本講義では、これまでの講義で学んだ半導体物性や電磁気学等の基礎知識をもとに、半導体中の光の伝搬や、光吸収・発光など、光物性の基礎的概念を理解するとともに、現代の科学技術で重要な役割を果たしている光デバイスの原理・構造や、その応用システムを理解するのに必要な基礎を学ぶ。まず、半導体中の光と電子の相互作用を自然法則から理解し、数理的に解析する手法に習熟することを通して、半導体の光技術応用に必要な考え方や解析手法に対する知識を習得する。次に材料による光物性の違い(バンドギャップ、直接遷移と間接遷移など)を、エネルギーバンド等の物性論に基づいて理解した後、誘導吸収、自然放出と誘導放出、光増幅、光吸収電流、光起電力効果、レーザ発振など、光デバイスの原理となる概念について講述する。これらの基礎知識をベースとして、光の吸収と放出を応用した発光・受光デバイスについて解説する。発光ダイオード及び半導体レーザは、照明や光ファイバ通信、光計測・光加工などさまざまなところで応用されている発光デバイスであり、また、光信号を電気信号に変換するフォトディテクタや、太陽光を電気エネルギーに変換する太陽電池は受光デバイスとして広く用いられている。各デバイスの基本的な構造と動作原理についての基礎的理解を得ることにより、さらに先進的な光応用技術に関する講義に向けた橋渡しとする。
本講義を履修することで以下の能力を修得する。
(1) 半導体材料による光物性の違いを、エネルギーバンド等、物性論の理解に基づいて説明できる。
(2) 半導体中の光の伝搬のメカニズムを説明し、基本的なモデルについて解析できる。
(3) 半導体の光吸収と光放出のメカニズムを説明し、基本的なモデルについて解析できる。
(4) 半導体の光増幅のメカニズムを説明し、基本的なモデルについて解析できる。
(5) 半導体受光デバイスとしてのフォトディテクタと太陽電池の基本的な構造と動作原理を説明できる。
(6) 半導体発光デバイスとしての発光ダイオードと半導体レーザの基本的な構造と動作原理を説明できる。
半導体の発光、半導体の光吸収、光と電子の相互作用、誘導放出、自然放出、誘導吸収、光増幅、フォトダイオード、太陽電池、発光ダイオード、半導体レーザ
専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
✔ ・電気電子分野の応用専門力 |
スライドを提示しながら講義を進めます。また、講義の理解を深めるための演習を適宜行います。演習問題を解くことにより、概念の理解が深まり、解析手法が身につきますので、積極的に取り組んでください。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | イントロダクション,半導体中の光の伝搬 (Maxwell方程式,誘電率,吸収媒質中の光の伝搬) | 電磁波の導出, 吸収媒質中を伝搬する電磁波の解析. |
第2回 | 半導体の光吸収と放出(エネルギーバンド,直接遷移と間接遷移,光半導体材料,誘導吸収,誘導放出,自然放出,アインシュタイン係数) | 直接遷移と間接遷移半導体の違いを説明する.半導体材料による光物性の違いとその起源を説明する.誘導吸収,誘導放出,自然放出とは何か説明する. |
第3回 | 光と電子の相互作用(2準位系,双極子の運動による放射のイメージ,電気双極子モーメント,遷移確率,フェルミの黄金則,選択則) | 半古典論による2準位系の解析. 電気双極子モーメントの定義と振動による放射のイメージを理解する. |
第4回 | 光吸収と光増幅(吸収と放出の熱平衡,プランクの熱放射則,反転分布,光増幅,増幅媒質中の光の伝搬,光利得,レーザ) | 熱放射則の導出を理解する.レート方程式が解ける.反転分布と光増幅について説明する. |
第5回 | フォトダイオード及び太陽電池の構造と動作原理 | フォトダイオード及び太陽電池の構造と動作原理を説明する. |
第6回 | 発光ダイオード及び半導体レーザの構造と動作原理 | 発光ダイオード及び半導体レーザの構造と動作原理を説明する. |
第7回 | 期末試験(理解度の確認) | 期末試験(理解度の確認) |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
なし
多田邦雄,松本俊 共著「光・電磁物性」コロナ社 ISBN4-339-00021-3
末松安晴 著「光デバイス」コロナ社 ISBN978-4-339-00159-4
期末試験(80%)と演習(20%)
必須ではないが,半導体物性の履修が望ましい.