2022年度 文系エッセンス23:医療から見る社会   Essence of Humanities and Social Sciences23:Contemporary Society Viewed from Medical Care

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開講元
文系教養科目
担当教員名
香川 由美 
授業形態
講義    (ブレンド型)
メディア利用科目
曜日・時限(講義室)
水3-4(J221)  
クラス
-
科目コード
LAH.S501
単位数
1
開講年度
2022年度
開講クォーター
3Q
シラバス更新日
2022年8月7日
講義資料更新日
-
使用言語
日本語
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講義の概要とねらい

 本講義では、医療及び医学を切り口に、その背景にある社会問題を紐解き、課題についてグループワークを交えながら考察を行っていく。医療及び医学という分野は、人間の”病”の側面を扱う分野でもある。”病”を持つ当事者から見える社会の見え方は、自らの日常とどの様に異なるのか、そこにはどの様な問題が潜んでいるのか。普段”健康”であるからこそ気づきにくい問題について、医学論文やメディアコンテンツ、患者の語りの動画など関連する資料を用いて講義を行う。また、グループディスカッションを行い、日常を”病”の視点から読み解いていく。
 ”病”といっても、そこに潜んでいるのは身体的・医学的な問題だけとは限らない。患者やその家族の心理的な問題や、患者が学校生活や仕事を続けるうえで生じる社会生活上の課題、病気や障害に対する私たちの意識/無意識の偏見や無理解から生じる差別といった社会的課題も存在する。また、視座を個人単位から社会単位に変えると、国や地域の政策や街づくりの方針によって、そのコミュニティで暮らす人の健康が高められたり、逆に健康格差が広がったりするといった社会的課題も挙げられる。本講義では、受講生が一つのテーマについて様々な観点から課題を捉え考える体験ができるよう、医療社会学や医療倫理学、心理学、医療工学など、医療を取り巻く様々な学問や実践の知見に触れながら、事例を紹介していきたい。
 本講義のねらいは、①1つの問題を考える際にも様々な視点や意見があることを学び、物事を俯瞰的に把握する力を身につけること、②自ら考えたことを自身の言葉で相手に伝えるコミュニケーション能力を身につけること、③グループで議論することで、問題の本質を探る課題設定力を身につけること、の3点にある。これらの修得は、自立した一人の人間としての意識や知識といった教養力を育むだけでなく、自分が得た知見や経験を生かして実社会における問題の解決に取り組むために有用な展開力(探求力・課題設定力)を向上させることにも繋がる。このような学習経験は、自身が身につけた専門性と社会を結びつけ、どう社会の文脈に価値づけるかという重要なプロセスに当たるため、企業へ就職する人、または進学をする人の両者にとって将来にわたって有用である。本授業を通して、自身の視点や考え方が柔軟に広がるプロセスを体験してもらうこともねらいとしている。

到達目標

本講義を履修することにより以下の能力を習得することを目標とする。
・医療および医学を切り口に、実社会における課題について多角的に捉える事ができる
・問題に対して主体的に考え、論理的な思考で分析し、複数の解決策を提示できる
・自らの知見や経験を踏まえて考えた意見を周囲に対して論理的に説明する事ができる
・他者の意見を聞き、意思疎通し、合意形成することができる
・ “議論を深め価値を創造する”という文系特有のプロセスを理解し、授業で扱ったテーマ以外の社会課題を検討する際にも展開・応用する事ができる

実務経験のある教員等による授業科目等

該当する 実務経験と講義内容との関連(又は実践的教育内容)
担当教員は、患者・患者家族の立場から、患者会活動や、患者や障害者が体験談を講演するNPO法人の運営に携わった経験を有する。本授業においては、実際の患者の方の語り等を紹介し、実社会における医療をとりまく意見の多様性をより具体的に紹介することを目指したい。

キーワード

医療、医療社会学、社会学、医療工学、生命工学、医療倫理学、科学コミュニケーション

学生が身につける力(ディグリー・ポリシー)

専門力 教養力 コミュニケーション力 展開力(探究力又は設定力) 展開力(実践力又は解決力)

授業の進め方

本授業は、対面授業とオンライン授業のブレンド型で進める。
第1回から第4回は、対面授業にて授業ガイダンスおよび講義を行う。
第5回から第7回は、グループディスカッションが中心となるため、発話による新型コロナウイルスの感染リスクを抑えるためZoomを用いたオンライン授業を行う。3回の授業にわたって同じメンバーでテーマに関する情報収集や分析を分担し、問題の本質を探るためのディスカッションを行う。グループは、受講者がより主体的に参加できることを目指し、第2回から第4回の講義で扱ったテーマの中から好きなテーマを1つ選んでもらい、同じテーマを希望したメンバーからなる4名~5名のグループを作成する。
なお、新型コロナウィルス感染症に関連してやむを得ず欠席した場合は申し出があれば代替課題等の対応をする。

授業計画・課題

  授業計画 課題
第1回 【対面授業】 (1)授業ガイダンス:本授業の目的、身に付く力、授業の進め方、成績評価について (2)導入講義:医療を取り巻く社会的課題について 講義を通して、健康の社会的格差、健康に影響を与える「個人レベル」「社会レベル」の要因等について説明できるようになる
第2回 【対面授業】講義(1)健康と医療をめぐるコミュニケーション ― 医療場面におけるコミュニケーションの特徴、患者の視点と行動、病気をめぐるスティグマ(偏見) 第1回導入講義「医療を取り巻く社会的課題について」の復習
第3回 【対面授業】講義(2)健康の医学モデルと社会モデル ― 医学モデルと社会モデル、病気や障害のある人が直面する4つの社会的バリア、ソーシャルサポートの4タイプ 第2回講義「健康と医療をめぐるコミュニケーション」の復習
第4回 【対面授業】講義(3)メディア情報の健康への影響 ― 健康・医療情報の多様化、リスクコミュニケーション、ヘルスリテラシー ― 第5回~第7回グループワークの説明 第3回講義「健康の医学モデルと社会モデル」の復習
第5回 【オンライン授業】グループワーク(1) Zoomのブレイクアウト機能を使って少人数グループに分かれて実施する。講義で扱った題材から一つテーマを選び、問題の本質を探るための情報収集や課題分析、議論を行う。
第6回 【オンライン授業】グループワーク(2) グループワークの続き。
第7回 【オンライン授業】グループワーク(3) グループワークで話し合った内容にもとづいて、最終レポートを作成する

授業時間外学修(予習・復習等)

学修効果を上げるため、配布資料や参考書等の該当箇所を適宜参照し「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。

教科書

必要に応じて指定する

参考書、講義資料等

参考書:公衆衛生がみえる2022-2023(Medic Media)、保健医療専門職のためのヘルスコミュニケーション学入門(大修館書店)、よくわかる医療社会学(ミネルヴァ書房)、健康格差対策の進め方 効果をもたらす5つの視点(医学書院)
講義資料:授業にてハンドアウトを配布する

成績評価の基準及び方法

(1) 第2回~第4回:授業ごとに講義の理解度を確認する小テストを実施する(成績全体の50%)
(2) 最終レポート:グループワークに関する最終レポート(成績全体の50%)
最終レポートは以下の観点から総合的に評価する。
・課題設定のアイディアの論理性、独創性
・グループメンバーの意見を聴く力、合意形成する力
・グループワークにどのように貢献したか

関連する科目

  • LAH.S401 : 文系エッセンス1:人間力を育む

履修の条件(知識・技能・履修済科目等)

・事前に身につけているべき専門知識や技能は特にない。
・授業およびグループディスカッションは日本語を使用する。レポートは英語でも受け付ける。

その他

この科目は、修士課程500番台の文系教養科目です。
東工大では、学士から博士後期課程まで継続的に教養科目を履修する「くさび型教育」を実践しています。番台順に履修することが推奨されており、修士課程入学直後の学期(4月入学者であれば1・2Q、9月入学者であれば3・4Q)に履修申告できる文系教養科目は400番台のみです。500番台文系教養科目は、入学半年してから(4月入学者であれば入学した年の3・4Qから、9月入学者であれば入学した翌年の1・2Qから)履修可能となります。

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