本講義は平和学の基礎を提供する。平和学は、1960年代から70年代初頭にかけて、単に戦争のない世界を実現する学問から、人権の実現、格差の解消、自然環境の保護、平和を構築し維持する主体の研究にまで至る幅広い学問に発展してきた。多岐にわたる領域をカバーし、国際社会における問題の所在と平和への糸口を探る。
また、より実践的に平和の問題を捉えるため、沖縄のケースを紹介しながら平和学の概念を応用し、戦争のコストと平和達成の条件を考えていく。
本講義のねらいは、戦争と平和の問題を主体的に考える感覚や能力を養うことである。また、英語でのディスカッションを通して積極的に意見交換をし、平和に対する考えを深める。
本講義を履修することによって次の能力を習得する。
(1)平和学の基礎的な概念を理解し説明できる
(2)実際に起きた、あるいは起きている戦争や暴力について平和学の観点から問題点を指摘できる
(3)現在起きている国際社会の事象について関心を持ち、講義で習得した知識を用いて議論を展開できる
平和、戦争、人間の安全保障、環境、ジェンダー、沖縄
専門力 | ✔ 教養力 | ✔ コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
主に講義形式で進める。授業の後半でテーマに応じて積極的なディスカッションを行う。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | イントロダクション:平和、安全保障、戦争 | 平和と安全保障の違い、平和に関する学問的視点を理解する。 |
第2回 | 平和の定義:消極的平和、積極的平和 | 平和学の基礎的概念を理解する。 |
第3回 | 安全の不在:国家間戦争、地域紛争、テロリズム、武器拡散 | 戦争の概念と武力に関する問題を把握し、消極的平和にアプローチする。 |
第4回 | 平和の不在①人権、人間の安全保障、ジェンダー | 人間中心の安全保障に焦点を当て、積極的平和にアプローチする。 |
第5回 | 平和の不在②経済格差、環境 | 環境や経済の問題をテーマに、積極的平和にアプローチする。 |
第6回 | 中間試験 事例:沖縄戦から考える①沖縄戦の背景と実相 | 前半で学んだ概念を用いながら、沖縄戦の要因や実相を理解する。 |
第7回 | 事例:沖縄戦から考える②戦後における平和の不在 | 沖縄戦を様々な側面から捉え直し、問題の複雑さを理解する。 |
学修効果を上げるため,配布資料や授業で紹介する参考文献等を参照し,「毎授業」授業内容に関する 予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
指定なし
David P. Barash & Charles P. Webel, Peace and Conflict Studies, 5th edition, Sage, 2022.
講義資料はT2SCHOLAにアップする。
中間試験(30%)、期末レポート(50%)、授業での議論参加(20%)
基礎的な英語力。特に専門知識は問わない。
この授業の実施日は、4/12(水),19(水),26(水)、5/10(水),17(水),24(水),31(水)の全7回です。
またこの科目は、修士課程500番台の文系教養科目です。
東工大では、学士から博士後期課程まで継続的に教養科目を履修する「くさび型教育」を実践しています。番台順に履修することが推奨されており、修士課程入学直後の学期(4月入学者であれば1・2Q、9月入学者であれば3・4Q)に履修申告できる文系教養科目は400番台のみです。500番台文系教養科目は、入学半年してから(4月入学者であれば入学した年の3・4Qから、9月入学者であれば入学した翌年の1・2Qから)履修可能となります。