講義の概要は次の通りである。エネルギー技術を社会において利用する段階において、様々な側面で評価することが求められる。本講義では、エネルギーの技術に立脚した評価のための基礎概念、理論やツールを簡単な実例を織り交ぜて、関連各分野のエッセンスをコンパクトに紹介する。これにより卒業後の実務、あるいは、更なる専門性を磨く進路選択の基礎情報とする。具体的分野としては、経済(発電原価、キャッシュフロー分析)、システム(ライフサイクルアセスメント、計量分析、システム工学)、社会(研究開発、導入普及、合意形成)の3側面を扱う。これら学問分野の有機的な関連、共通する分析手法などに注意を払った講義を行う。
講義のねらいは、出身と卒業後進路が多様な受講者に対し、基礎知識の前提を必要とせずに概念を理解し、講義において学習した概念を卒業後に思い出して、業務遂行の知識やツールボックスの基礎を与えることにある。本学においてエネルギーと社会経済の接点となる基礎的内容を説明するのは本講義のみであり、卒業後の実務に役立つよう構成している。多くの学生諸君に受講を勧める。講義選択に資するよう、以下に講義ラインナップを記す。なお講義順番は講師の都合で決まる。
1. エネルギーの供給費用(時松宏治(融合系))
発電技術を例に挙げ、発電原価(1kWhの電力を生産するのに必要な費用)の算定方法を実例により説明する。割引率、現在価値など経済性工学の基礎概念を理解する。
2. 費用便益分析(花岡伸也先生(融合系))
石油ガス田開発などを例に挙げ、プロジェクトのキャッシュフロー分析を説明する。内部収益率、費用便益分析などの概念を理解する。
3. ライフサイクルアセスメント(内山洋司先生(筑波大学名誉教授))
原子力などの実例を用い、積上げ方式、産業連関表の両方を用いた分析例を説明する。企業形成に直結する環境報告書を技術と環境経営面から、また、配分の問題や、産業連関表の概念を理解する。
4. エネルギー計量分析の基礎(後藤美香先生(イノベ系))
理工学と社会経済でのエネルギーの違い、熱量換算表、一次と二次エネルギー、発電熱効率、エネルギーバランス表の読み方を説明する。社会経済でのエネルギーフローの理解への導入とする。
5. エネルギーシステム分析(時松宏治)
1.1の技術の経済性、1.4のエネルギーの計量分析を動員するシステム分析の簡略な実例を説明する。経済効率的なシナリオ策定の持つ意味を理解する。
6. エネルギーの研究開発・導入普及(梶川裕矢先生(イノベ系))
エネルギーの技術や資源を開発し、導入普及を進めるには研究開発のみならず社会実装のための戦略立案が必須である。エネルギーの研究開発戦略やイノベーション、イノベーションマネジメントに関する手法を実例を通して理解する。
7. エネルギー技術導入の合意形成(錦澤滋雄先生(融合系))
エネルギー技術を社会実装する際には、意思決定に際して、様々なステークホルダー間の合意形成が必要とされる。再生可能エネルギー技術の導入の実例として風力発電を中心とした説明を通じて 理解する。
本講義を履修することによって、次の能力を修得する。
1)エネルギーシステム・経済分野において、広く扱われる概念や理論を理解し、説明することができる。
2)様々な分野におけるエネルギー問題に対する課題設定と、それへの解決策に対し、講義内容の適用を行うことができる。
エネルギーシステム、経済性工学、ライフサイクルアセスメント、計量分析、研究開発、合意形成
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
講義の最初10分程度、前回講義の宿題の正解、出された疑問点や質問に対する回答を行った上で、その日の授業を行います。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 講義概要説明、エネルギーの供給費用 | 経済性工学の基礎概念が説明できる |
第2回 | エネルギープロジェクトの費用便益分析 | キャッシュフローと費用便益分析が説明できる |
第3回 | ライフサイクルアセスメント | LCAの分析ツールと適用方法が説明できる |
第4回 | エネルギー計量分析 | エネルギー計量分析の基礎が説明できる |
第5回 | エネルギーシステム分析 | エネルギーシナリオ策定の意味が説明できる |
第6回 | エネルギーの研究開発・導入普及 | 導入普及の行政支援と企業努力が説明できる |
第7回 | エネルギー技術導入の合意形成 | 技術導入の合意形成が説明できる |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
指定なし
各回講義資料を配布。また各回講義において参考書が紹介される。
毎回の宿題(10点×7回)、最終レポート30点
なし
tokimatsu.k.ac[at]m.titech.ac.jp、045-924-5533(常時携帯へ転送、通話可能時に受信)
定まった曜日時間帯はないので、メール連絡すること。大岡山、すずかけ台、田町など随時面談可能。