グローバル化の時代にあって忘れられがちな国際社会の諸相に案内する。具体的には中国、韓国、インド、インドネシア、トルコ、サウジアラビア、中部アフリカの7カ国(7地域)に焦点をあわせながら、各国文化の民族性、歴史、伝統、社会などを概観する。各地域の専門研究に従事する7人の講師が、それぞれ独自の切り口から、オムニバス形式でこの7地域をあつかう。
本講義のねらいは、異文化理解の促進と国際意識の醸成である。一連の講義を通じて得た知識は、履修者が将来、多様な文化的出自の持ち主たちが集まるグローバルな環境で生きることになったときに、かならずや力になるだろう。
各回の概要
4月12日(火)、19日(火) トルコ 佐治 奈通子
トルコはアジアとヨーロッパにまたがり、東西の歴史と文化が交わる非常に興味深い国です。よく親日国であると言われ、日本人にも人気の観光地のひとつですが、その一方で、近年、シリア難民問題など国際社会から挙動が注目される国でもあります。本講義では、まずトルコの持つ多層的な歴史と文化に触れ、その後、現代の国際社会におけるトルコの立ち位置について考えます。
4月15日(金)、22日(金) サウジアラビア 辻上 奈美江
サウジアラビアは、世界最大級の原油埋蔵量を誇る国であると同時に、メッカとメディナというイスラームの二大聖地を擁する国、あるいは沙漠が広がる土地としても知られています。本講義では、第1回目はサウジアラビアの歴史を概観します。沙漠での遊牧生活から、近代国家へと変容した国家形成の過程を学びます。第2回目は、映画『少女は自転車にのって』を題材に、同国のジェンダー問題を検討します。
4月26日(火)、5月6日(金) サブサハラ・アフリカ 戸田 美佳子
私たちは、テレビや映画、音楽などのメディアをとおして、アフリカに暮らす人びとの文化や習慣にふれてきました。メディアは時として、私たちとは異なる文化を奇怪なものとしておもしろおかしく描き、差別や偏見を生みだす装置ともなります。人は見慣れないものを見たときに驚き戸惑うものですが、一見風変わりに見える習慣や生活の背後には、合理的な文化のルールがあるかもしれません。本講義ではまず、サブサハラ・アフリカの多様な民族、言語、生態環境を解説します。二回目の講義では、講師による中部アフリカ熱帯雨林のフィールドワークを紹介します。グローバル〇〇的な言説が世界規模で展開する現代だからこそ、ローカルな視点から物事を考えるおもしろさをアフリカ地域研究から感じ取ってもらいたいと思います。
5月10日(火)、13日(金) 中国 馮 青
文化とは人々の生きるための工夫(designs for living)と定義される(C. Kluckhohn)。グローバル化の進む現代社会では、異文化間の接触、交流、摩擦、受容、排斥、再生などの活動はいつでもどこでも行われ、社会の発展を推し進めている。日本は「一衣帯水」の隣国中国とは古くから密接な関係を持っている。昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な拡大の事実を踏まえて、次のことについて検討する。1)武漢とはどんな都市か、2)武漢の人々の暮らしぶり、3)武漢から見る中国の食文化、4)中国の食文化の伝統と現在、5)中国の食思想「医食同源」と伝統医学、6)日本における中国食文化、7)日本の漢方と中国伝統医学、8)日本食文化の中国への逆輸入。以上の学習内容を理解した上で、文化の視角から改めてつぎのことを考えてみたい。
1)中国とはどんな国か(悠久の歴史、広大な国土、56の民族などの諸要素が中国に複雑性、多様性、統一性などの特徴を与える)。
2)日中食文化交流の実態はどうなっているか(食文化の交流、受容、再生のプロセスは、同時にその摩擦、拒否、消滅のプロセスでもある)。
5月17 日(火)、24日(火) インドネシア 工藤 裕子
インドネシアは東西約5000キロにおよぶ群島国家であり、東南アジアで最大の人口を有し、150以上ともいわれる民族集団から構成されています。このような広大で多様な地域がどのようにひとつの国として成立し、分裂することなく現在のめざましい発展を遂げるまでになったのでしょうか。講義では経済史の視点から、インドネシアに関連する資源や私たちにも身近な商品を取り上げ、現地の産業や人々の暮らし、国際的な位置づけ、日本とのかかわり、さらに現在直面している問題について考えます。
5月20日(金)、31日(金) インド 鈴木 真弥
「インド」と聞いて、みなさんはどんなイメージが思い浮かびますか? 三千年の歴史、世界最大の民主主義国、ヒンドゥー教、映画大国、ヨガ、IT産業などがありますが、なんといっても「カレー」ではないでしょうか。「カレー」は私たち日本人にとって最も身近に感じられる「インド」といえますが、まさにインドの基本的特徴を示しています。それは「多様性のなかの緩やかな統一(Unity in Diversity)」です。インドは、多言語・多民族・多宗教から成る国家ですが、長い歴史をとおして、それぞれがカレーのスパイスのように「独自性」を保ちつつ、一つの国として緩やかに結びついています。
2回の講義では「カレー文化圏としての南アジア・インド」、「カースト差別と格差の現状」をテーマに、映像、講師の調査経験をふまえながら解説します。日本との違いだけでなくその共通点も考え、異文化間の理解・共存について学びます。
5月27日(金)、6月3日(金) 韓国文化――映画に見る「韓国」 崔 盛旭
昨年度に続き、今年度も日本の中の韓国に焦点を合わせ、「在日」をめぐる映像を取り上げる。「在日」は韓国映画において、あるいは、日本映画においていかなる存在として表れるのか。また、自らをどのように表現しているのか。こういった問題を考えつつ、「韓国」という国を理解するための第一歩を目指す。
本講義を履修することによって以下の能力を修得する。
1)あらゆる文化が等しく人間的で、なおかつそれぞれ独自の特徴をもつことが理解できる。
2)国際的視野から自国文化について考えられる。
3)国際社会の諸問題を多角的にとらえられる。
国際意識醸成、地域文化論、国際社会、アジア、アフリカ、中国、韓国、インド、インドネシア、トルコ、サウジアラビア、中部アフリカ
専門力 | ✔ 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
授業ガイダンスのあと、7人の講師がオムニバス形式でオンライン講義を実施する。履修者は講義を毎回視聴し、Googleフォームでコメントシートを提出する。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | トルコの文化(佐治奈通子) | 授業内で指示する。 |
第2回 | サウジアラビアの文化(辻上奈美江) | 授業内で指示する。 |
第3回 | トルコの社会(佐治奈通子) | 授業内で指示する。 |
第4回 | サウジアラビアの社会(辻上奈美江) | 授業内で指示する。 |
第5回 | 中部アフリカの文化(戸田美佳子) | 授業内で指示する。 |
第6回 | 中部アフリカの社会(戸田美佳子) | 授業内で指示する。 |
第7回 | 中国の文化(馮 青) | 授業内で指示する。 |
第8回 | 中国の社会(馮 青) | 授業内で指示する。 |
第9回 | インドネシアの文化(工藤裕子) | 授業内で指示する。 |
第10回 | インドの文化(鈴木真弥) | 授業内で指示する。 |
第11回 | インドネシアの社会(工藤裕子) | 授業内で指示する。 |
第12回 | 韓国の文化(崔盛旭) | 授業内で指示する。 |
第13回 | インドの社会(鈴木真弥) | 授業内で指示する。 |
第14回 | 韓国の社会(崔盛旭) | 授業内で指示する。 |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
特になし
PPT等のスライド資料を用いるほか、テキスト資料をT2SCHOLAで配布する。
次の二つの条件を満たした履修者のみ成績評価の対象となる。
1)原則として講義に毎回出席し、Googleフォームで出席カード&コメントシートを提出すること(40%)。
2)第1Q末に講義内容を踏まえたレポート課題を提出すること(題目・分量・締切についてはメール等で指示。60%)。
特になし