[講義の概要] 本講義では、金属中心上で繰り広げられる様々なタイプの反応について、そのメカニズムを詳細に解説する。
[講義のねらい] 有機金属化学は20世紀半ばにスタートした比較的新しい分野であり、有機化学と錯体化学の境界領域に位置し、さらに触媒化学、生化学、材料化学にも大きな影響を与えている。本講義では、現代の化学を進めていく上で欠くことのできない有機遷移金属錯体の化学について、有機金属錯体の反応化学をベースにその基礎を解説する。
本講義を履修することによって次の能力を修得する。
1) 酸化的付加および還元的脱離反応を説明できる。
2) 挿入およびβ脱離反応を説明できる。
3) NMRを用いた錯体の動的挙動の測定方法を説明できる
4) カルベン錯体の性質とメタセシス反応を説明できる。
5) 金属表面での反応化学と有機金属化学との関係を説明できる。
酸化的付加、還元的脱離、挿入、β脱離、触媒反応、動的挙動、カルベン錯体、メタセシス反応、Cluster surface analogy
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
この講義では、まず遷移金属錯体の素反応過程について解説し、次いで有機金属錯体の反応性を考える上で重要な錯体の動的性質について、NMRを用いて評価する手法について学ぶ。また有機金属錯体と固体触媒との関連についても解説する。最終日には理解度確認のための期末試験を実施する。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 酸化的付加と還元的脱離 | 酸化的付加と還元的脱離反応を説明できる。 |
第2回 | 挿入とβ脱離反応 | 挿入反応とβ脱離反応を説明できる。 |
第3回 | 配位子への求核付加と求電子付加 | 付加による配位子の変換反応を説明できる. |
第4回 | 有機金属錯体の動的性質; 温度可変NMR測定 | 温度可変NMR測定を用いて錯体の動的挙動を調べる方法を説明できる。 |
第5回 | カルベン錯体およびメタセシス反応 | カルベン錯体の性質とメタセシス反応を説明できる。 |
第6回 | Cluster Surface Analogy | 有機金属クラスター化学と固体表面での反応の関連性を説明できる。 |
第7回 | 理解度確認のための演習と解説 | 第1~6回の講義内容を理解し、演習問題に解答できる。 |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
Robert H. Crabtree著、 “The Organometallic Chemistry of the Transition Metals” 6th Ed., ISBN: 978-1-118-13807-6
1) 山本明夫著、「有機金属化学 -基礎と応用―」裳華房、ISBN: 978-4785333010
2) 授業で扱う全ての資料は、事前にOCW-iにアップする。
期末試験(70%)、授業参加度(30%)(授業参加度は授業中の小テストなどにより算出する)
有機遷移金属錯体化学 (CAP.A561)を履修していること、または同等の知識を有していること。また、無機化学(理論2)(CAP.A372)および無機化学(錯体化学)(CAP.A373)を履修していることが望ましい。
高尾俊郎 (takao.t.aa[at]m.titech.ac.jp; 内線2580)
メールで事前予約すること。