実像として観測困難な分子の形を、分光学的手法を用いて探る手法を理解することを目的とする。
この目的達成に向けて以下の3点に関して、おおよそ、その順序に従って講義する。
1:分子分光学を通じて,量子化学・力学に対する理解を深めるために、特に分子内の原子間に働く力の現象論的取り扱いを記述するモデルについてその概要を理解する。
2:量子力学の知識を基にして,分子の振動,回転,振電相互作用等の理論,群論と分子の対称性への基礎的理解を得る。。
3:基礎知識の応用として、赤外・ラマン分光法について習得する。これによってナノスケールサイズで直接見ることはできない「分子の形」の見極める方法論について基礎的知見を修得する。
分子の構造とその分光学的特性の関係を、量子力学的視点から理解することを目的とし、以下の2点を主たるテーマとする。
1:分子分光学を通じて,量子化学・力学に対する理解を深めること。
2:量子力学の知識を基にして,分子の振動,回転,振電相互作用等の理論,群論と分子の対称性への基礎的理解を得る。ならびに,その応用としての赤外・ラマン分光法の基礎的知見も修得する。
分子構造、分光学、赤外吸収、ラマン散乱、群論
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
講義形式で進めるとともに、2回程度レポート形式の小テストも実施する。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 講義全体の流れの説明。他の科目との関連の説明 | 分子を見る手法を比較しよう |
第2回 | 量子力学を用いた分子の記述 1: 古典的調和振動子の集まりとしての分子のモデル化 | 分子をバネと質点で単純モデル化可能か? |
第3回 | 量子力学を用いた分子の記述 2: 古典的調和振動子から量子力学的記述への発展 | 古典力学から量子力学への対応原理で分子を量子力学で取り扱う。 |
第4回 | 量子力学を用いた分子の記述 3: 量子力学的振動子の集まりとしての分子のモデル化 | 調和振動子としての分子の特徴 |
第5回 | 分子の形(対称性)から要求される条件 1:まずは古典力学的 | 複雑な分子のエネルギーを2次式に整理する。 |
第6回 | 分子の形(対称性)から要求される条件 2:複雑なものをどうやって簡略化するか | 線形代数を用いた考え方で、複雑な2次式を簡略化する |
第7回 | 分子の形(対称性)から要求される条件 3:群論の登場 | 群論による分子の形の整理。 |
第8回 | 分子と光の相互作用 1:相互作用の量子力学的な表現 | 光と物質の相互作用、吸収と発光 |
第9回 | 分子と光の相互作用 2:分子の形から出る条件が分光学的測定のどこに反映されるか? | 分子の形によるスペクトルの変化を量子力学から理解する。 |
第10回 | 分子と光の相互作用 3:赤外吸収とラマン散乱の量子力学的記述 | 赤外吸収とラマン散乱の量子力学的記述をやってみよう。 |
第11回 | 実際の分子ではどうなっているのか? 1:分子の対称性と群論、その表現方法の原理 | 分子の形と振動モードの関係を理解する。 |
第12回 | 実際の分子ではどうなっているのか? 2:群論、指標利用の便利さの原理 | 数学的手法を使った分子振動と分子の形の関係の整理。 |
第13回 | 実際の分子ではどうなっているのか? 3:実際の分子の形決定への適用例 その1 水 | 分子の形が赤外吸収やラマン散乱スペクトルにどう反映されるのか? |
第14回 | 実際の分子ではどうなっているのか?4:実際の分子の形決定への適用例 その2 他の分子 | 二酸化炭素など簡単な分子で形とスペクトルの関係を導いてみよう |
第15回 | 講義のまとめ | 学生実験の内容との比較をしてみよう |
ボール著、 物理化学(下)、 東京化学同人
分子の対称性と群論 中崎昌雄 著、東京化学同人
量子力学の知識を基にして,分子の振動,回転,振電相互作用等の理論の理解、群論と分子の対称性への基礎的理解、ならびに,その応用としての赤外・ラマン分光データと分子の形との関連への理解を達成して居るかどうかが、試験と、講義で出題する課題へのレポートによる成績評価の基準となる。
その比率は8:2程度の予定である。
量子化学ないし量子力学の基礎的知識