材料科学分野での解析において重要となる計算科学的手法に関して、基本原理の理解ならびに実際の計算手法の体得を目的とする。序盤では、量子化学計算手法について、汎用ソフトウェアを用いながら手法の基礎について講義し、いくつかの無機分子の計算を行いながら、無機分子の構造や性質が発現される原理について説明を与える。次に、機械学習の一つである回帰分析を取り上げ、材料と物性のデータを題材としてGUI(Graphical User Interface)搭載のソフトウェアを用いながら各解析法の原理や相違点を説明し、得られる結果の解釈について理解を深める。後半では、実際に簡単なコード記述を通して材料科学分野で広く使われているプログラミング言語に触れ、体得する。また、計算科学的手法が実際の材料科学研究においてどのように用いられているか、最新の研究を通じて知見を広める。
本講義を履修することにより、以下の知識を身に着けられることを目標とする。
• 量子化学計算手法の考え方と計算の実際について学習する。
• 種々の計算を実施し、結果と観測データとの比較を通して量子化学計算の意味を理解する。
• 量子化学計算の有用性と可能性について理解を深める。
• 回帰分析の基本原理と手法による特徴、違いを理解する。
• 実際の回帰分析を通してデータ処理やパラメータ設定の役割、重要性を理解する。
• 基本的なプログラミングを学ぶ。
• 材料科学における計算科学的手法の重要性について学習する。
量子化学計算 化学結合 機械学習 回帰分析
✔ 専門力 | ✔ 教養力 | ✔ コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
計算科学について、3部に分けて学習する。いずれも、回毎に設定した学習対象について、解説と課題計算実習を組み合わせながら進めていく。
序盤では、無機化合物に現れる化学結合に関する知識について、量子化学計算ソフトを利用した実習を行いながら理解を深める。
次に、機械学習の一つである回帰分析に関する知識について、GUI付き機械学習ソフトを利用した実習を行いながら理解を深める。
後半では、汎用的なプログラミング言語であるPythonを例に、その簡単な使い方ならびに計算等を通した実習を行いながら理解を深める。最後に、計算科学を用いた材料開発に関して研究紹介を行う。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 量子化学計算はじめ | シュレーディンガー波動方程式、原子軌道、固有エネルギー、多体問題、ハートリーフォック法、LCAO係数 |
第2回 | 多原子分子への展開、分子の形を決める要因 | 分子軌道、基底関数、スレーター関数とガウス関数、混成、非共有電子対 |
第3回 | 原子核位置はどこにあるか? | 構造最適化、初期配置、振動解析、分子振動、振動エネルギー、振動モード、赤外吸収、ラマン散乱 |
第4回 | 電荷・双極子モーメント | マリケン電荷密度、双極子モーメント |
第5回 | 分光法との対応 | 軌道エネルギー、仕事関数、光電子スペクトル |
第6回 | 回帰分析:線形回帰 | 線形回帰、最小二乗法、共分散、決定係数 |
第7回 | 回帰分析:多重線形回帰 | 重回帰分析、LASSO回帰、Ridge回帰 |
第8回 | 回帰分析:非線形 | ノンパラメトリック回帰、Support vector回帰 |
第9回 | Python –プログラミング言語- とは何か | 1. コンピュータの基礎 2. Pythonの特徴 3. 基本的な文法 |
第10回 | プログラム演習 | pythonによるプログラム演習I 1. テキストファイル、Excelファイルからデータを読み込む 2. 数値微分、数値積分を行う 3. グラフを描く |
第11回 | 線形最小二乗法と非線形最適化 | pythonによるプログラム演習Ⅱ 1. データを読み込み、単変数線形最小二乗法で解析をするプログラムを作る 2. データを読み込み、二変数線形最小二乗法で解析をするプログラムを作る 3. データを読み込み、非線形最小二乗法によるカーブフィッティングプログラムを作る |
第12回 | 特別講義① | マテリアルズインフォマティクスに関する最新の研究の紹介① |
第13回 | 特別講義② | マテリアルズインフォマティクスに関する最新の研究の紹介② |
第14回 | 特別講義③ | マテリアルズインフォマティクスに関する最新の研究の紹介③ |
学修効果を上げるため、教科書や配布資料等の該当箇所を参照し、「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
授業中に配布する資料
指定なし
講義中に行う課題で評価する。
量子化学に関する授業、材料系の実験系科目を履修していることが望ましい。
演習に用いる端末数が限られているため、履修希望者多数の場合には抽選となる。