本講義では,集積回路に用いられる主要な電子デバイス(半導体デバイス)である,pnダイオード,バイポーラトランジスタおよびMOSトランジスタの動作特性を学習する。2端子デバイスのpnダイオード,および3端子デバイスのバイポーラトランジスタとMOSトランジスタについてデバイス構造と基本動作を説明する。集積回路における3端子デバイスの重要性を理解することにより,それぞれの電子デバイスを集積回路に応用するための基礎を築く。さらに,集積回路の基本ゲートである相補型MOSトランジスタ(CMOS)回路と,電力変換デバイスとして重要なパワーデバイスの基本動作を説明する。講義と演習により,電子デバイスの動作特性の理解を深める。
今日の情報化社会を支える電子情報機器に用いられる集積回路は,ダイオードやトランジスタなどの電子デバイスを,高密度に集積化することにより構成されている。したがって,より高性能な集積回路を実現するためには,電子デバイスを高性能化することが不可欠であり,電子デバイスの動作原理を理解することが重要である。本講義により,電子デバイスの動作が半導体中の電子やホールの振る舞いを,高精度に制御することにより実現されていることを理解する。
本講義を履修することによって次の能力を修得する。
1)トランジスタの増幅作用とは何かを説明できる
2)pnダイオードのバンド図を用いて電流-電圧特性における整流作用を説明できる
3)バイポーラトランジスタの動作特性と,高速化のためのデバイス設計を説明できる
4)MOSトランジスタの動作特性および微細化のためのデバイス設計を説明できる
5)nチャネルMOSトランジスタとpチャネルMOSトランジスタによるCMOSの構成と特徴を説明できる
6)パワーデバイスの構造と特徴を説明できる
半導体デバイス,pnダイオード,バイポーラトランジスタ,MOSトランジスタ,CMOS,パワーデバイス
専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
✔ ・電気電子分野の応用専門力 |
毎回の講義の前半で,復習を兼ねて前回の課題についての宿題の解答を解説します。各回の学習目標をよく読み,宿題をしっかり行って下さい。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 半導体物理とpn接合 | 半導体物理とpn接合の復習 |
第2回 | バイポーラトランジスタの動作 | バイポーラトランジスタの構造と電流-電圧特性の説明 |
第3回 | バイポーラトランジスタ:コレクタの設計 | バイポーラトランジスタの諸効果とコレクタ設計の説明 |
第4回 | バイポーラトランジスタの等価回路I | pnダイオードを用いた等価回路モデルの説明 |
第5回 | バイポーラトランジスタの等価回路II | 小信号等価回路の説明 |
第6回 | バイポーラトランジスタ:速度の推定 | バイポーラトランジスタの高周波特性と動作速度の説明 |
第7回 | バイポーラトランジスタにおける再結合 | キャリヤの再結合を考慮した電流-電圧特性の説明 |
第8回 | 理解度確認演習 | 第1回から第7回までの理解度確認と到達度自己評価 |
第9回 | MOSFETの概略と反転層 | MOSトランジスタの構造と反転層の説明 |
第10回 | MOSFET:ピンチオフの概念・直流特性 | グラジュアルチャネル近似からのピンチオフと直流特性までの説明 |
第11回 | MOSFET:インバータと高速動作 | 論理回路の基礎であるインバータに基づくデジタルでの速度、遮断周波数に基づくアナログでの速度の説明 |
第12回 | MOSFET:しきい値電圧 | MOSトランジスタのしきい値電圧の導出 |
第13回 | MOSFET:スケーリング | 集積化のための微細化を支えるスケーリングとその限界の説明 |
第14回 | パワーデバイス | パワーデバイスの種類と動作特性の説明 |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
宮本恭幸『電子デバイス』 培風館, ISBN978-4-563-06991-9
古川静二郎 『半導体デバイス』 コロナ社, ISBN3355-030241-2353
pnダイオード,バイポーラトランジスタ,MOSトランジスタ,CMOS回路,パワーデバイスの動作について,その理解度を評価。配点は,理解度確認演習(40%)・期末試験(40%),演習・レポート(20%)。
半導体物性(EEE:D211)を履修していること。
(宮本)メールで事前予約すること。
(岩﨑)メールで事前予約すること。