価できる。 |
第5回 | 相分離③:高分子溶液の性質と相平衡 | 高分子溶液の性質と相平衡、特に、高分子-水系の相平衡について説明できる。 |
第6回 | 相分離④:ポリマー水溶液の相分離現象の測定 | 高分子ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)-水系の相分離現象を評価できる。 |
第7回 | 重縮合による高分子合成①:ポリアミド酸の合成 | 重縮合の手法が習得できる。 |
第8回 | 重縮合による高分子合成②:ポリアミド酸の特性解析とナイロン-6,10の合成 | FT-IRによる高分子の特性付けが習得できる。 界面重縮合の手法が習得ができる。 |
第9回 | 重縮合による高分子合成③:ポリアミド酸からのポリピロメリイミドの合成と各ポリマーの特性解析, 熱安定性試験 | 重縮合、高分子の熱安定性測定法を習得できる。 |
第10回 | 重縮合による高分子合成④:電解重合によるポリピロールの合成と特性評価 | 電解重合法および高分子フィルムの電気伝導度の測定とFT-IRによる特性評価が習得できる。 |
第11回 | ブチルイソプロピルエーテル合成①:ハロゲン化反応・水蒸気蒸留 | アルコールのハロゲン化反応と水蒸気蒸留の操作を習得できる。 |
第12回 | ブチルイソプロピルエーテル合成②:ハロゲン化反応・分離精製 | 有機ハロゲン化物の蒸留操作とガスクロマトグラフィー分析を習得できる。 |
第13回 | ブチルイソプロピルエーテル合成③:エーテル合成 | Williamsonエーテル合成を実施し、それらの実験操作を習得できる。 |
第14回 | ブチルイソプロピルエーテル合成④:エーテル合成・分離精製 | 粗エーテル生成物を蒸留、分析し、本求核置換反応について考察できる。 |
第15回 | まとめ理解度確認のための演習と解説 | 演習により総合的な理解度を高め、到達度を自己評価する。 |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する 予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね50分を目安に行うこと。
『応用化学実験第一』 東京工業大学物質理工学院応用化学系
初回ガイダンスの前に生協で購入すること。
化学同人編集部 編、「続 実験を安全に行うために-基本操作・基本測定 編- 第4版」(化学同人)ISBN-13: 978-4759818345
レポート評価合計(83%)とテスト(17%)で基本操作と各実験テーマの理解度を評価する。
遅刻や課題の未提出を繰り返した場合は不合格とすることがある。
この科目は「履修前提条件付き授業科目」で,「履修前提科目」は「応用化学実験第一a/b」である。「応用化学実験第一a/b」の単位を修得しなければ,この科目の単位は卒業に必要な単位として取り扱わない。
物質理工学院応用化学系の所属学生であること。または、応用化学実験委員会が別途、指定した条件を満たしていること。また本科目は応用化学実験第一a/bとともに応用化学実験第三の「履修前提科目」である。したがって、a/bとb/aの両方を履修すること。