2021年度 文系エッセンス23:医療から見る社会   Essence of Humanities and Social Sciences23:Contemporary Society Viewed from Medical Care

文字サイズ 

アップデートお知らせメールへ登録 お気に入り講義リストに追加
開講元
文系教養科目
担当教員名
香川 由美 
授業形態
講義     
メディア利用科目
曜日・時限(講義室)
水3-4  
クラス
-
科目コード
LAH.S501
単位数
1
開講年度
2021年度
開講クォーター
3Q
シラバス更新日
2021年11月18日
講義資料更新日
-
使用言語
日本語
アクセスランキング
media

講義の概要とねらい

 本講義では、医療及び医学を切り口に、その背景にある社会問題を紐解き、課題についてグループワークを交えながら考察を行っていく。医療及び医学という分野は、人間の”病”の側面を扱う分野でもある。”病”を持つ当事者から見える社会の見え方は、自らの日常とどの様に異なるのか、そこにはどの様な問題が潜んでいるのか。普段”健康”であるからこそ気づきにくい問題について、医学論文やメディアコンテンツ、患者の語りの動画など関連する資料を用いて講義を行う。また、グループディスカッションを行い、日常を”病”の視点から読み解いていく。
 ”病”といっても、そこに潜んでいるのは身体的・医学的な問題だけとは限らない。患者やその家族の心理的な問題や、患者が学校生活や仕事を続けるうえで生じる社会生活上の課題、病気や障害に対する私たちの意識/無意識の偏見や無理解から生じる差別といった社会的課題も存在する。また、視座を個人単位から社会単位に変えると、国や地域の政策や街づくりの方針によって、そのコミュニティで暮らす人の健康が高められたり、逆に健康格差が広がったりするといった社会的課題も挙げられる。本講義では、受講生が一つのテーマについて様々な観点から課題を捉え考える体験ができるよう、医療社会学や医療倫理学、心理学、医療工学など、医療を取り巻く様々な学問や実践の知見に触れながら、事例を紹介していきたい。
 本講義のねらいは、①1つの問題を考える際にも様々な視点や意見があることを学び、物事を俯瞰的に把握する力を身につけること、②自ら考えたことを自身の言葉で相手に伝えるコミュニケーション能力を身につけること、③正解が一つではない問題についてグループで議論することで、問題の本質や社会から求められる解決策を探ることを通して課題設定力を身につけることの3点にある。これらの修得は、自立した一人の人間としての意識や知識といった教養力を育むだけでなく、自分が得た知見や経験を生かして実社会における問題の解決に取り組むために有用な展開力(探求力・課題設定力)を向上させることにも繋がる。このような学習経験は、自身が身につけた専門性と社会を結びつけ、どう社会の文脈に価値づけるかという重要なプロセスに当たるため、企業へ就職する人、または進学をする人の両者にとって将来にわたって有用である。本授業を通して、自身の視点や考え方が柔軟に広がるプロセスを体験してもらうこともねらいとしている。

到達目標

本講義を履修することにより以下の能力を習得することを目標とする。
・医療および医学を切り口に、実社会における問題や課題について多角的に捉える事ができる
・問題に対して主体的に考え、論理的な思考で分析し、複数の解決策を提示できる
・自らの知見や経験を踏まえて考えた意見を周囲に対して論理的に説明する事ができる
・他者の意見を聞き、意思疎通し、合意形成することができる
・ “議論を深め価値を創造する”という文系特有のプロセスを理解し、授業で扱ったテーマ以外の社会課題を検討する際にも展開・応用する事ができる

実務経験のある教員等による授業科目等

該当する 実務経験と講義内容との関連(又は実践的教育内容)
担当教員は、自身も患者当事者の一人として患者会の活動や、患者や障害者が体験談を講演するNPO法人の運営に携わった経験を有する。本授業においては、実際の患者の方の語り等を紹介し、実社会における医療をとりまく意見の多様性をより具体的に紹介することを目指したい。

キーワード

医療、医療社会学、社会学、医療工学、生命工学、医療倫理学、科学コミュニケーション

学生が身につける力(ディグリー・ポリシー)

専門力 教養力 コミュニケーション力 展開力(探究力又は設定力) 展開力(実践力又は解決力)

授業の進め方

前半3回は、毎授業1テーマについて講義を行う。毎回、Zoomのブレイクアウト機能を使って少人数グループに分かれ、学生同士のグループディスカッションを行う。後半3回は、講義で扱ったテーマの中から1つテーマを選び、更なるグループディスカッションを行い、最終回に各グループより発表を行う。

授業計画・課題

  授業計画 課題
第1回 授業ガイダンス:医療を取り巻く社会的課題について 医療にまつわる社会的課題について「個人」「社会」の観点から概観し、実社会における問題解決のための取組みの実例を紹介する。
第2回 ディスカッション課題(1)患者と医療者のコミュニケーション 講義によって患者と医療者のコミュニケーションの特徴を理解し、グループディスカッションで課題と解決策について話し合う。
第3回 ディスカッション課題(2)身体障がいとユニバーサルデザイン 身体障害者が体験する困難について身体面・心理面・社会生活面から理解し、一歩先のユニバーサルデザインについて多角的に議論する
第4回 ディスカッション課題(3)がん治療と社会生活 がんの治療と患者が直面する困難について多角的に理解するため、がん医療の概論と患者の語りの動画を紹介する。患者ががん治療を継続しながら社会生活を維持するための社会課題と解決策について議論する。
第5回 グループワーク:講義テーマの更なるディスカッション Zoomのブレイクアウト機能を使って少人数グループに分かれ、講義で扱った題材から一つテーマを選び、ディスカッションを通して問題の本質を探り、課題解決策について議論する
第6回 グループワーク:講義テーマの更なるディスカッション(続き) Zoomのブレイクアウト機能を使って少人数グループに分かれ、講義で扱った題材から一つテーマを選び、ディスカッションを通して問題の本質を探り、課題解決策について議論する
第7回 まとめ グループワークで話し合った内容にもとづいて、最終レポートを作成する

授業時間外学修(予習・復習等)

学修効果を上げるため、配布資料や参考書等の該当箇所を適宜参照し「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。

教科書

必要に応じて指定する

参考書、講義資料等

参考書:保健医療専門職のためのヘルスコミュニケーション学入門(大修館書店)、よくわかる医療社会学(ミネルヴァ書房)、健康格差対策の進め方 効果をもたらす5つの視点(医学書院)
講義資料:授業にてハンドアウトを配布する

成績評価の基準及び方法

授業ごとにディスカッション課題に関する小レポートを実施する。また、後半2回の授業で行うグループディスカッションに関する最終レポートを実施し、それぞれ以下の観点から総合的に評価する。
・授業ごとのディスカッション課題に関する理解度、課題解決のためのアイディアの論理性、独創性(50%)
・グループワーク課題に関する理解度、課題解決のためのアイディアの論理性、独創性(50%)

関連する科目

  • LAH.S401 : 文系エッセンス1:人間力を育む

履修の条件(知識・技能・履修済科目等)

・事前に身につけているべき専門知識や技能は特にない。
・授業およびグループディスカッションは日本語を使用する。レポートは英語でも受け付ける。

その他

この科目は、修士課程500番台の文系教養科目です。
東工大では、学士から博士後期課程まで継続的に教養科目を履修する「くさび型教育」を実践しています。番台順に履修することが推奨されており、修士課程入学直後の学期(4月入学者であれば1・2Q、9月入学者であれば3・4Q)に履修申告できる文系教養科目は400番台のみです。500番台文系教養科目は、入学半年してから(4月入学者であれば入学した年の3・4Qから、9月入学者であれば入学した翌年の1・2Qから)履修可能となります。

このページのトップへ