本講義の目的は,電力システムと電機システムの解析と制御の手法を理解することにある。まず,瞬時無効電力理論について解説し,基本的な電力システムの有効電力と無効電力を理解するとともに,電力変換器制御方法を学ぶ。次に,座標変換と三相交流モータの等価回路の基礎を講義し,その解析手法と制御方法を理解する。これらを通して,電力システムと電機システムの理解を深めるとともに,新たな回路・システムに対しても解析や制御の方法を導き出す能力を育成する。
以下の能力を修得することを目標とする,
1) 単相回路と三相回路の有効電力及び無効電力の透過性と差異を説明できる。
2) 瞬時無効電力理論を用いた解析方法を基本的な解析に応用できる。
3) 瞬時無効電力理論を用いた制御方法を電力変換器の基本的な制御に応用できる。
4) 種々の電気機器の等価回路と電圧電流方程式を導出できる。
5) 種々の交流モータの瞬時トルク制御の基礎を理解し,必要な制御器を実装できる。
有効電力,無効電力,パワーフロー,交流モータ,トルク制御
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
毎回の授業では,まず理論,解析手法とその応用などを説明し,講義内容に関する課題について議論と発表を行う。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 電力変換器と電気機器解析の基礎 イントロダクション,フェーザベースの電力変換器と電気機器解析,瞬時値解析の必要性 | 瞬時値解析が必要なアプリケーションについての議論 |
第2回 | 基本理論と解析手法 直流と交流,交流回路理論,フェーザ,複素電力 | 交流回路理論と過渡解析の関係についての議論 |
第3回 | 単相回路の有効・無効電力 瞬時電力,有効電力・無効電力・皮相電力,高調波の電力 | 単相回路の電力の確認 |
第4回 | 三相回路の電力 三相回路,各相の電力とその和,三相回路の無効電力 | 三相回路と単相回路の電力の比較 |
第5回 | 瞬時無効電力理論 瞬時無効電力の定義,物理的意味 | 瞬時無効電力の確認 |
第6回 | 瞬時無効電力理論の電力変換器制御への応用1 電力変換器の瞬時無効電力,無効電力補償装置 | 瞬時無効電力理論の応用の利点についての議論 |
第7回 | 瞬時無効電力理論の電力変換器解析への応用2 高調波検出と電力用アクティブフィルタ,コンデンサ電圧制御法 | 瞬時無効電力理論の有無の制御特性の比較・考察 |
第8回 | 回転座標と等価回路 静止座標と回転座標,等価回路 | 等価回路の比較と同一性の確認 |
第9回 | 種々の座標変換 三相-二相変換,静止座標変換,回転座標変換,対称座標変換 | 座標変換の適用性の確認 |
第10回 | 交流モータの構造とモデリング 内部磁束と起電力,トルク,誘導起電力 | 等価回路の要素とモータの対応する部位の関係の確認 |
第11回 | 交流モータの電圧電流方程式 方程式の導出,物理的意味の考察,座標変換 | 電圧電流方程式の適用範囲についての議論 |
第12回 | 交流モータのモデリング 基本的なモデリング,伝達関数,種々のモータへの応用 | 種々のモータへ適用する場合の変更点の議論 |
第13回 | 三相誘導モータのベクトル制御 誘導モータの過渡応答,瞬時トルク,制御法 | 予測されるトルク応答についての議論 |
第14回 | 三相同期モータのベクトル制御 同期モータの基本的な特性,瞬時トルク,トルク制御 | トルク制御の安定性についての確認 |
第15回 | 内部永久磁石型同期モータの制御 突極性とリラクタンストルク,最大トルク制御,制御の実装 | 最大トルク制御特性の確認 |
講義資料はOCW/iにて配布する。
その他の参考となる論文等については,講義中に紹介する。
期末試験により評価する。
本講義では,学部授業「電気回路第一・第二」「電磁気学第一・第二」「電気機器工学」の知識を必要とする。