シナジー社会とは、「相互に他者の力を引き出し合うことで自分にはできない新たな現象を創発する社会」である。つまるところ、シナジーとは多様性という機会を生かすことである。複雑化する現代社会においてシナジーはますます重要なものとなっているが、それは起こりにくい現象として位置づけられる。本講義では、その蓋然性の低いシナジーがなぜ成立し、どのような展開を見せるのかといった事柄について、シナジーの手段的で道具的(instrumental)な側面とシナジーそれ自体が自己充足的な価値を持つ(consummatory)側面に着目して考察を進め、その意義を多面的に探る。
本講義の狙いは、受講者が現実の世界に立ち向かう際のシナジーに関する気づきを立ち上げる契機を提供することである。シナジー社会の発展は、シナジー的諸活動が社会的な公益のもとで有意味性を獲得できるかにかかっている。その起点となるのがシナジー的出来事である。そこで、この一連の授業の終盤では、それまでのシナジーに関わる知見を踏まえながら、スモールグループを単位としてシナジーを実際に体験するワークショップを設けることにする。シナジー社会に対しては、複数のスタンスがありうるが、それを見定める際には、シナジーが全くない社会は一体どのようなものか、想像力を働かせてほしい。急速に進歩するテクノロジーの在り方を考慮しながら、本講義から得た気づきをもとに新しい時代を能動的に切り開いていってほしい。
シナジーの基礎理論及びシナジー社会の展開の具体的メカニズムを理解した上で、他者とともにそれを創造していく際の良質な気づきを立ち上げ、各人の在り方の探求につなげる。
シナジー、道具的/コンサマトリー、シナジー的体験、他者への配慮、社会的価値
専門力 | ✔ 教養力 | ✔ コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | ✔ 展開力(実践力又は解決力) |
各講師の講義とその主要な論点についての参加型討議を通して学ぶ。受講生には授業前に教科書の講師の章に目を通しておくことを期待する。授業の一部にワークショップ形式を取り入れ、良質な気づきが学生、講師双方に立ち上がるように進める。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | シナジー社会の基礎理論(後藤実) | シナジーをコミュニケーションシステムとして理解し、モダニティの変容を考察する。 |
第2回 | シナジーと地域社会(籠谷和弘) | 持続可能な地域社会をつくるための方策として,時間的空間的シナジーの構築について説明する。 |
第3回 | 仕事と家庭のシナジー(池田心豪) | 対立的な関係としてとらえられてきた仕事と家庭生活のシナジーを生かした企業の人事管理について解説する。 |
第4回 | エネルギーと環境問題のシナジー(一針源一郎) | エネルギーや環境を、グローバルな経済や技術の視点で考察する。 |
第5回 | 生活設計とシナジー(栗林敦子) | 生活の中の不確かさとシナジーとの接点を説明する。 |
第6回 | シナジー消費の時代(佐野美智子) | シナジー消費がもたらす豊かさ、幸福について考察する。 |
第7回 | 経営学とシナジー(舘岡康雄) | 経営学を踏まえ、シナジーを実現するSHIEN学を説明する。ワークショップでシナジーを体験する。 |
学修効果を上げるため,教科書や配布資料等の該当箇所を参照し,「毎授業」授業内容に関する予習と復習(課題含む)をそれぞれ概ね100分を目安に行うこと。
今田高俊・舘岡康雄編著 『シナジー社会論』 (東京大学出版会)
必要に応じ、各授業で配布する。
授業コメント(講義毎に提出するコメントシートの内容)70%、レポート30%(合計100%)
他者と自分との位置関係を理解しながら、他者への配慮を伴った自分自身の生産的なコミットメントの在り方を自分に問うことができる意欲を持った学生の履修を期待する。
4/8(水)は、授業は実施しません。
この授業の実施日は、4/15(水)、4/22(水)、5/13(水)、5/20(水)、5/27(水)、6/3(水)、※6/5(金)の全7回です。
※6/5(金)は曜日振替になっていますのでご注意ください。