管理技術の開発を使命とした経営工学の全体像の理解のために,経営工学(インダストリアルエンジニアリング)の源流であるF. W. Taylorの科学的管理法(Scientific Management)およびそこでの重要な管理技術である作業研究と工程設計・評価に関する基礎知識,ならびに現代の知的職務に対応した管理技術の理解のために人間の知覚,認知機能に重点が置かれた現代的作業研究(認知タスク分析)に関する知識を,それぞれ講義・演習を通して習得する.本講義は,今後他の講義で学ぶ様々なレベルの管理技術の理解に資することを狙って,作業システムを構成する最小の要素である個人の動作・思考および設備等の稼働を対象とし,作業システムの可視化,評価をするための基礎的な手法に焦点を当てる.
授業では,講義形式により内容の説明をした後に,それらに関して確実な理解と応用力を養うために,講義内容に関連した演習・実験を実施する.本講義は2クォーターにわたって開講される.
本講義を履修することによって,以下の2つの目標達成を目指す.
(1)主として鉱工業において発展してきた伝統的なインダストリアル・エンジニアリング(IE) の技法およびその背後にある考え方について正しく理解し,他者に説明できる.
(2)社会・技術の進歩に適応し進化したIEの技法について理解を深め,現代社会のさまざまな領域における作業・業務においてもこれらの技法を利用できるようにする.
IE,科学的管理法,作業研究,標準,改善,工程設計,経済性評価,認知特性,人間情報処理メカニズム,認知的ルーチン,認知タスク分析
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
授業では,毎回講義形式により内容の説明をした後に,それらに関して確実な理解と応用力を養うために,講義内容に関連した演習・実験を実施する.全出席および全実験履修が原則である.本講義は2クォーターにわたって開講される.
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | インダストリアル・エンジニアリングとは.IE概論(IEの考え方と現代的適応に向けて) | IEの定義,歴史,およびその考え方の概要について説明することができる. |
第2回 | 標準時間の設定(直接時間観測,フィルム分析) | 標準時間の概念を理解し,直接時間観測による標準時間の設定方法を説明することができる. |
第3回 | PTS法(MTM,MOST,MODAPTS他) | PTSの概念を理解し,PTSによる標準時間の設定方法を説明することができる. |
第4回 | 作業分析・動作分析(サーブリッグ,微細動作分析) | 動作分析を実施することができる. |
第5回 | 作業改善と継続的改善活動(動作経済の原則,作業改善の実施,標準資料法) | 動作経済の原則を理解し基礎的な作業改善を実施することができる. |
第6回 | ワークサンプリング(ワークサンプリングの計画,予備調査,本調査) | ワークサンプリングの一連の方法を説明することができる. |
第7回 | 習熟性工学(習熟モデルと利用法) | 習熟のモデルを用いた分析を実施できる. |
第8回 | 工程分析(工程図記号) | 工程図記号を理解し,これを用いて工程を記述することができる. |
第9回 | 設備投資の経済性評価(エンジニアリングエコノミー) | 経済性評価の基礎的な原理を説明できる. |
第10回 | 認知作業と基礎的人間特性1(感覚・知覚機能) | 人間の感覚・知覚機能について簡単に説明できる. |
第11回 | 認知作業と基礎的人間特性2(認知機能) | 人間の認知機能について簡単に説明できる. |
第12回 | 認知的ルーチンに対する心理学的知見の利用 | モデルヒューマンプロセッサおよびその工学的モデルであるGOMSについて説明できる. |
第13回 | 非認知的ルーチンと認知プロセス分析1(プロトコル分析) | 言語プロトコル分析について説明することができる. |
第14回 | 非認知的ルーチンと認知プロセス分析2(アイトラッキング分析) | アイトラッキング分析について説明することができる. |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ本学の学修規程で定められた時間を目安に行う。
特に指定しない.
伊藤謙治著『詳解インダストリアル・エンジニアリング 体系化とマネジメントへの展開』日本能率協会マネジメントセンター.
講義資料を毎回配布する.
毎回の授業の後に課される演習・実験のレポートによりIEの技法およびその考え方の理解度を評価する.レポート(100%)で成績を評価する.
履修の条件を設けない