2021年度 文系エッセンス45:シミュレーション社会科学   Essence of Humanities and Social Sciences45:Social Sciences with Evolutionary Simulation

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開講元
文系教養科目
担当教員名
中井 豊 
授業形態
講義     
メディア利用科目
曜日・時限(講義室)
集中講義等   
クラス
-
科目コード
LAH.S510
単位数
1
開講年度
2021年度
開講クォーター
2Q
シラバス更新日
2021年4月12日
講義資料更新日
-
使用言語
日本語
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講義の概要とねらい

本講義の主題は「シミュレーション社会科学」である。社会的ジレンマに陥る様々な問題状況、たとえば、万人の万人に対する闘争状態やフリーライダー問題などを説明するとともに、進化ゲーム理論や進化シミュレーションの分析手法を用いて、これらのジレンマが、共同体、国家、市場等の制度の出現によって解決し得ることを紹介する。また、計算社会科学(データサイエンス)の最新動向を紹介し、地域通貨やクラウドファンディングを題材に、実証的な社会現象の捉え方に関して議論する。

講義では、問題状況を数理モデルやプログラムで定式化し、同時に、モデルにこめられた社会科学的意味を吟味する形で、言説中心の社会理論にない新しい社会理論を示す。同時に、学生とともに批判的な検討を加え、複雑な社会をシステム思考で洞察する力を涵養する。

到達目標

本講義を履修することによって次の能力を修得する。
1) 1:1や1:Nの一般交換等の社会的交換行為、万人の万人に対する闘争状態、フリーライダー問題、内集団びいき、略奪国家等の概念を理解することができる。
2) 上記概念が社会的ジレンマ等の構造を持つことが理解できる。また、これらが数理的なモデルやプログラムを用いて記述できることが理解できる。
3) 進化ゲーム理論や進化シミュレーションが社会科学にどう応用されるかが理解できる。
4) モデルから得られる結果を解釈できる。特に、数理モデルが、共同体、ネーション(国民)、ステーツ(国家)という現象の洞察につながることが理解できる。
5) 計算社会科学(データサイエンス)による地域通貨やクラウドファンディングの分析を通じて、共助社会の可能性を議論できる。

実務経験のある教員等による授業科目等

該当する 実務経験と講義内容との関連(又は実践的教育内容)
本講義の背景には、地縁・血縁でない見知らぬ人間同士が如何に協力し合うかが通底している。当該教員は、宇宙開発事業団と三菱総合研究所で20年間の実務経験を有しており、現実の社会の協力のあり様と社会理論を対比させながら講義を進める。

キーワード

一般交換、万人の万人に対する闘争状態、フリーライダー問題、内集団びいき、略奪国家、社会的ジレンマ、進化ゲーム理論、進化シミュレーション、共同体、ネーション(国民)、ステーツ(国家)、地域通貨、クラウドファンディング、計算社会科学、データサイエンス

学生が身につける力(ディグリー・ポリシー)

専門力 教養力 コミュニケーション力 展開力(探究力又は設定力) 展開力(実践力又は解決力)

授業の進め方

本講義では、社会科学的な解釈とモデルの構造を連携させることが最も重要であることから、どの授業においても、被説明対象である社会・歴史現象を具体的に説明するとともに、これを説明する数理モデルやアルゴリズムを出来る限り簡単な数学を用いて説明する。そして、モデルに対する社会科学的な解釈に関してディスカッションし、社会や歴史を社会システム科学的に洞察する視点を学ぶ。

本講義は、次の通り、集中講義の形式で行う。(4月10日に日程を修正しました。)
(正)
8月10日(火):第1回《3-4限》、第2回《5-6限》
8月11日(水):第3回《3-4限》、第4回《5-6限》
8月16日(月):第5回《3-4限》、第6回《5-6限》、第7回《7-8限》

(誤)
8月7日:第1回《5-6限》、第2回《7-8限》
8月11日:第3回《3-4限》、第4回《5-6限》
8月12日:第5回《3-4限》、第6回《5-6限》、第7回《7-8限》

※※※3日間とも、Zoom配信にて授業を行う。

集中講義のため、3日間、すべての時間帯に出席することが履修の条件となる。

授業計画・課題

  授業計画 課題
第1回 社会と歴史をシステム科学する 社会科学におけるシステム科学的な問題設定を理解せよ。
第2回 集団的直接互酬システム~共同体という現象~ 集団的直接互酬性を説明せよ。
第3回 タグによる共同体システム~ネーション(国民)という現象~ タグへの信頼の発生(内集団びいき)を説明せよ。
第4回 朝貢による防衛システム~ステーツ(国家)という現象~ 朝貢と防衛の相互依存の発生を説明せよ。 ヨーロッパの国家システムの形成メカニズムを解釈せよ。
第5回 共助社会の兆し~地域通貨の計算社会科学的理解 地域通貨のメカニズムを説明せよ。
第6回 共助社会の兆し~クラウドファンディングの計算社会科学的理解 クラウドファンディングのメカニズムを説明せよ。
第7回 共助社会の兆し~全体討論(未来洞察) 共助社会とは何か? 如何に現れるだろうか?

教科書

なし

参考書、講義資料等

講義資料はOCW-iか授業中の配布により与える。
柄谷行人「世界史の構造」岩波書店

成績評価の基準及び方法

授業中のディスカッションへの参加が望まれる。また、社会システム科学の観点から、我が国に適合的な共助社会を構想・レポートしてもらう(如何なる共助か、それは安定した秩序となりうるか、如何なるきっかけで現れると思うか)。成績評価は、授業中のQ/Aとレポートをそれぞれ評価し、40%、60%の重みで統合して、総合評価する。

関連する科目

  • LAH.S437 : 文系エッセンス42:合意形成学

履修の条件(知識・技能・履修済科目等)

社会や歴史に対する興味があることが望ましい。

連絡先(メール、電話番号)    ※”[at]”を”@”(半角)に変換してください。

中井 豊(なかい ゆたか)、nakai[at]shibaura-it.ac.jp

その他

当講義は理学の内容を含む。

※※※3日間とも、Zoom配信にて授業を行う。

この科目は、修士課程500番台の文系教養科目です。
東工大では、学士から博士後期課程まで継続的に教養科目を履修する「くさび型教育」を実践しています。
番台順に履修することが推奨されており、修士課程入学直後の学期に履修申告できる文系教養科目は400番台のみです。
500番台の文系教養科目は400番台を修得してから履修してください。

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