[講義の概要] 本講義では、まず電池の基本原理であるレドックス反応と電気化学セルについて述べる。次に無機化合物の複雑な相変態を理解するために状態図の使い方について講述する。また、磁性の基本原理である局在スピンの働きについて説明する。
[講義のねらい] 電池と磁石は、それぞれ電力貯蔵や電気モーターに欠かせない基幹要素であり、その材料化学を学ぶことは環境エネルギー問題を解決する有効な手段を提供する。ともに我々の身近な存在でありながら、原理は見かけの働きほど単純ではない。これらの用途に使われる元素は希少なものを多く含み、元素代替の必要性が年々増している。このような社会的背景からも、電池と磁石は固体物質の反応性や物性における元素の役割を深く考察する上で好適な題材と捉えることができる。上記の観点から、ディスカッションや演習に重点におく。
本講義を履修することによって、
1) 電池と磁石に関する諸原理やそれらに用いる化合物の合成方法ならびに反応性を理解できる。
2) 周期表や状態図を使いながら、新しい化合物の合成方法を開拓する能力を高めることができる。
電気化学セル、電気化学系列、リチウムイオン二次電池、腐食、相図(状態図)、相律、相変態、結晶場理論、交換相互作用
✔ 専門力 | 教養力 | コミュニケーション力 | 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
本講義は、(1)電気化学、(2)状態図、(3)磁性、の順番で進める。そして最終回に、理解度確認のための演習と解説を実施する。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | レドックス反応に関する概論 | 講義の目的を説明できる。 |
第2回 | 電気化学反応 | 電気化学系列を使って酸化還元対を見分けられる。 |
第3回 | 無機化合物の状態図 | 状態図からある相の存在比や組成を読み取ることができる。 |
第4回 | 相変態と固相反応 | 状態図から相変態の特徴を読み取ることができる。 |
第5回 | 磁性とスピン間相互作用 | 磁性の種類とスピン間相互作用について説明できる。 |
第6回 | 磁性化合物 | 化学式から遷移金属酸化物における交換相互作用を導くことができる。 |
第7回 | 理解度確認のための演習と解説 | 演習により総合的な理解度を高め,到達度を自己評価する。 |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
R. J. D. Tilley著、滝澤、田中、大友、貝沼 訳「固体材料の科学」(東京化学同人)ISBN: 978-4807908585.
E.Zolotoyabko著、大友、鵜沼、早水、山田 訳「材料系の固体物理学」(東京化学同人)ISBN: 978-4807920426.
A. R. West著、遠藤、武田、井川、池田、 伊藤、菅野 訳「ウエスト 固体化学入門」(講談社)ISBN: 978-4061533714.
他の講義資料は講義中に配布するとともにOCW-iにアップロードする。
期末試験(60%)、レポート課題(30%)、演習(10%)で到達目標の達成度を評価する。
履修条件は特に設けないが、関連する科目(無機固体化学特論第一(CAP.A461))を履修していることが望ましい。
大友明 ohtomo.a.aa[at]m.titech.ac.jp
メールで事前予約すること。