伝統的に技術史は「その時代を特徴づける先端的・革新的技術」に注目した歴史を記述してきました(こうした伝統的なアプローチに基づく技術史は「技術史B」にて取り扱います)。しかし,近年ではこの立場への見直しが進んでいます。その背景にあるのは「こうした技術史は実質的に『技術』の歴史ではなく『成功した技術革新(とくに科学技術)』の歴史であり,これでは『技術』を狭く捉えすぎだったのではないか」という反省です。そうして,「新しい」技術の発明や研究開発だけでなく,「古い」技術やその保守・運用,あるいは技術と社会・経済・文化・政治との関わりといった側面により強いスポットライトが当たるようになってきました。本講義は、こうした研究潮流の代表的な著作の一つである David Edgerton, The Shock of the Old をテキストとして,現代的な技術史研究を踏まえつつ技術を捉え直すことを目標とします。
1. 現代の技術史研究を通じて,技術の様態についての視野を広げること
2. 技術を歴史と結びつけて考えられるようになること
生産技術,メンテナンス,ナショナリズム,ポストコロニアリズム,農業技術,イノベーション
専門力 | ✔ 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
適宜ディスカッションを交えつつ,基本的に講義形式で進めます。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 技術史研究の過去と現在:「歴史的重要性」はどう決まるのか | リーディング: Introduction, Chapter 1 |
第2回 | 技術における「時間性」の問題:発展段階論はどこまで妥当か | リーディング: Chapter 2 |
第3回 | 「生産技術」再考:家庭内生産と食料生産,「情報化時代」の物質的生産 | リーディング: Chapter 3 |
第4回 | 技術の一生:保守・修繕・衰退の局面 | リーディング: Chapter 4 |
第5回 | 技術ナショナリズムと技術グローバリズム:「誰が」技術を生み出し,「誰のために」使用するのか | リーディング: Chapter 5 |
第6回 | 殺生の技術:何が大量殺生を可能にしたか | リーディング: Chapter 6-7 |
第7回 | イノベーション再考:現代は革新的な時代と言えるか | リーディング: Chapter 8, Conclusion |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
David Edgerton, The Shock of the Old: Technology and Global History Since 1900 (Oxford University Press, 2007)
講義中に指示する.追加資料は事前に T2SCHOLA にアップする。
毎回の小レポート(各回の議論の要約, 50%)と期末レポート(50%)で評価する.
特に履修要件は設けない.
toma.kawanishi[at]gmail.com
4/13(水)は、授業は実施しません。
この授業の実施日は、4/20(水)、4/27(水)、5/11(水)、5/18(水)、5/25(水)、6/1(水)、6/8(水)の全7回です。