【講義の概要】本講義では,高温における金属の酸化現象を理解する上で必要となる熱力学と反応速度論を学ぶ.熱力学では,金属とその表面に形成する酸化皮膜に関して,それらの化学的安定性を評価するエリンガム図の作成法と使用法を学ぶ.また,反応速度論では,酸化皮膜の成長機構とWagnerの理論について学ぶ.
【講義のねらい】本講義を受講することによって,高温における金属の劣化現象を理解し,与えられた材料と環境によりどのような環境劣化が起こりうるのかを予測できるようになる.本講義を通して,現実の各種高温プロセスにおける金属材料の劣化現象に関する理解を深めて欲しい.
本講義を履修することによって次の能力を修得する.
1)高温における金属の酸化現象とその工業的重要性について説明することができる.
2)エリンガム図を書き,それを用いて金属や酸化物の化学的安定性を評価することができる.
3)酸化皮膜の成長機構を説明し,Wagnerの理論を用いて放物線速度定数を計算することができる.
4)与えられた条件(材料と環境)から,高温における金属材料の劣化挙動を予測することができる.
金属,高温酸化,エリンガム図,酸化皮膜の成長機構,放物線則,Wagnerの理論
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
授業計画に基づき,演習を行いながら,各項目の理解を深める.
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 金属の高温酸化の概要 | |
第2回 | エリンガム図の読み方,使い方(その1) | エリンガム図の作成,エリンガム図を用いた金属や酸化物の化学的安定性の評価 |
第3回 | エリンガム図の読み方,使い方(その2) | 合金の活量を考慮したエリンガム図の作成,エリンガム図を用いた合金や酸化物の化学的安定性の評価 |
第4回 | 酸化皮膜の成長機構と成長速度 | 酸化皮膜の成長機構と律速段階 |
第5回 | 放物線速度則とWagnerの理論(その1) | Wagnerの理論,酸化物中の欠陥構造と拡散 |
第6回 | 放物線速度則とWagnerの理論(その2) | Wagnerの理論,酸化物中の欠陥構造と拡散 |
第7回 | 金属の高温酸化現象の解析手法 | 各種解析手法の原理 |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
特に指定しない.
授業で使用するスライドや配布資料など.
エリンガム図の利用法,酸化皮膜の成長機構,Wagnerの理論,酸化皮膜の各種解析手法について,その理解度をレポート課題等で評価する.
材料熱力学(MAT.A203.R)を履修していること,または同等の知識があること.