物理系の粒子数が変化する状況を化学ポテンシャルをパラメータとするグランドカノニカル分布により記述する。計算の道具として、大分配関数を導入する。ボーズ粒子あるいはフェルミ粒子の多粒子の量子力学を説明して、低温・高密では、両者の統計力学に顕著な違いが現れることを理解して、基礎的な計算問題を扱う(ボーズ凝縮、フェルミ縮退)。また、相転移、臨界現象、非平衡現象について、基礎的な計算問題を扱う。
粒子数が変化する状況での統計力学、量子統計力学、相転移の理論の基礎的な問題が解けるようになることを目標とする。
グランドカノニカル分布、量子理想気体の統計力学、フェルミ粒子・ボーズ粒子の統計性の違いに由来する物理現象、相転移、臨界現象、非平衡現象に関して、概念を理解して、具体的な計算ができるように訓練する。
グランドカノニカル分布、化学ポテンシャル、量子理想気体、ボーズ分布、フェルミ分布、ボーズ凝縮、フェルミ縮退、ヘリウム4の超流動転移、金属の比熱、相転移、臨界現象、臨界指数、平均場近似、転送行列法、イジング模型
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
あらかじめ問題を配る。自宅で解いてきてもらった回答を黒板で発表してもらい、議論する。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | グランドカノニカル分布I(熱力学の復習、グランドカノニカル分布の基礎) | グランドカノニカル分布では粒子数が変化する代わりに、化学ポテンシャルが指定される。 |
第2回 | グランドカノニカル分布II(大分配関数、グランドカノニカル分布の応用) | 大分配関数がグランドカノニカル分布の理論での計算の道具である。 |
第3回 | グランドカノニカル分布III (グランドカノニカル分布の応用) | グランドカノニカル分布の理論を用いて具体例を計算する。 |
第4回 | 量子理想気体の統計力学I (多粒子系の量子力学) | 多粒子系の量子力学では粒子の統計性により状態は粒子交換に関する定まった偶奇性を持つ。 |
第5回 | 量子理想気体の統計力学II (フェルミ粒子、ボーズ粒子) | フェルミ粒子、ボーズ粒子の多体系は、ぞれぞれ、フェルミ分布、ボーズ分布に従う。 |
第6回 | 量子理想気体の統計力学III (理想フェルミ気体、ゾンマーフェルト展開) | 強く縮退した理想Fermi気体はSommerfeld展開で解析できる。 |
第7回 | 量子理想気体の統計力学IV (理想フェルミ気体の比熱、帯磁率) | Sommerfeld展開により、金属の比熱や帯磁率が説明できる。 |
第8回 | 量子理想気体の統計力学V (理想ボーズ気体、黒体輻射、ボーズ凝縮の導入) | 理想Bose気体を十分に低温に置くと、微視的基底状態に巨視的な数の粒子が凝縮する。 |
第9回 | 量子理想気体の統計力学VI (ボーズ凝縮) | ヘリウム4の超流動転移は理想ボーズ気体のボーズ凝縮として理解できる。 |
第10回 | 相転移と臨界現象I (相と相転移、秩序変数、一次転移、二次転移) | 相転移における相の区別は秩序変数により記述される。 |
第11回 | 相転移と臨界現象II (臨界現象とは、臨界指数、Landau理論) | 相転移における臨界現象は、系の詳細によらない、普遍的な臨界指数を持つ。 |
第12回 | 相転移と臨界現象III (平均場近似とは、Bragg-Williams近似) | 具体的な模型における相転移現象を解析する第一歩は平均場近似を使うことである。 |
第13回 | 相転移と臨界現象IV (イジング模型の平均場理論) | 磁性体の2次相転移を記述する基本的な模型はイジング模型であり、平均場近似により調べられる。 |
第14回 | 相転移と臨界現象V(1次元イジング模型、転送行列法) | 1次元イジング模型は転送行列業により厳密に解析できる。 |
第15回 | 非平衡統計力学 (線型応答理論) | 非平衡現象の研究の入り口は輸送係数(熱伝導係数、拡散係数、...)の探究である。久保の線形応答理論により、輸送係数は計算できる。 |
未定
未定
黒板発表、レポート、試験等による。
熱・統計力学第一、熱統計力学演習第一を習得していることが望ましい。