この科目は、主に経済開発について議論する前半(担当:真野)と、エネルギー政策について議論する後半(担当:山下)から構成される。前半では、まず、なぜ貧しい国がなくならないのか、貧困の基本的なメカニズムについて考え、つぎに日本やアジアなどの経済発展の経験にもとづき、 「緑の革命」による農業発展と、経営と技術の革新の組み合わせによる産業発展を解明し、これらを現代のサブサハラアフリカの発展戦略として展開・検討する。その上で、エネルギー分野の中でも特に、地域の再生可能エネルギーを活用した地域開発の取り組み(地域からのエネルギー転換)について各地の事例を検討し、求められる政策的支援のあり方を論じる。
持続可能な社会を構築するためには、地域レベルでの貧困撲滅と資源・環境保全の両立が不可欠である。エネルギーは両者をつなぐ主要な分野である。本講義は、議論の前提となる経済開発の理論と開発途上国の現実についての基礎知識を提供し、再生可能エネルギーを活用した地域開発の事例から、求められる政策的支援のあり方を示すことを目的とする。
本講義を履修することによって次の能力を修得する。
1)なぜ貧しい国がなくならないのか、基本的なメカニズムを説明できる
2)緑の革命と、産業発展の仕組みを説明できる
3)政策介入の効果測定の方法、とくにランダム化比較試験の使い方を身につける
4)地域の参加を欠いた開発が失敗するメカニズムを説明できる
5)エネルギー転換を支援するための政策手法を説明できる
6)地域からのエネルギー転換の実施主体の要件を説明できる
貧困、経済発展、ランダム化比較試験(RCT)、公害、エネルギー転換、再生可能エネルギー
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
講義がベースですが、受講生との議論や興味を取り入れながら進めたいと思います。各回の学習目標をよく読み,課題を予習・復習で行って下さい。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | (真野)「貧困と経済開発」:人々の生活水準の長期的な変化や国際的な違いを分析し、なぜ貧しい国はなくならないのかを考える。 | 貧困の基本的なメカニズムの理解 |
第2回 | (真野)「農業発展の戦略」:「緑の革命」のメカニズムを解明し、現代のアフリカにおける食糧安全保障の解決策を探る。 | 緑の革命の理解、アフリカでの応用可能性の検討、RCTの理解 |
第3回 | (真野)「産業発展の戦略」:アジアの産業発展のメカニズム(模倣と多面的な革新)を解明し、アフリカの発展に必要な戦略を考える。 | 経営と技術の革新に基づく産業発展の理解、アフリカでの応用可能性の検討 |
第4回 | (山下)「日本の公害経験」:日本の過去の事例から、地域開発の負の側面を解明し、地域レベルで持続可能な開発を実現する要件を探る。 | 日本の公害が激甚化した要因の理解、地域開発における参加の重要性の理解 |
第5回 | (山下)「エネルギー転換」:化石エネルギー・原子力から再生可能エネルギーへの転換を進める政策手法とその成果を解明する。 | 各国のエネルギー転換の状況の理解、FITやRPSなどの政策手法の理解 |
第6回 | (山下)「地域からのエネルギー転換」:地域の再生可能エネルギーを用いた地域開発の事例を分析し、政策的支援のあり方を検討する。 | コミュニティ・パワーの理解、パネルデータを用いた政策効果の検証方法の理解 |
第7回 | Q&A セッション |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する 予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
教科書に代わる詳細な講義スライドを配布。
特になし.
(真野)講義に関連する論文を基にレポートを提出(50点)。
(山下)講義に関連する課題を基にレポートを提出(50点)。
学部レベル以上のミクロ経済学と計量経済学の知識があることがのぞましい