[講義の概要] 本講義では、最先端の研究例(無機ナノ化学、有機・無機ハイブリッド化学、生物無機化学、超分子化学)や実用例を挙げつつ、それらの理解に必要な無機化学の基礎や関連性について解説する。応用化学系以外の履修生には、応用化学科目群に関連する基礎知識(200番台の無機化学関連科目に相当)と最先端技術を学ぶ機会を提供する。
[講義のねらい] 金属原子を含む複雑な分子構造の形成、分離や触媒、エネルギー変換への応用をテーマとし、これらを既に学習済みの無機化学と関連付けて理解できることを目的とする。そのために、まず基礎(分子間相互作用と会合体形成の熱力学)を確認する講義を行う。続いて、配位高分子や高分子錯体に代表される複雑な分子構造の形成について解説し、それと関連付ける形で各回に応用的な内容を含める。最後に、全体の関連性を再確認する意味で、演習を取り入れ、必要に応じてディスカッションなどを行う計画である。無機化学の基礎科目の意義について系統的に理解できるようになることが本講義の主なねらいであるが、より幅の広い視点を涵養するために無機化学と他の学問領域(有機化学、高分子化学、化学工学、エネルギー化学)との関連についても講述する。
本講義を受講することによって以下の能力を習得する。
(1) 原子間の結合、相互作用を通して多様な無機分子が形成される原理の概略を説明できる。
(2) 無機分子が持つ様々な性質の発生原理の概略を説明できる。
(3) 分離化学、触媒化学、エネルギー変換化学等への応用に向けた課題が何かを説明できる。
(4) 無機分子の設計に必要な基礎原理を把握し、簡単な分子設計ができる。
本講義は(1), (2), (3)の順で進め、最終回で上記の(4)に注目した演習を行う。
有機-無機ハイブリッド、ナノ材料(微粒子・クラスター)、生物無機化学、超分子化学、高分子錯体
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
第1~7回の授業では、各回の前半で、無機化学の基礎科目で習得した内容の復習と講義の理解に必要な追加項目の説明、後半では無機化学の応用に関する実例の紹介や関連した課題の提供を行う。特に最初の2回は基礎を重点的に行う。また第8回の授業では演習を行い、その解説およびディスカッションを行う。 適宜、理解度確認のテストも行う予定である。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 元素と核反応 原子力、核融合、原子生成 | 元素の成り立ちや核反応について、化学やエネルギーの視点から説明できる。 |
第2回 | 無機化合物の化学結合と分子間相互作用 共有結合、イオン結合、配位結合(電荷移動)、分子間力(分散力) | 各種結合と分子間相互作用の原理と結合力の差に関して体系的に説明できる。 |
第3回 | 金属と超分子 配位結合に伴う複雑な分子構造の形成 | 結合の特性(強度・指向性・可逆性)に基づき生じる構造についての関連性を説明できる。 |
第4回 | 金属と高分子 高分子錯体、配位高分子 | 金属原子が高分子と複合化することによる多彩な機能発現に関して説明できる。 |
第5回 | 金属と生体分子 金属タンパク、ヘム、非ヘム、人工血液、人工酵素 | 生体に含まれる金属錯体化合物の構造と機能を説明できる。 |
第6回 | 金属ナノ粒子とクラスター 金属ナノ粒子、金属クラスター | 多核錯体、クラスター、ナノ粒子の性質の違いについて説明できる。 |
第7回 | 無機化合物の電子化学 電子移動化学、光合成、光触媒、エネルギー変換 | 分子内の電子移動やそれに基づくエネルギー関連材料としての応用例を説明できる。 |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
P. Atkins, T. Overton, J. Rourke, M. Weller, F. Armstrong著、田中、平尾、北川 訳「シュライバー・アトキンス無機化学(上)」第4版(東京化学同人)ISBN: 978-4-8079-0667-3.
講義資料は授業開始時に配布する
F. A. Cotton, G. Wilkinson, C. A. Murillo, M. Bochmann, "Advanced Inorganic Chemistry", 6th Ed., Wiley-Intercience; ISBN: 978-0471199571
配位結合、分子間相互作用に基づく金属化合物の多様な構造および物性、それらの応用について,その理解度を評価する。配点は期末試験(50%)、演習(50%)とする。
無機化学(元素と化合物)(CAP.B224)を履修していること。または同等の知識を有していること。