オペラは歌とオーケストラ,舞台美術と衣装,言葉と演技といったさまざまな要素が一体となって,愛と死をめぐる人々の情念と社会の複雑な様相を描き出す総合芸術である。視覚と聴覚の相乗効果には何ものにも代えがたい魅力があり,それゆえに16世紀末の誕生以来,貴族社会から市民社会へのヨーロッパの歴史の変遷において,娯楽と教養の対象として発展を続け,現在,世界的な舞台芸術としての地位を確立するにいたっている。本講義では代表的な作品をいくつか紹介。各作品をさまざまな角度から掘り下げ,その魅力に親しむことで,現代の私たちにとってオペラが持つ意味を考え,ひいてはヨーロッパの社会と文化の成り立ちをより深く理解するための一助とする。
オペラといえば欧米で主に富裕層のために上演される豪華な芸術であり、日本に住む学生にはあまり縁のないと一般的に思われているが、今日の日本でもさまざまな上演が行なわれ、時には学生のための特別な価格設定がなされていたりする。またオペラは何よりもテレビドラマや映画と同様、人間たちの織り成す関係や喜怒哀楽の感情を描くドラマであり、演出によってはそれが(オリジナルのト書とは違う)現代の舞台装置や衣装という設定で示されたりもして、きわめて身近なものと感じられることもある。授業を通じて、このようなオペラの多様な在り方を紹介し、ヨーロッパの伝統文化への理解を深めるとともに、現代の私たちが生きる社会におけるオペラの意義を考えてゆきたい。
1)言葉と音楽、さらには視覚的要素が結びついて、人間の情念と社会の様相を描き出す総合芸術としてのオペラの魅力に親しむ。
2)オペラというジャンルを通して、ヨーロッパの文化と歴史を別の側面からより深く知る。
総合芸術 音楽 言葉、演劇 演出 ヨーロッパの文化と歴史
専門力 | ✔ 教養力 | ✔ コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
数あるオペラ作品から数作を厳選、浅く広くではなく、少数の作品を深く知り、味わうことによって、背景にあるオペラの世界の広がりと豊かさを感じてもらう(今回はモーツァルト《フィガロの結婚》、プッチーニ《蝶々夫人》を柱にしたラインナップとなります)。具体的な進め方としては、それぞれの作品について①台本と音楽を分析、②その作品を生み出した時代的背景や作品が放つ社会的メッセージについて考察、③異なる演奏や演出を比較鑑賞する。さらには ④オペラの形態がどのように発展してきたか、その歴史を俯瞰する。授業は主として講師の解説とDVD(ないしはCD鑑賞)によって進めるが、受講者も授業中の発言や課題によって、積極的に参加することが望ましい。(課題は毎回の授業中に見たオペラについての感想レポート提出400字前後があるので、集中力を持っての参加が求められます)
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | ガイダンス オペラとはどういうものか | 授業内で指示する。 |
第2回 | モーツァルトの生涯と作品 | 授業内で指示する。 |
第3回 | モーツァルト 《フィガロの結婚》第1幕 台本と音楽 | 授業内で指示する。 |
第4回 | モーツァルト 《フィガロの結婚》第2幕 台本と音楽 | 授業内で指示する。 |
第5回 | モーツァルト 《フィガロの結婚》第3幕 台本と音楽 | 授業内で指示する。 |
第6回 | モーツァルト 《フィガロの結婚》第4幕 台本と音楽 | 授業内で指示する。 |
第7回 | オペラの歴史(形式の変遷) | 授業内で指示する。 |
第8回 | 声域と役柄 | 授業内で指示する。 |
第9回 | ワーグナーの楽劇(1) | 授業内で指示する。 |
第10回 | ワーグナーの楽劇(2) | 授業内で指示する。 |
第11回 | プッチーニ 《蝶々夫人》第1幕 台本と音楽 | 授業内で指示する。 |
第12回 | プッチーニ 《蝶々夫人》第2幕前半 台本と音楽 | 授業内で指示する。 |
第13回 | プッチーニ 《蝶々夫人》第2幕後半 台本と音楽 | 授業内で指示する。 |
第14回 | プッチーニ 《蝶々夫人》第3幕 台本と音楽 | 授業内で指示する。 |
第15回 | まとめ | 授業内で指示する。 |
テキストは授業内で随時配布します。
水林章『モーツァルト《フィガロの結婚》読解 暗闇のなかの共和国』みすず書房、2007
山崎太郎『《ニーベルングの指環》教養講座――読む・聴く・観る! リング・ワールドへの扉』(アルテスパブリッシング)、2017
クラシックジャーナル046 『オペラ演出家 ペーター・コンヴィチュニー』(山崎太郎:責任編集)、アルファベータ、2012
毎回のミニレポート(課題は毎回指示)60%および学期末レポート40%の合計点
人数制限をする場合もあるので、必ず第1回の授業に出席すること
オペラ好き、オペラを知らない人、どちらも歓迎です。ただし基本的な受講マナーを守り(授業中は私語のみならずスマホ、PCの使用も禁止。これは劇場でオペラを鑑賞する時の基本態度とも重なります)、熱意をもって授業に参加できることが条件。また毎回の授業後のミニレポート提出(400字前後)など、受講生にとっても積極的な努力・参加が多く求められる授業です。要は教員の説明を受身で聞くのではなく、皆さん自身で大いに考え、書き、参加していただきたいと思います。期間中は参考図書やプリントを自宅で読み、指定された視覚教材(DVD、CDなど)を積極的に利用するようにしてください。また各自、受講期間中ないしはその前後など、一度はオペラの公演に足を運ぶことを強くお勧めします(東京近辺でのオペラ公演についても随時紹介します)。