2022年度 文系エッセンス48:数理科学史   Essence of Humanities and Social Sciences48:History of Mathematical Sciences

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開講元
文系教養科目
担当教員名
詫間 直樹 
授業形態
講義    (対面型)
メディア利用科目
曜日・時限(講義室)
水5-6(J221)  
クラス
-
科目コード
LAH.S441
単位数
1
開講年度
2022年度
開講クォーター
1Q
シラバス更新日
2022年3月16日
講義資料更新日
-
使用言語
英語
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講義の概要とねらい

気象や経済といった複雑系の将来を予測しようという営為は今日ますます盛んになっているが、数理モデルを用いた数理的予測は、そのなかでも重要な役割を担っている。
この講義は、予測の科学に関する専門家 David Orrell の著書 Apollo’s Arrow: The Science of Prediction and the Future of Everything (2007) の購読を通じて、複雑系の予測にかかわる数理科学のうち、とくに気象・気候に関する予測の科学について、これまでの発達の歴史を吟味する。
このように予測に関する科学の具体的な歴史をたどることによって、この講義は、数理的な観点からみた予測科学の有効性と限界についての理解を深めることを目的とする。

到達目標

1) 気象・気候という複雑系に関する予測科学の発達の歴史をおおまかに理解すること。その際、「初期値鋭敏性」「モデル誤差」「計算的既約性」といった数学的概念を交えながら理解すること。
2) 決定論的方程式で記述される現象の予測は当初は簡単だと思われていたが、その後、困難なケースの方が多いことが判明した。このことをしっかりと理解すること。
3) 既存のパラダイムに挑戦するような命題はなかなか受容されないことを理解する。

キーワード

複雑系、カオス、予測の科学、初期値鋭敏性、パラメーター鋭敏性、モデル誤差、計算的既約性、パラダイム、研究学派、新説の受容。

学生が身につける力(ディグリー・ポリシー)

専門力 教養力 コミュニケーション力 展開力(探究力又は設定力) 展開力(実践力又は解決力)

授業の進め方

教科書の第3章、第4章、および第7章の地球温暖化に関するいくつかの節について、スライドを使用しながら解説を行っていく。
授業終了後、リアクションペーパーに授業に対するコメントを記入し、OCWi に提出してもらう。

授業計画・課題

  授業計画 課題
第1回 ガイダンスとイントロダクション。授業の進め方や成績評価方法についての説明をおこなったのち、イントロダクションとして、カオスと複雑系についてのごく簡単な解説を行う。 カオスと複雑系について大雑把な理解をもつ。さらに、次回までの予習として、教科書の第3章に加えて附録I~IIIを読み、カオスと複雑系の諸特性を理解しておく。
第2回 第3章("Divide and Conquer: The Gospel of Deterministic Science") の前半を読む。 「カオス」と「(創発的)複雑系」が広く認識されるまでの、決定論的科学の順調な発展をたどる。
第3回 第3章の後半を読む。 「カオス」と「(創発的)複雑系」が発見された後の、予測科学の苦難に満ちた歴史をたどる 「カオス」の初期値鋭敏性に由来する予測の難しさ、および「(創発的)複雑系」における「本質的な予測不可能性」を理解する。
第4回 第4章 ("Red Sky at Night: Predicting the Weather") (その1)。序盤の節を読む。 初期の気象予報における数理モデル化の発達をたどる。
第5回 第4章 (その2)。中盤の節を読む。 GCM (General Circulation Model or Global Climate Model) の始まり、Edward Lorenzによるカオスの強調、ほか。
第6回 第4章 (その3)。終盤の節を読む。 予測誤差の原因を特定しようとする研究の歴史を振り返る。 誤差の原因は、初期値鋭敏性よりも、モデル化の不十分さによるもの(「モデル誤差」)に多く起因することを理解する。また、気象学者が誤差の原因を初期値鋭敏性のせいにしたがる社会学的・心理学的な理由を理解する。
第7回 第7章のうち、気候変動(地球温暖化)に関連する幾つかの節を読む。 気候変動の将来について我々は何をどの程度予測できるのかについての理解を深める。

授業時間外学修(予習・復習等)

学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。

教科書

David Orrell (2007), Apollo’s Arrow: The Science of Prediction and the Future of Everything, Harper Perennial.
必ずしも購入しなくてよい。購入しない人のために、授業で扱う箇所(第3章、第4章、および第7章の一部)のコピーをOCWiで配布する。(他人への再配布を禁じる。)
生協に一括販売の依頼はしないので、購入する場合は各自で個人的に購入されたい。

参考書、講義資料等

教科書の本文や注で引用されている文献のうち、興味のあるものや重要と思われるものを自分で読んでみることを強く推奨する。

成績評価の基準及び方法

平常点 40%、中間レポート 20%、期末レポート 40%。
平常点は、リアクションペーパーの提出状況をもとに評価する。
中間レポートと期末レポートの大雑把な説明を初回の授業で行う。正式な出題は、後の授業で行う。

関連する科目

  • LAH.S433 : 文系エッセンス37:科学史
  • LAH.T102 : 科学史A
  • LAH.T202 : 科学史B
  • LAH.T302 : 科学史C

履修の条件(知識・技能・履修済科目等)

微分積分と線形代数の学習経験がないと、授業を理解することは困難である。

その他

4/13(水)は、授業は実施しません。
この授業の実施日は、4/20(水)、4/27(水)、5/11(水)、5/18(水)、5/25(水)、6/1(水)、6/8(水)の全7回です。

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