この講義は電力機器や電気機器に使われる高電圧・絶縁技術とその応用事例を述べる。気体の絶縁破壊と放電の発生、液体/固体/複合誘電体の電気伝導と絶縁破壊について述べるとともに、直流、交流、パルス高電圧および大電流の発生と計測、サージ電圧の伝搬と保護について説明する。また、がいし、ケーブル、開閉装置、避雷器などの電力機器や、高電圧大電流試験装置、加速器、電気集塵機、オゾナイザをはじめとした応用機器について解説する。
講義終了時点で受講生は、1) 高電圧・電力機器やエレクトロニクス機器内で使われている高電圧技術について基礎理論と動作原理とを理解し、2) 産業応用例を説明することができる。3) また高電圧・大電流の測定および試験方法を理解するとともに、4) MATLAB®を使った基本的数値計算や回路シミュレータLTspice® による高電圧・大電流発生回路の解析を行うことができる。
✔ 該当する | 実務経験と講義内容との関連(又は実践的教育内容) |
---|---|
本講義では、民間企業で高出力レーザー機器向けの高電圧機器開発調整に携わった実務経験を持つ教育担当教員が、その実務経験を活かし,高電圧機器についての安全取扱・設計開発・保守点検など、現場で留意すべき工学上の諸問題についても教育を行う。 |
高電圧、大電流、絶縁体、絶縁破壊、火花電圧、インパルス電圧、分圧器、がいし、ガス絶縁開閉装置、遮断器、避雷器、電気集塵機、オゾン発生器
専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
✔ ・電気電子分野の応用専門力 |
教科書に沿って授業を進めるが、高電圧機器の見学、シミュレータによる回路動作の可視化を加え、また適宜(前半では特に)宿題を課す。各回の講義内容と達成目標と提示するとともに、後半ではHandbookを使った予習・復習の支援とアクティブラーニングを実施する。
授業計画 | 課題 | |
---|---|---|
第1回 | 概説、放電現象の基礎過程(原子衝突、励起、電離、付着、再結合、ドリフト、拡散)。 | 教科書I 第1章〜第2章精読。第2章の章末問題とその類似問題に解答できる。 |
第2回 | 気体の放電・絶縁破壊1(衝突電離係数、タウンゼント理論、ストリーマ理論、パッシェンの法則、電極形状と放電特性、電圧波形と放電特性)。 | 教科書I 3.1 – 3.5 の精読。第3章の章末問題1 – 5とその類似問題に解答できる。 |
第3回 | 気体の放電・絶縁破壊2(雷放電、雷遮蔽、高ガス圧、真空、負性気体、混合気体、高周波電界)。 | 教科書I 3.6 – 3.12の精読。第3章の章末問題6 – 9とその類似問題に解答できる。 |
第4回 | 定常気体放電(グロー放電、電圧電流特性、アーク放電、それらの利用) Boltzmann方程式SolverであるフリーソフトウェアBOLSIG+の理解と演習。 | 教科書I 第4章の精読。第4章の章末問題とその類似問題に解答できる。フリーソフトウェアBOLSIG+が利用できるようになる。 |
第5回 | 液体、固体の放電(液体、固体の電気伝導、荷電粒子の発生要因、空間電荷効果、液体の絶縁破壊、固体の絶縁破壊)。 | 教科書I 第5章の精読。第5章の章末問題とその類似問題に解答できる。 |
第6回 | 複合誘電体の放電1(複合誘電体中の電界、沿面放電、汚損沿面フラッシオーバ)、および高電圧設備としてのイオンビーム源および加速器の見学(バンデグラーフ型加速器、入射器を含めた線形加速器)。 | 教科書I 6.1 – 6.3 の精読。第6章の章末問題とその類似問題に解答できる。および実際の高電圧機器を通じた理解。 |
第7回 | 複合誘電体の放電2(ボイド放電、トリー、油浸絶縁、放電バリア効果)、および理解度確認と前半のまとめ。 | 教科書I 6.4 – 6.7 の精読。理解度確認と到達度自己評価。 |
第8回 | 高電圧大電流の発生(交流大電流、直流大電流、コンデンサ放電によるパルス大電流)。 | 教科書II 3.6~3.9の精読、LTspiceによる高電圧大電流回路の解析 |
第9回 | 高電圧大電流の測定(直流高電圧、交流高電圧定、インパルス高電圧、大電流、部分放電、放電現象)。 | 教科書II 4.1~4.7の精読、LTspiceを使った過渡回解析 |
第10回 | 高電圧機器概説1(がいし、ブッシング、高電圧電力ケーブル、回転機、ガス絶縁開閉装置、ガス遮断器)。 | 教科書II 5.1~5.6の精読 |
第11回 | 高電圧機器概説2(真空遮断器、避雷器、変圧器、コンデンサ)。 | 教科書II 5.7~5.10の精読 |
第12回 | 電力系統における過電圧とその保護(過電圧、雷過電圧、保護。 | 教科書II 6.1~6.3の精読 |
第13回 | 高電圧絶縁試験。 | 教科書II 7.1~7.10の精読 |
第14回 | 高電圧技術の応用(加速器、電子顕微鏡、放電加工機、電気集塵機、オゾナイザ、直流遮断器、他)。期末試験。 | 教科書II 8.1~8.8の精読 |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
教科書I:日髙邦彦『高電圧工学』 数理工学社、ISBN: 978-4-901683-59-3
教科書II:河村達雄・河野照哉・柳父悟 『高電圧工学』 [3版改訂] 電気学会、ISBN: 978-4-88686-237-3
花岡良一 『高電圧工学』森北出版、ISBN: 978-4627742512、山本修・濱田昌司『高電圧工学』オーム社、ISBN: 978-4274214448
理解度確認50点、Handbookを用いたグループワークおよび期末試験50点
電磁気学第一(EEE.E201.R)、電磁気学第二(EEE.E202.R)、電気回路第一(EEE.C201.R)、電気回路第二(EEE.C202.R)を履修していること,または同等の知識があること。