生体分子計測を微小空間で行うことにより得られる様々な利点について物理的原理から説明するとともに、微小空間がもたらす生体分子計測研究の新しい展開について解説する(安井)。NMR分光法の理論と応用についても概説する。また、測定方法と生体分子の応用例を概説する(石井)。生体分子やタンパク質の構造ダイナミクスと機能の関係を分光学的に解析できる1分子分光法の原理や測定手法を解説し、実際の応用例について紹介する(近藤)。NMRに基づくイメージング法であるMRIの原理と生体分子イメージングへの応用について概説する(岡田)。原子間力顕微鏡は液中での観察が可能なことから生体分子への応用が期待されている。探針が試料表面に直接接触することから生体分子の観察だけでなく、分子間相互作用を調べたり、1分子操作などが可能である。この顕微鏡の原理や測定法について概説する(長田)。X線の回折や電子線の投影像を解析することで、薬剤とタンパク質の複合体やウイルスなどの巨大分子の重要な知見が得られるようになった。これら技術の原理や応用例について概要を解説する(野澤)。
マイクロ・ナノメートルスケールでの微細構造解析や微細加工, 分子・物質合成といったマイクロ・ナノテクノロジーに関連する技術革新による様々な生体分子計測を理解できるようにする(安井)。生体分子を原子間力顕微鏡と分光法を用いて計測する方法の原理、応用について解説し、物理学の理解を深めることを念頭にして講義をする。原子間力顕微鏡は探針を使って分子の形状や分子間の相互作用を調べることができる走査型のプローブ顕微鏡であり、これを使った生体分子の測定法を理解できるようにする(長田)。光学顕微技術と分光技術を組み合わせた生体分子計測法の原理を理解するとともに、生体分子における構造揺らぎなどのダイナミクス特性の解析法を学ぶ(近藤)。MRIの原理を学び、NMRや他のイメージング技術との違いを理解する。また、MRI造影剤や次世代型撮像法を用いた分子イメージングを理解する(岡田)。NMR分光法の古典理論を学ぶ。Bloch equationに基づいて核スピンの磁化の振る舞いを説明し、1次元NMRを理解する。多次元NMRを用いた、生体分子等への応用を理解する。量子論を用いたNMRについての分光法の理論の概略を理解する(石井)。X線結晶構造解析やクライオ電子顕微鏡解析の測定法を知り、生体分子の立体構造や相互作用様式の解析技術の理解を深める(野澤)。
AFM, 微小空間, マイクロ・ナノテクノロジー, レーザー分光, 質量分析, NMR, MRI, 1分子分光, 顕微分光,X線結晶構造解析,クライオ電子顕微鏡解析
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
講義の最初に、前回の授業の復習をする。講義の後半で,その日の教授内容に関する演習問題を行う場合がある。各回の学習目標をよく読み,課題を予習・復習で行って下さい。
授業は英語で行いますが、必要な場合には日本語で補足説明をします。
授業はZoomを使ってオンラインで行います。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 微小空間と生体分子計測 (1)微小空間における流体挙動 | 流体特性、分子拡散、比表面積・比界面積、表面張力・界面張力の理解 |
第2回 | 微小空間と生体分子計測 (2)微小空間を利用する分析法 | 生体分析、化学分析、電気泳動の理解 |
第3回 | NMR分光法 (1)概論と基礎理論 | NMR分光法の基礎と応用の概要の理解 |
第4回 | NMR分光法 (2)古典理論と1次元NMR | NMR分光法の古典理論と1次元NMRの理解 |
第5回 | NMR分光法 (3)多次元NMRと小分子、タンパク質、イメージングへの応用 | 多次元NMR分光法と様々な系への応用への理解 |
第6回 | 1分子分光法 (1)1分子レベルの顕微分光法 | 1分子レベルの顕微分光法の理解 |
第7回 | 1分子分光法 (2)揺らぎの分光解析 | 揺らぎの分光計測手法と解析法の理解 |
第8回 | 1分子分光法 (3)生体系への応用 | 1分子分光法の生体系への応用例の理解 |
第9回 | 磁気共鳴イメージング:(1) 概論 | MRIの基本原理 |
第10回 | 磁気共鳴イメージング:(2) 造影剤と生体分子イメージング | MRIを用いた分子イメージング法の理解 |
第11回 | X線結晶構造解析とクライオ電子顕微鏡解析(1)概論と基礎理論 | 回折・結像原理の理解 |
第12回 | X線結晶構造解析とクライオ電子顕微鏡解析 (2)生体分子への応用 | 高分子への適応例とそれらの影響力の理解 |
第13回 | 原子間力顕微鏡 (1)概論 | 原子間力顕微鏡の原理 |
第14回 | 原子間力顕微鏡 (2)一分子原子間力顕微鏡 | 原子間力顕微鏡による一分子解析 |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する 予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
未定
必要に応じ講義開始時に資料を配付し、Power-pointを用いた解説を行う。
中間・期末試験無し。課題提出で評価、詳細は各先生から。課題は、基本的な事項、本質的な理解、定量的な理解を問う。
物理化学I,II,IIIを履修していること,または同等の知識があること。