本講義の主題は,ホモロジーシリンダーのなす群の構造を理解することである.ホモロジーシリンダーはある種の境界付き3次元多様体であり,曲面の写像類群やその部分群である Torelli 群と深く関係する.さらに4次元多様体を用いて定義されるホモロジー同境群とも関わる.これらを調べる手法として,Cheptea, 葉廣, Massuyeau によって導入された LMO 関手を紹介し,その性質や応用について学ぶ.
ホモロジーシリンダーが低次元トポロジーの様々な研究対象と関係があることは上述のとおりである.本講義では,これらの関係を通して,低次元トポロジーの重要な話題や基本的な研究手法を学ぶ.たとえば,絡み目に沿った Dehn 手術やその特別な場合であるクラスパー手術は基本的かつ多くの応用を持つ.また LMO 関手に関しては,簡単な計算例に触れることにより,確実な理解につなげる.
・絡み目に沿った Dehn 手術を扱えるようになること.
・Torelli 群とホモロジーシリンダーの関係を理解すること.
・Kontsevich 不変量や LMO 関手の低次の計算をできるようになること.
・LMO 関手とクラスパー手術の関係を理解すること.
・ホモロジーシリンダーのなす群について,低次の部分を理解すること.
量子トポロジー,写像類群,結び目,ホモロジー同境群,Kontsevich 不変量,LMO 関手,クラスパー手術
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
通常の講義形式で行う.また,適宜レポート課題を出す.
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 以下の内容を順に解説する予定である. ・ホモロジーシリンダーと写像類群 ・Torelli 群の降中心列と次数商 ・コボルディズムのなす圏とタングルのなす圏 ・Jacobi 図と Kontsevich 不変量 ・LMO 関手とクラスパー手術 ・LMO 関手から誘導される準同型写像 ・ホモロジーシリンダーに関わる群の構造 | 講義中に指示する |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
適宜参考文献を講義中に紹介する
T. Ohtsuki, Quantum invariants: a study of knots, 3-manifolds, and their sets, Series on Knots and Everything 29, World Sci., River Edge, NJ (2002)
レポート課題(100%)による.
トポロジーの基本事項を習得していることが望ましい.
Not in particular