本講義では、医療及び医学を切り口に、その背景にある社会問題を紐解き、課題についてグループワークを通じてクラス全体で意見を交換しながら考察を行っていく。医療及び医学という分野は、人間の”病”の側面を扱う分野でもある。”病”の側面から見える社会の見え方は、日常とどの様に異なるのか、そこにはどの様な問題が潜んでいるのか。普段”健康”であるからこそ気づきにくい問題について、最新の医学論文及び、それに関連する資料(メディアからの抜粋や藝術作品等を扱う)を用いてレクチャーを行った後、議論を行い、日常を”病”の視点から読み解いていく。
”病”といっても、そこに潜んでいるのは、社会問題だけとは限らない。医療工学や生命工学をはじめ、倫理や心理学など、医療及び医学は、様々な学問の知識や技術を用いて成り立っている。提示した問題に対して、自身が専攻する技術や知識を用いることで、どの様な解決策があるのかを考え、新たな気づきの重要性を伝えていく。
本講義のねらいは、講義を通して1つの問題を考える際にも、様々な視点、意見があることを学び、多角的な視点を身につけること、また自ら考えたことを自身の言葉で相手に伝える能力を身につけることにある。また、正解がない問題をグループで議論することで、コミュニケーション能力の向上も期待される。加えて、このような様々な課題を議論することは、どこに価値を置くかといった社会に対する”価値の創造・推定”にも繋がる。このような能力は、各々が行なっている研究を、どう社会の文脈に価値づけるかという重要なプロセスに当たるため、企業へ就職する人、または進学をする両者にとって求められる能力であり、その片鱗を授業を通して感じてもらうことが狙いである。
本講義を履修することにより、以下の能力の習得を目標とする。
・医療だけでなく、社会における問題や課題について多角的に捉える事が出来る
・問題に対して自ら考え、複数の解決方法を提示出来る
・自身の考えを的確に言葉にし、相手に伝える事が出来る
・多様な意見があることを理解し、複数人とディスカッションをすることが出来る
・”議論を深め価値を創造する”という文系特有のプロセスを理解し、そのプロセスを自身で再現することができる
医療、医療社会学、社会学、医療工学、生命工学、科学コミュニケーション
専門力 | ✔ 教養力 | ✔ コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
毎授業、1テーマについて講義し(45分程度)、その後、ジグソー方によるグループワークを実施、授業終了時に発表を行う。最終的に、講義で扱った題材の中から1つテーマを選び、更なる議論を行い、授業最終日に発表を行う
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | 授業ガイダンス:医療と社会の問題について | 医療技術における社会的問題の理解 |
第2回 | ディスカッション課題(1)身体障害と補助技術 | 身体障害者に対する補助技術がもたらす社会的影響を理解し、多角的に議論する |
第3回 | ディスカッション課題(2)臓器移植−子宮移植 | 臓器を移植する際のリスクを把握し、出産のための子宮移植について、技術的、社会的観点から多角的に議論する |
第4回 | ディスカッション課題(3)ガン術後 | ガン術後に生じうる身体的疾患や社会的問題を把握し、ガンサバイバーが社会でどのように生活していくべきか議論する |
第5回 | ディスカッション課題(4)コミュニケーションとビジュアル(数値教育課題を含む) | 時代や文化、そして宗教の違いによって”適切”とされる治療方法は異なる。医療が直面する代表的な宗教の違いや治療の選択の違いをグルーバル社会のなかでどのように身体のビジュアルが異なることを理解し、今後の技術発展を踏まえ、どの様な問題が生じ得るかを議論する |
第6回 | ディスカッション課題(5)講義テーマの更なるディスカッション | グループに分かれ講義で扱った題材からテーマを選び、更にそのテーマについて深く議論し、自らの言葉で考えを表現する |
第7回 | グループワーク−:講義テーマの更なるディスカッション、グループ発表 | グループに分かれ講義で扱った題材からテーマを選び、更にそのテーマについて深く議論し、自らの言葉で考えを表現すし、グループ毎に導いた結論の発表する |
第8回 | ケーススタディの実施 | 授業で扱ったテーマに類似するケーススタディを提示し、小レポートを作成する |
必要に応じて指定する。
参考書:特に無し、適宜論文を紹介する
講義資料:毎授業ハンドアウトを作成し授業にて配布する。
毎授業行うグループワークでの発言及び参加度(50%)
授業を通して修得した知識を使って作成した成果物(50%)
事前に身につけているべき知識や技術はない。