本講義では,高分子化合物の集合体において観測される特徴的で重要な物性のうち,熱的性質(ガラス転移,熱移動),電気的性質(誘電性、圧電性、導電性),光学的性質、および表面物性について、熱力学と物理化学の観点から説明し、基礎知識を提供する。また,様々の物性について問題演習を行って理解を深める。
様々な用途で使用されている高分子材料には,高分子物質の集合体として示す独特な性質や挙動が活用されている。 高分子物質の集合体が示す熱的,電気的,および光学的性質は、どのような構造と関係して、どのように発現するのかを学び理解する。また、高分子の特徴的な性質が、どのように機能性材料に用いられているか,その応用例についても学ぶ。
本講義を履修することによって、次の能力を修得する。
1)ガラス転移現象を分子の運動性と熱力学の両方から説明できる
2)高分子の相転移現象を説明できる
3)高分子の熱移動を説明できる
4)ゲルの状態方程式と体積相転移現象を説明できる
5)高分子の電気的性質の原理と現象を説明できる
6)高分子の光学的性質の発現機構を説明できる
7)表面物性の原理と現象を説明できる
相転移、ガラス転移、結晶化、誘電性、圧電性、導電性、屈折率、複屈折、光透過性、濡れ、表面粘弾性, ゲル
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
教科書に従って講義を進める。毎回の講義のはじめに復習を兼ねて前回の演習問題の解答を解説する。各講義最後の15分で、講義内容に関する演習問題を行う。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 高分子の電気的性質 -誘電性,圧電性,導電性 | 高分子の誘電分散、圧電性、強誘電性、電子伝導の原理と現象の説明 |
第2回 | 高分子の光学的性質 1 -分子分極率・屈折率と複屈折 | 高分子の屈折率・複屈折の発現機構の説明 |
第3回 | 高分子の光学的性質 2 -電子状態と光透過性・光機能性 | 高分子の電子状態と光透過性の説明、様々な光機能性の説明 |
第4回 | 高分子の熱的性質 1 -ガラス転移、固体状態の相転移現象 | 熱力学の復習,ガラス転移現象の説明、一次相転移と二次相転移の説明 エンタルピーの温度変化と状態の関係の説明 |
第5回 | 高分子の熱的性質 2 -熱移動の基礎と熱伝導率 | 熱移動の基礎と熱伝導率の説明 |
第6回 | ゲル -構造と物性、状態方程式、体積相転移現象 | ゲルの構造の説明、状態方程式と体積相転移現象の説明 |
第7回 | 表面物性 -濡れ,表面粘弾性 | 濡れの物理化学的解釈と表面粘弾性の説明 |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
高分子学会編『基礎高分子科学』(東京化学同人) ISBN4-8079-0635-6 第4章第4節の一部と第5節,第5章第2節から第5節,および授業時の配布プリント、高分子学会編『基礎高分子科学』第2版 (東京化学同人)第8章
参考書:アトキンス『物理化学』第8版上,下巻(東京化学同人),北野博巳ほか著『高分子の化学』三共出版
高分子物質の熱的,電気的,および光学的性質の基礎の理解度を評価する。期末試験(70%),問題演習(30%)で成績を評価する。
履修条件は特に設けないが、高分子科学に関連する科目を履修していることが望ましい。