哲学を学ぶ上で大切なのは、ある哲学者が直面した具体的な問題、そして、その問題に答えるためにその哲学者が作り出した概念を実感することです。哲学者たちは一生懸命に自らの概念について説明しています。しかし、自分たちが答えようとしている問題については十分に語っているとは限りません。それは人が自分の行動の動機をうまく説明できないのと同じです。ですから、その問題を知り、実感しようと思ったら、私たち読み手自身がそれを解明しなければならないのです。この講義では近代初頭の政治哲学を解説しながら、数人の哲学者についてそうした作業を行っていきます。取り上げるのは、ジャン・ボダン、トマス・ホッブズ、スピノザ、ジョン・ロック、ジャン=ジャック・ルソー、デイヴィッド・ヒューム、イマニュエル・カントらの哲学者です。
講義のテーマとなるのは国家です。国家を妥当な仕方で定義するのはなかなか難しいことです。ただ、我々のよく知るタイプの国家、すなわち、近代国家を形作る概念を定義することはできます。この講義が特に注目するのは、「自然」「行政」「主権」の三つです。どれも皆さんがよく知る言葉だと思います。しかしそこには近代の政治哲学が積み重ねてきた様々な思考が見出されます。また、近代国家について考えることは、現在私たちがその中で生きている国家について考えることに他なりません。したがって、本講義を通じて、現在の政治経済を考えるために必要不可欠な知識を獲得することができます。同時に哲学についての一般的な知識も身につけることができます。
近代の代表的政治哲学の概要を理解すること。哲学的な概念を使って現代の政治経済を考えることができるようになること。
政治哲学、社会契約論、主権、国家、自然権、行政。
✔ 専門力 | ✔ 教養力 | コミュニケーション力 | ✔ 展開力(探究力又は設定力) | 展開力(実践力又は解決力) |
講義形式で行います。
授業計画 | 課題 | |
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第1回 | イントロダクション──近代国家のどこかそれまでと違っているのか? | 封建国家と近代主権国家の違いを理解する |
第2回 | ホッブズ:戦争発生の論理的説明 | 自然状態の概念を理解する |
第3回 | スピノザ:自然権思想の徹底 | 自然権の概念を理解する |
第4回 | ロック:主権を巡る建前の構築 | 近代国家を特徴づける行政権力の恐ろしさを理解する |
第5回 | ルソー:近代政治思想の完成 | 近代民主政の理論の骨子を理解する |
第6回 | 中間総括講義および中間テスト | 講義前半のまとめ |
第7回 | ヒューム:自然権思想への批判 | 自然権思想の問題点と経験論的な制度の理論を理解する |
第8回 | カント:歴史と平和思想 | 政治哲学に歴史が導入されたことの意味を理解する |
國分功一郎『近代政治哲学──自然・主権・行政』ちくま新書
随時、講義内で指定します。
中間テスト(50%)、期末テスト(50%)。
知らないことを知りたい、理解したいという気持ちを持っていること!