この講義では、光と相互作用する物質が、量子力学的な不確定性と統計力学的な不確定性を併せ持つとき、光との相互作用の下でどのように振舞うかを考えます。ある粒子の量子力学的状態は波動関数
量子力学に従う粒子の集団は、一般にはどれもが同一の波動関数で表される集団(純粋状態)ではなく、それぞれが異なる波動関数で表されます。このような統計的混合状態を記述するのに用いられるのが密度行列、その時間変化の方程式がLiouville方程式で、ちょうど純粋状態を記述する波動関数がSchroedinger方程式に従うことを拡張したかたちになっています。この密度行列を使って物質のさまざまな光学応答を定式化していきます。最後に、光を自ら発する物質として発光ダイオードlight emitting diode (LED)、ホタルなどの生物にみられる酸素が関わるある種の酵素反応について紹介します。
【到達目標】 我々が日常接する光には、太陽光のようにさまざまな波長成分を含むものからレーザー光のように単一の振動数で位相が定義でき、干渉性の高い光まで様々な性質の光が存在します。こうした種々の性質の光と相互作用したときの物質の振舞いを理解することを目標とします。さらに、光を放つ天然、人工の物質について学び、それぞれの典型例における発光の原理を理解することも目標とします。
【テーマ】 密度行列による統計的混合状態にある量子力学系の記述、密度行列を用いた線形・非線形光学応答の定式化、天然・人工の発光物質の概説。
光物性、光、ブロッホ方程式、エコー
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
8回の講義である。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 密度行列とLiouville方程式 | 統計的混合状態の運動の方程式 |
第2回 | Bloch方程式 I | 二準位系のLiouville方程式 |
第3回 | Bloch方程式 II | コヒーレンスとエコー |
第4回 | 運動による先鋭化と線幅交代 | スペクトルに分子の運動が現れる条件は? |
第5回 | 線形応答とエネルギー散逸 | 光との相互作用が摂動とみなせるとき |
第6回 | 飽和 | 光との相互作用が大きいとき |
第7回 | 発光ダイオード | 発光ダイオードの原理 |
第8回 | 生物発光 | 代表例はホタル。 |
講義ノートを配布します
特になし
期末試験により評価します
特になし。