本講義では、核医学を支える物理学について、基礎から最先端研究開発までを扱う。核医学は、ごく微量の放射性同位元素を目印としてつけた医薬品を用いて、病気の診断や治療をする医学の専門分野である。特に、陽電子放出核種で目印をつけた診断薬の体内分布および時間変化を画像化するポジトロンCT(PET)は、ほぼ全身のがん診断や分子イメージング研究の推進に不可欠な方法として大きな注目を集める。一方で、装置や画像化手法は発展途上であり、高解像度化・高感度化・低コスト化などを目指した研究開発が世界的に活発に行われている。そこで、本講義では、放射過程や放射線検出の基礎から最先端のイメージング装置まで、核医学の基本的な考え方や物理的基礎を中心に核医学の基本を短期間に学習する。
臨床医や放射線技師を志す学生には、核医学の診療現場に必要な物理的事項のエッセンスを、一通り学習することを目的とする。また、物理工学研究に携わる学生には、医工学、特に放射線計測の医学応用のポイントを理解し、将来医工学分野もしくは医療産業での研究開発に従事する際に必要となる基本知識を身につけることを目的とする。
(1)核医学の診療現場に必要な物理的事項のエッセンスの学習
(2)医工学、特に放射線計測の医学応用のポイントを理解し、将来医工学分野もしくは医療産業での研究開発に従事する際に必要となる基本知識の取得
(3)次世代の核医学イメージング装置などの研究開発を含めた最先端研究の理解
放射線、放射性核種、放射線計測、断層撮影法、画像再構成、動態機能解析、SPECT、PET、診断、治療、分子イメージング
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
講義の後半で,その日の教授内容に関する演習問題に取り組んでもらう。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | (1)基礎、(2)核種と放射過程 | 放射性核種とα壊変、β壊変、γ壊変についての理解 |
第2回 | (3)放射能、(4)高エネルギー放射線と物質との相互作用 | 放射能、半減期、統計学の基礎、放射線と物質との相互作用についての理解 |
第3回 | (5)高エネルギー放射線の検出 | ガス検出器、シンチレーション検出器、半導体検出器の原理や特徴についての理解 |
第4回 | (6)In vivo放射線計測・ シンチレーションカメラ、(7)エミッションCT(SPECT, PET) | 生体イメージング法の原理とシンチレーションカメラ、SPECT、PETの撮像法の理解 |
第5回 | (8)最先端PET装置開発研究の紹介 | 検出器や画像再構成法、新規応用展開を含め、最先端研究開発状況の理解 |
指定しない。
講義で資料を配付する。
毎回の講義時に行うテストの成績で評価する。
履修の条件を設けない。