本講義では,気体分子の運動・輸送,拡散方程式,反応速度論,反応機構の理論の基礎を身につけることを目的とします。
物質をつくる反応式は一見簡単にみえるが,実は複雑な反応から成り立っています。反応を駆動する力は,分子の運動・輸送・拡散であり,素反応にまで実験的に解明することが求められます。そこで時間的変化で示される化学反応速度から反応機構を理解・表現し,反応機構の理論の理解にまで到達させます。
本講義を履修することで,物質をつくる化学反応の速度過程(動力学)について,分子運動論から様々な反応機構までを,化学反応速度の理論的な取り扱いに通じて正しく考えられるようになることを到達目標とします。
気体の輸送物性,溶液中の運動,拡散方程式,反応機構,速度式の解釈,衝突理論,遷移状態理論
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
板書と必要な資料を配布して,講義を進めていきます。また,前回の講義内容の理解を深めるため,必要な演習問題に取り組んでもらうとともに,その解答を配布・解説します。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 講義の概略;気体の運動論モデル1:衝突,圧力,速さ | マクスウェルの速さ分布の理解 |
第2回 | 気体の運動モデル2:衝突頻度,平均自由行程 | 気体の分子運動の定量的理解 |
第3回 | 分子の運動:流束,拡散係数,熱伝導率,粘性率,流失 | ドリフト速さ,移動度,輸率,イオンーイオン相互作用 |
第4回 | 液体中の分子運動:電解質溶液の伝導率,イオンの移動度 | 溶液中の分子運動 |
第5回 | 拡散:熱力学的な見方,拡散方程式 | フィックの第一則,濃度勾配による熱力学的 |
第6回 | 拡散:統計的な見方,イオンチャネル | フィックの第二法則(拡散方程式) |
第7回 | 実験化学的化学反応速度論(1):実験法,反応速度,速度式 | 反応速度の取り扱い |
第8回 | 実験化学的化学反応速度論(2):積分型速度式,平衡に近い反応(緩和法),温度依存性 | 積分型速度式と緩和法、温度依存性 |
第9回 | 速度式の解釈(1):素反応,逐次素反応,律速段階 | 素反応と逐次素反応 |
第10回 | 速度式の解釈(2):定常状態の近似,1分子反応 | リンデマン-ヒンシェルウッド機構 |
第11回 | 複雑な反応速度:連鎖反応と酵素反応 | ライス‐ハーツフェルド機構、ミカエルス・メンテン機構 |
第12回 | 反応の分子動力学(1):衝突理論,拡散律速の反応 | 衝突理論 |
第13回 | 反応の分子動力学(2):遷移状態理論 | 遷移状態理論 |
第14回 | 反応の分子動力学(3):分子衝突の動力学 | 分子衝突の動力学 |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
『アトキンス物理化学』(第10版)P. W. Atkins著,千原秀昭他訳, 東京化学同人
(上)第一部 熱力学(「気体の性質」のうち「1B気体の分子論モデル」)
(下)第三部 変化(「分子の運動」、「化学反応速度論」、「化学反応動力学」)
立石哲男訳(キース・J・レイドラー著) 『化学反応速度論I』 産業図書,慶伊富長著 『反応速度論』 東京化学同人
分子の運動,拡散方程式,反応速度式,反応の分子動力学の基礎知識とその応用に関する理解度を評価する。期末試験(80%)と演習等(20%)で成績を評価する。
特に履修の条件は設けない。