材料創成や材料特性評価において,物理化学的な状態変化や相の安定性を考えることは必須であり,本講義で修得する熱力学の考え方はその基本となる.また,現象を理論的に考察するうえで強力なツールとなる。そこで,熱力学の基礎知識を講義において概説し,一方で演習をとおして,材料創成や材料特性評価に必要となる基本的な考え方を理解できるようにする。
本講義を履修することによって,物理化学的な状態変化や相安定性を考える基礎となる熱力学の知識を養い,それを材料創成や材料特性評価に応用する考え方を修得することを目標とする。
✔ 該当する | 実務経験と講義内容との関連(又は実践的教育内容) |
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本講義は,素材メーカーでの新素材の研究開発経験を持つ教員がその実務経験を活かし,最先端素材の特性を理解する上で基礎的かつ本質的な知識が極めて重要であることを理解できるよう教育を行う。 |
内部エネルギー、エンタルピー、エントロピー、自由エネルギー、化学ポテンシャル、相図、化学平衡
✔ 専門力 | ✔ 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
✔ 化学熱力学の基礎 |
14回の講義・演習で進めていきます。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 気体の性質(完全気体と実在気体,完全気体とファン・デル・ワールスの状態方程式) | 気体の基本的な性質について講義する |
第2回 | 熱力学の第一法則(熱,仕事,内部エネルギー, 状態関数の導出) | 熱力学の第1法則について紹介し、熱,仕事,内部エネルギー, 状態関数等について講義する |
第3回 | 熱力学の第一法則(エンタルピー, 熱容量,断熱変化,熱化学) | 前回に続き, エンタルピー, 熱容量, 断熱変化, 熱化学等について述べ、熱力学第1法則の全体像を講義する |
第4回 | 熱力学の第二,第三法則(自発変化の方向とエントロピー) | 熱力学の第二,第三法則について紹介し、エントロピーの定義、自発変化の方向との関係について講義する |
第5回 | 自由エネルギー(ギブズ・エネルギーとヘルムホルツ.エネルギー) | ギブズとヘルムホルツの2つのエネルギーとその意味の違いについて講義する |
第6回 | 化学ポテンシャルとフガシティ | 化学ポテンシャルの定義、実在気体の挙動を記述するためのフガシティの意味について講義する |
第7回 | 到達度確認の総合演習(第1~6回) | 第1回から第6回までの内容について演習を行う。 |
第8回 | 純物質の物理的な変態(一成分系の相安定性) | 1成分系の相変態と自由エネルギーの関係について講義する |
第9回 | 混合物の熱力学的な記述(部分モル量,化学ポテンシャル) | 多成分系の熱力学について講義する |
第10回 | 理想溶液の熱力学 | 理想溶液の性質と、各種の束一的性質について講義する |
第11回 | 非理想溶液の取り扱いと活量 | 溶媒、溶質の活量について講義する |
第12回 | Gibbsの相律と相図の理解 | 相律と2成分系状態図について講義する |
第13回 | 化学平衡(平衡定数とルシャトリエの法則) | 化学平衡にもとづく各種反応、エリンガム図等について講義する |
第14回 | 水溶液におけるイオン平衡(酸・塩基反応,酸化・還元反応,平衡電気化学) | 熱力学に基づく酸・塩基反応や平衡電気化学について講義する |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
P. Atkins, J. de Paula(千原秀昭、中村亘男訳):物理化学(上)第10版 東京化学同人
授業中に配布される資料など
宿題,到達度確認総合演習および期末試験により行う.
学部1年生の化学熱力学を履修していること