本講義では,認知人間工学と総称される分野に焦点をあて,ここで用いられるアプローチ方法,およびそのヒューマンマシンシステム設計ならびに職務・組織設計に関する知見および関連する基礎的なスキルを教授する.認知人間工学が対象としているさまざまな領域の中で,本講義では特に応用的な側面に着目し,システムの設計ならびに組織的マネジメントに資するような実践的な内容について説明する.講義の内容は,(1)「認知人間工学の基礎」,(2)「ヒューマンマシンインタラクションとユーザビリティ」,および(3) 「ヒューマンエラーとリスクマネジメント」の3 つのパートから構成される.
本講義で教授するアプローチ方法および考え方について理解し,それらを身につける.
本講義を履修することによって,以下の2つの目標達成を目指す.
(1)人間の認知特性の理解に基づきヒューマンマシンシステムの設計のための方法・考え方について正しく理解し,その内容を他者に説明することができる.
(2)ヒューマンエラー・リスクマネジメントに関する重要な概念の理解とそれに対する組織的な取り組みおよび事故解析に用いられる現代的な技術・手法について理解し,その内容を他者に説明することができる.
ヒューマンマシンシステム,ユーザ中心型設計,ユーザビリティ・エンジニアリング,ヒューマンエラー,リスクマネジメント,安全文化,安全パフォーマンス
✔ 専門力 | 教養力 | ✔ コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
授業では,毎回講義形式により内容の説明を行う.それらに関して確実な理解と応用力を養うために,講義内容に関連したグループワークを実施する.
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 認知人間工学の基礎 | 認知人間工学の概要,およびその考え方の概要について説明することができる. |
第2回 | 認知人間工学の方法(認知人間工学の思考プロセス,データ分析の方法) | 認知人間工学における問題解決の基礎ならびに代表的なデータ獲得方法の概要について説明することができる. |
第3回 | ヒューマンマシンシステム1(認知特性,人間処理モデル) | ヒューマンマシンシステムについて説明することができる. |
第4回 | ヒューマンマシンシステム2(ユーザ中心型設計,シナリオに基づく設計,ペルソナ手法) | ユーザ中心型設計の方法論とその中で用いられる方法について簡単に説明することができる. |
第5回 | ヒューマンマシンシステム研究1(研究実例:アイトラッキングアプローチ) | ヒューマンマシンシステム研究の適用領域およびその例について説明することができる. |
第6回 | ヒューマンマシンシステム研究2(研究アプローチの実践) | アイトラッキングを用いた研究について体験的に学習する. |
第7回 | グループワーク(具体的なヒューマンマシンシステムを取り上げ,その設計上の問題点をテーマにしたグループディスカッション,プレゼンテーション) | ヒューマンマシンシステムに関する認知人間工学的な問題発見を行う. |
第8回 | ユーザビリティ1(現在のユーザビリティ,ユーザビリティエンジニアリング) | ユーザビリティの現代的な定義およびそれに関する方法を説明することができる. |
第9回 | ユーザビリティ2(ユーザビリティのテスト,ユーザエクスペリエンス) | ユーザビリティ設計・評価のための実践的な方法について,その概要を説明できる. |
第10回 | ヒューマンエラーの理論(ヒューマンエラー,事故のメカニズム,エラー分類,フールプルーフとフェールセーフ事故分析へのアプローチ方法) | ヒューマンエラーの理論について説明することができる. |
第11回 | リスクマネジメント(リスクの定義,システム間でのリスク比較,伝統的リスクマネジメントのアプローチ,効率と徹底さのトレードオフ,レジリエンスエンジニアリング) | リスクマネジメントおよびその関連する概念について説明できる. |
第12回 | 安全文化(安全文化の定義,安全文化の次元,安全文化評価,「安全」文化の要素,医療の安全文化) | 安全文化およびそれに関連する概念について説明できる. |
第13回 | 安全パフォーマンス測定とインシデント報告(安全のアウトカムの測定方法,インシデント報告システム,エラー分類,安全・品質パフォーマンスインディケータ,グローバルトリガーツール,安全文化による安全のアウトカムへの貢献) | 安全パフォーマンスの測定とインシデント報告システム,および安全文化とアウトカムとの関係について説明することができる. |
第14回 | ケーススタディ:鉄道安全への適用(保線作業者のリスクマネジメント,鉄道会社の安全文化) | 事例に基づきリスクマネジメントならびに安全文化について実践的に理解する. |
第15回 | グループワーク(交通事故の潜在要因分析へのアプローチを取り上げたグループディスカッション,プレゼンテーション) | 交通事故の潜在要因分析に関するグループディスカッションおよび発表会を行う. |
特に指定しない.
伊藤謙治著『高度成熟社会の人間工学』日科技連.
講義資料を毎回配布する.
毎回の授業の後に課される小テストにより理解度を評価するとともに,グループワークにより人間工学の技法およびその考え方の理解度を評価する.小テスト(50%),グループワーク(50%)で成績を評価する.
履修の条件を設けない