本講義は、平和学の基礎概念を基に平和への糸口を探る。従来の戦争や紛争を対象とする平和学 (Negative Peace) のみならず、世界中の異なる地域と人々が直面する諸課題 (Positive Peace)の両面を幅広く扱う。課題として最初は平和学の成り立ちや、平和学の理論的なコンセプトについて講義をする。続いて、平和学でも取り入れられている "Systems thinking" や "Systems approache" について具体的な実践例を紹介して、物事の関係性や相互作用、またその複雑さなどについて理解を深める。また、歴史的観点から、すなわち農業・産業革命と資本主義、階級社会や環境問題の観点から、人類が経験してきたさまざまな課題を振り返る。続いて、現代における気候変動とその影響、東南アジア地域における紛争、タイの地域開発や貧困削減政策と日本のODA事業、日本に見る環境問題など多岐にわたる事例を紹介し、多様な観点から平和について考える機会を設ける。議論の場においては、各回の講義で様々な地域に生きる立場の異なる人たちの暮らしや環境について紹介した事例をもとに、問題の明確化や改善方法について学際的チームとしてシステマティックに模索する。
本講義のねらいは、学際的な視点と考察によって平和への道を養うことである。それは、学生一人一人が身近で具体的な問題を多角的に認識し、その解決に向けて考察し、実践していくことによって、平和な社会を構築する能力を養うことである。また、世界のさまざまな地域が経験してきた出来事や現在抱える課題等を学際的議論を通して、平和達成の道を一歩進めることである。
(1)平和学の基礎的概念を説明できる。
(2)過去に起きた、あるいは現在起きている問題について、システム論的考察ができる。
(3)国際社会の事象に関心を持ち、平和学の観点から問題点を学際的に指摘できる。
(4)講義で取得した情報や知識を用いて、問題の改善・解決方法について発表し議論や提案ができる。
平和、人間と環境、学際的視点、システム・シンキング、システム・アプローチ、国際関係
専門力 | ✔ 教養力 | ✔ コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
本講義は、集中講義の形式で以下の通り実施する。
2月13日(月): 第1回(5-6限)、第2回(7-8限)
2月14日(火):第3回(5-6限)、第4回(7-8限)
2月15日(水):第5回(5-6限)、第6回(7-8限)
2月16日(木):第7回(5-6限)
※5-6限は13:45~15:25、7-8限は15:40-17:20
講義はアクティブ・ラーニングの手法を用い、1日の講義の半分は講義、残り半分はグループ毎のディスカッションとその発表を予定している。毎回の授業で出席を取る。毎回の講義の後で、Google Formを使い、講義の理解度の確認をおこなう。
この科目はすずかけ台キャンパスで対面で実施します。講義室は決まり次第情報を出します。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | イントロダクション:平和について考える | 平和に関する学問的・学際的視点、Systems thinking や Systems approache を理解する。農業・産業革命から環境問題や階級社会の起源について学ぶ。 |
第2回 | 事例から考える:システム論的考察 | 異なる環境に生きる人々の暮らしぶりをシステムマティックに考察する。 |
第3回 | 気候変動とその影響:食料システムや北極の事例から考える | 気候変動がまき起こす諸問題から物事の複雑な相互関係を理解する。特に気候変動が世界の食料システムや北極地域に及ぼす影響について学ぶ。 |
第4回 | 事例から考える:システム論的考察による問題提起と解決策の提案 | パプアニューギニアの不法な森林伐採と、チリのアボカド生産の事例から、状況のシステム的考察、課題の把握とその対策について議論する。 |
第5回 | 東南アジアの紛争の歴史、都市と過疎地, タイの地域開発と貧困対策及び日本のODA事業の関わりについて。課題解決について事例から考える | 東南アジアの紛争の歴史から、紛争の複雑さを理解する。経済発展とその影響について、特にタイの「足るを知る経済政策」と地域開発や貧困削減、日本のODA事業などから問題解決のアプローチについて学ぶ。世界中で様々な課題に前向きに取り組む人たちの事例から問題解決に向けた具体的な方法を学ぶ。 |
第6回 | 事例から考える:日本の環境問題の歴史 | 日本の経済成長がもたらした環境問題とその影響の事例から、現代の諸問題について考える。 |
第7回 | まとめ:エッセイの書き方。平和をつくるためには? | これまでの講義内容を振り返える。また、課題(エッセイ)の提出について説明する。平和をつくる上で重要な現在や未来の課題についてグループで学際的な議論を展開する。テーマを選択し、それについてシステム論的な考察による状況の把握、問題定義とその解決方法を発表する。 |
指定なし。授業の中で必要に応じて参考資料等を紹介する。
指定なし。講義資料はT2SCHOLAにアップする。
個人もしくはチームでの討論参加(30%)、口頭発表(30%)、期末レポート(40%)。全出席および全エクササイズ履修が原則である。遅刻やグループ・ワークに参加しなかった場合は不合格とすることがある。
履修条件は特に設けない。
この科目は、修士課程500番台の文系教養科目です。
東工大では、学士から博士後期課程まで継続的に教養科目を履修する「くさび型教育」を実践しています。番台順に履修することが推奨されており、修士課程入学直後の学期(4月入学者であれば1・2Q、9月入学者であれば3・4Q)に履修申告できる文系教養科目は400番台のみです。500番台文系教養科目は、入学半年してから(4月入学者であれば入学した年の3・4Qから、9月入学者であれば入学した翌年の1・2Qから)履修可能となります。