光化学において、吸収と発光のメカニズムを理解することは、光化学反応等を考える上で重要です。本講義ではこの基礎的な部分を説明します。
前半では、分子に光が照射された際の古典電磁気学的応答と量子論的な電子の励起を講述します。分子の電子状態や分子間の相互作用により生じる光吸収と発光とそのスペクトルの例を具体的に示し、この講義で学ぶ電子状態や振動子強度という概念で説明します。
後半では、様々な発光の原理を中心に学びます。発光の基礎である高温体からの発光や、光励起による発光、化学反応を利用した発光を、有機分子だけでなく無機物質も含めて理解を深めます。併せて、計測や反応の上で光化学と深く関連するレーザーについての知識を修得します。
本講義は光科学をバックグラウンドに持たない学生を対象としており、将来、光化学や光物理を研究するための導入部として、光と分子の量子力学的記述をはじめとする基礎的知識を身につけることを目標とします。
本講義を履修することによって次の能力を修得する。
1) 分子の光吸収に関して、古典電磁気学と量子力学的な記述をすることができる
2) 分子の電子状態と光吸収の対応を説明できる
3) 各種発光機構の概念と応用例を説明できる
4) レーザー発光の原理を説明できる
分子の電子状態、ボルンオッペンハイマー近似、フランクコンドン原理、熱発光、蛍光、化学発光、レーザー
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
講義のはじめに前回の復習を行い、最後にまとめを行う。課題を参考に予習・復習をすること。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 光と分子の相互作用 | 光とはなにか? 電磁波と分子の相互作用を説明 |
第2回 | 分子の基底状態における電子配置 | Born-Oppenheimer 近似を分子軌道、振動状態、スピン状態の概念で説明 |
第3回 | 振動子強度の概念とFrank-Condonの原理 | 光吸収スペクトルはどんな要因で決まるか? |
第4回 | 電荷移動錯体と励起錯体 | 分子間の相互作用によって生じる新たな吸収や発光の例を挙げる |
第5回 | 熱発光機構 | 各種発光メカニズム、プランクの法則 |
第6回 | フォトルミネッセンス機構 | 蛍光体、遷移確率 |
第7回 | 化学発光機構 | 励起エネルギー |
第8回 | レーザー光学 | 反転分布、共振器 |
Principles of Molecular Photochemistry -An Introduction- by N. J. Turro, V. Ramamuthy, J.C. Scaiano, University Science Books
分子光化学の原理 井上晴夫・伊藤攻 監訳 丸善出版 (教科書の訳本)
光の吸収と発光に関して、理解度を評価する。
なし